“飽きっぽい”のに根気がある!?

先日、本屋に行ってきました。最近では、Amazonでばかり書籍を購入しているので、書店を訪れるのは久しぶりです。

面白いもので、書店に並べられている本を眺めていると、普通は買わないような書籍にも興味がわいてきます。とくに、平積みにされている本は目につきやすい。

そんななか、ついつい買ってしまったのが、窪田良氏の『極める人ほど飽きっぽい(日経BP 2013)』。わたし自身、“飽きっぽい”という自覚があるので、希望が持てるかなと期待したのですが……。良い意味で期待を裏切られました。

著者の窪田さんは、飽きっぽいどころか、「ゲノム研究」「眼科医」「起業家」という3つの領域を極めた驚くべき方だったのです。現在では、世界12000万人の患者がいる「加齢黄斑変性」という病気の治療薬を開発しています。

タイトルの「飽きっぽい」とは、「異なる分野に次々に挑戦した」という意味なのでしょう。実際には、“眼科”という1つの軸を持ちつつ、世界中の人が苦しんでいる病を治療したいという動機で突き進んだ結果、複数の分野を極めることができたのです。

根気の方程式

通常、ひとつの分野を極めるならば、「根気」が必要であると考えられています。根気に関しては、その具体的な要素を分解することができます。ペンシルベニア大学のA.ダックワース教授が提唱する方程式をご覧ください。

【根気 = 熱意 + 忍耐力 + 長期目標への追及力】

この方程式から、根気が「熱意」と「忍耐力」、そして「長期目標への追及力」によって支えられていることが分かります。たとえば、先ほどご紹介した窪田氏の例で考えてみましょう。

・新しい分野への挑戦には不安があったが、それを乗り越えるだけの信念があった。
→ 「熱意」

・「加齢黄斑変性」という病気の治療薬を開発するまで様々な困難があったが、強い気持ちで耐え抜いた。
→ 「忍耐力」

仕事の中で常に問題発見をし、それを解決するために新たな分野に進む必要があったから、分野を変えた。
→ 「長期の目標追及力」

つまり窪田氏は、A.ダックワークの公式にとっても当てはまる、とても根気強い人だったのですね。

忍耐だけでは成長できない

この法則を知ったとき、「根気」と「忍耐力」とをほぼ同じ意味合いでとらえていたわたしは、それらを明確に分けていることに驚きました。

また同時に、「根気」と「忍耐力」はどちらも大切ですが、忍耐力だけでは人の成長に限界があるだろうとも感じたのです。

たとえば、上司や先輩から怒られたり、指摘されたとき。ただその場を“耐え忍ぶ”だけの人は、いつまで経っても成長しません。そこで奮起し、明日への活力につなげるためには、根気が必要なのです。

かのアインシュタインも「天才は1%の才能と99%の努力から」という言葉を残しています。A.ダックワース教授も「根気なくして大きな成功を収めた人物は一人もいません」「猛烈な努力を必要としないほど才能のある人なんていない。猛烈な努力をさせる原動力となるのが根気なのです」と断言しています。

やはり、人の成長には根気が不可欠なのでしょう。それがやがて、人生の成功へとつながるのです。

根気を引き出す2つのポイント

では、成長の条件である根気を引き出すためには、どのようにしたら良いのでしょうか? A.ダックワース教授の方程式をもとに、職場での行動を考えてみました。ポイントは次の2点です。

1.マインドセット

1つ目は、「マインドセット」です。

自分の能力が固定的であるとみて、努力を無駄だとみなしているマインドセット(Fixed Mindset)と、自分の能力は努力次第で伸ばすことができると思っているマインドセット(Growth Mindset)では、後者の方が諦めないで挑戦する力があることが、脳科学的にも証明されています。

どちらのマインドセットになるかは、周囲の働きかけがその要因となります。たとえば、仕事が上手くいった場合に「あなたは運がいいから」と言われてしまうと、失敗したときには「運が悪かったんだ」と、自分の努力ではどうにもならないことに原因を求めてしまう傾向があるのです。

つまり職場でいうと、上司がどう働きかけるかによって変わるということです。

 2.楽しさ

2つ目は、目標を追及していく行動そのものを、「楽しいと思える」ことです。

目標を追及するためには、日々の行動(職場であれば仕事)に楽しさを感じなくてはなりません。そのために必要な条件として、クレアモント大学のチクセントミハイ博士は、次のような要点を紹介しています。

  1. 目標に意義や意味を感じること
  2. 自分の能力よりも少し高めの目標であること
  3. 目標にどれだけ近づけているか確認できること

このような条件がそろう仕事、あるいは職場環境では、「仕事に夢中な状態(フロー状態)」になれるそうです。

2つとも、職場で上司がマネジメントとしてできることに大きく関わっていると思いませんか?

職場で根気を醸成しよう

根気は才能と違って、条件さえそろえば誰でも発揮できます。

つまり、人の成長に関わる根気は、条件さえ整えれば、「職場のマネジメントにおいて開発できる」ということです。

もちろん、醸成する側の上司にも根気が必要となります。しかしもし、職場で条件をそろえられれば、職場自体が“根気養成ギブス”の役割を果たせるかもしれませんね。

チクセントミハイ博士が提唱するフロー理論を学び、職場全体で根気力を高め、人材開発を促進させましょう。

チクセントミハイ博士の初来日講演の一部を、グラフィックファシリテーションの技法を使ってご紹介しています。「仕事に夢中な状態(フロー)」を生み出すポイントを、ぜひあなたのマネジメントにお役立て下さい!

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