2018年569日にアメリカのサンディエゴで開催されたAssociation of Talent DevelopmentATD)のInternational Conference and ExpositionICE)に参加し、学んできた内容をお伝えします。

ATD ICEとは世界中の人材開発の専門家や、人材開発に関連するツールを提供している企業が集まり、お互いに新しいアイディアや成功事例などを紹介し、学びあう集まりです。

今回は、基調講演者のマーカス・バッキンガム氏のお話をお伝えします。マーカス・バッキンガム氏は『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』(2001年、日本経済新聞社)の著者で、「強み」の研究者として有名な方です。ギャラップ社で17年間、世界のリーダーや職場の研究をされ、「強み」を活かすことがエクセレントなリーダーになる一番のポイントであることを提唱しました。その、バッキンガム氏が「LOVE+WORK」というタイトルで講演された内容をお伝えします。

マーカス・バッキンガム氏からのメッセージ

 長年、ATDに参加されている方からお聞きしたところ、マーカス・バッキンガム氏はこれで3度目の登壇だそうです。いつもはスーツ姿のかっちりした出で立ちで講演されていたそうですが、今回はパーカーにジャケット姿でとてもフランクな印象を与えていました。その姿と同じく講演内容も、ご自身の経験からいかに「強み」を活かすことが素晴らしいのか、また、それがどれほど難しいことなのかをお話しいただききました。

 私がこの講演から受けとったメッセージは次の通りです。

弱みに目を向けるよりも強みに目を向けよう

うまくいかない結婚を幾ら調べても、良い結婚は出来ません。部下の出来ていないところを見て、評価しても、よいパフォーマンスは生まれません。それどころか、逆に恐れを生んで新しい行動、積極的な行動を抑制してしまいます。このやり方でパフォーマンスが上がったという話は聞いたことがありません。
それよりも素晴らしかった点に目を向けて、それを伸ばすようにすることが成功のポイントです。

このメッセージの際、バッキンガム氏は子供の成長を見守る父親としての自身の失敗談を紹介されました。

「強み」に目を向けて伸ばしていくことを研究していたのに、自分の子供のことになると、逆のことをしてしまっていたというお話です。学校の教室でクラスの生徒の描いた絵が並べられていたのを見たとき、息子のジョンは絵の才能がないということが分かってしまったというのです。
そこで、バッキンガム氏はジョンに上手く絵を描かせようと必死に努力をしたそうです。そうしているうちに、ジョンはストレスを感じるようになり自分の描いた絵に、自分の名前ではなくジャネットと書くようになってしまったというのです。
学校の先生に相談したところ、ジョンは数学の才能があるといわれ、強みに目を向け、育てることの大切さを思い出したと言います。無理やり絵を上手く描かせようとするのではなく、強みに目を向けるようにしてからは描いた絵に「ジョン」と自分の名前を書くようになったそうで、「やったー!ジョンが戻ってきた!」と父親としてとても嬉しかったというリアルな体験を語っていました。

メッシは左足だけで勝負している!素晴らしさの基準とは?

サッカー選手メッシが試合でゴールを決めるビデオを使って、強みを使うこととバランス良くすることの違いを解説されました。メッシ選手が左足を多用して、何人もの選手をかわしてゴールを決めたシーンが繰り返し映像で流されました。メッシ選手を止めようとする、相手チームのディフェンス陣は、左足に気を付けなければならないことは分かっているので、何とか左足を使わせないようにフォーメーションを組んでいます。それでも、止められずゴールを許してしまいました。企業の人材育成では、弱みを克服させ、バランスのとれた人材にしようとする傾向がありますが、それは間違いだと指摘しました。メッシ選手が両足をバランス良く使えるようになったら、成功なのか?そうではない、強みである左足にさらに磨きをかけたからこそ成功しているのだという例を挙げて分かりやすくお話いただきました。多彩で、バランスの取れた人材が素晴らしいということではないのです。

HRの迷信に惑わされない

2019年にハーバード・ビジネス・レビューからバッキンガム氏の書籍が出版されるそうです。内容は、仕事にまつわる思い込みや迷信についてです。

<仕事に関する9の嘘>(2019年出版予定)

1.人々は自分の働く会社のことを気に掛けている
2.いい計画さえ立てれば勝てる
3.いい会社はゴールをカスケードする
4.バランスのとれた人(Well-rounded)の方がよりよい
5.人々はフィードバックを求めている
6.人々はお互いを正しく評価できる
7.人々にはポテンシャルがある
8.私たちはみなワークライフバランスを求めるべきだ
9.リーダーシップはそういうものである
(*講演で発表されていた内容を弊社内にて翻訳)

 8.ワークライフバランスを求めるべきだ」という項目を取り上げて、次のようにお話されました。
「ワークとライフはバランスを取るものではない。それよりも、仕事と自分の強みの「赤い糸」を見つけること、それが仕事への愛につながる。そうなれば、プライベート50%、仕事50%とかそういった話ではなくなる。」
人材育成の専門家である私たちへは、「自分の赤い糸を見つけるだけではなく、他者の赤い糸を見つけるために仕事をしよう」と方向性を示してくださいました。

 「強みを活用する」という一見当たり前のメッセージがメインの講演でしたが、単に強みを発見するだけではなく、それと「仕事」の赤い糸を見つけることの重要性に再度気付かされました。もう一度、ゆっくり自分自身を振り返って、「強みを見つける→強みと仕事を結びつける→強みを徹底的に伸ばす」をしてみようと思います。

 次回もATDから学習したことをお伝えいたします。

【ATD開催地サンディエゴより】

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廣瀬 沙織

東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。

株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。