前回まで2回、サステナビリティのために「すべきこと」としてマンフレッド・マックス=ニーフの基本的ニーズの話をしてきました。

2015年1月13日配信:サステナビリティの普遍で不変な9つの基本的ニーズ

2015年1月28日配信:それほんとうに必要ですか? サティスファイアーは自分でみつける

今日からはサステナビリティのために「すべきでないこと」のお話です。
最初にある窮地にたった組織について考えてみます。

仮にXYZ商社としましょう。ピンチのXYZ商社ですが、幸い、素晴らしい社長がいました。社長は一から会社を立て直そうと、全社員にマックス・ニーフについて学ぶように指示しました。
もちろん社員たちは「会社は危機的状況なのに、マックス・ニーフ?」と困惑しました。しかし、社長の強いリーダーシップによって、社員たちも次第に熱心に勉強するようになりました。そして、数か月後には社員たちの基本的ニーズの理解は完璧になりました。

そこで社長は、新たなビジョンを作ろうと、社員を集めてワークショップを開きました。基本的ニーズをマスターした社員たちです。間もなく自分たちのビジネスの目的や価値観に根ざしたビジョンを完成させました。

その後は、社員みんながそのビジョンに向かって、生き生きと働き、努力をし始めました。その結果、顧客の満足度は格段にアップしました。利益もV字回復しました。この組織に関わる人はみんな充実しているように見えました。

こんなXYZ商社をみたら、「やはりビジョンを上手く立てることが大切だ」と多くの人が思いがちです。
しかしながら、サステナビリティの観点から見た場合、XYZ商社のやり方では、まだ完璧とは言えません。「持続可能な組織」についての考え方が抜けているからです。

社会も自然環境も持続可能じゃない

最近では、決算が近づくと「円安で増益の見込み!」というニュースをよく見かけます。
確かに、業績が上がっているから良い、と考える人は多いでしょう。
しかし、数年前はどうでしたか。「円高のため連続赤字」というニュースばかりでした。円相場だけではありません。原油価格や消費税など、企業の活動は、経済システムの影響を受けざるを得ません。

また、社会システムの影響も受けます。
たとえば、震災後の電力問題をとりあげましょう。電力不足で使用可能電力の割当が行われたため、思うような生産活動ができない企業が出ました。法律や条例あるいは慣習など社会システムの影響を受けずに、企業は活動できません。

そして、生態系システムも極めて大切です。森林乱伐や大気汚染などの環境破壊で、様々な物資の調達に影響が出るかもしれません。今は公害規制が厳しいため、安全と考えられても、かつて不法に投棄された水銀やPCB(ポリ塩化ビニル)などが地下に残留している土地もあり、人体への影響があると言われています。
以上のように、どんな企業であれ、経済システム、社会システム、そして生態系システムの影響を受けることになります。システムの影響力は非常に大きく、もはや従業員の頑張りだけでは、打破できないこともあるのです。

システムを理解する

せっかく企業がいろんな努力をしているのに、結局システムに翻弄されてしまう。せっかくの努力を無駄にしたくない、と考える人がいました。
スウェーデン人のカール・ヘンリク・ロベール博士です。

ロベール博士は、自然環境と社会が持続可能でない状態になってしまった根本原因を探るため、スウェーデンの科学者たちと議論を重ねました。

実はこの議論自体が画期的と言われました。なぜなら、専門分野が異なる科学者たちが一緒に議論することはまれだからです。科学者はそれぞれの専門性は非常に高いのですが、その高さゆえに、他の科学者との協働は難しいからです。
しかしロベール博士は、新しい視点を取り入れたことでこの議論を成功に導きました。専門性の違いに焦点を当てるのではなく、「合意できる点は何か」と科学者たちに根気よく伝えて対話を続けたのです。

そしてついに、4つのコンセンサスを得たのです。そこから導きだされたのが「4つの持続可能性原則」です。

持続可能な社会では、

  1. 自然の中で地殻から掘り出した物質の濃度が増え続けることに加担しない
  2. 自然の中で人間社会が作り出した物質の濃度が増え続けることに加担しない
  3. 自然が物理的な方法で劣化することに加担しない
  4. 人々が自らの基本的ニーズ(健康、影響、能力、意味、公平さ)を満たそうとする行動を妨げない。また、妨げようとする組織や人がいた場合、それに対して加担しない

加担しないとは、

  • 今行っていることでこの原則に反するような活動は減らして行き、最終的には完全に撤廃すること
  • これから意思決定をする場合は、この原則に反するやり方では行わないこと

の2つを表しています。

最初に出てきた組織の活動が、この4つの持続可能性原則に沿っていれば、組織は持続可能であると言えそうです。そうでなければ、システムの力に巻き込まれてしまい、日々の努力も充実しているように見えた時間も、結局無駄になってしまうかもしれません。
努力と同時に、システムへの理解も必要不可欠なのです。

サステナビリティのために「すべきでないこと」は、この持続可能性原則に反することです。次回はこの持続可能性原則について、もう少し詳しく見て行きましょう。次回もお楽しみに!

ブログでご紹介したカール=ヘンリック・ロベール博士らが考える、サステナビリティと企業活動との切り離せない関連性等についてより詳しくご案内しています。ぜひ下記より資料をダウンロードしてご覧ください。

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