2018年569日にアメリカのサンディエゴで開催されたAssociation of Talent DevelopmentATD)のInternational Conference and ExpositionICE)に参加し、学んできた内容をお伝えします。
ATD ICEとは世界中の人材開発の専門家や、人材開発に関連するツールを提供している企業が集まり、お互いに新しいアイディアや成功事例などを紹介し、学びあう集まりです。

 1回、2回目は基調講演からの学びについてお伝えしました。今回は、ATD2018から見えてきた、これからの人材開発が取り扱うべき大きなテーマについて共有したいと思います。

デジタル・トランスフォーメーションが人材開発に変化を迫る

ATDのチェアであるTara Deakin(タラ・ディーケン)氏の講演で、いくつか時代を象徴するキーワードが出てきました。 

What does digital transformation require
デジタル・トランスフォーメーションは何を要請しているのか?

Human-Machine hybrid workforce
人間-マシン ハイブリッドの労働力

Reskilling for 2030
2030年にむけてのスキルの再定義

 デジタル・トランスフォーメーションという言葉は既にバズワード化していたるところで使われていますが、本来的な意味合いはIoTやAIなど最新テクノロジーを活用することで経済発展や社会の問題を解決し、人間がより良い生活を送ることができることを目指すということです。

日本でもこれによって多くの変化が起こっているように思います。
身近なところでは、2020年東京オリンピックに向けて警備会社が画像解析にAIを活用して安全を提供する実験を丸の内で実施されていますし、働き方改革の文脈でAIIoTを使って生産性を上げるという取組みも一部の企業では導入されています。人手が足りないという今の日本には、デジタルを活用したビジネスの転換が迫られています。

こういった転換期において備えるべきことは何か?を考える事が、HRの分野でも待ったなしで求められているのです。

2017年までのATDの焦点は、新技術をどう人材開発に活用するか

2017年までのATDにおいては、デジタル・トランスフォーメーションの文脈では、AIやVRのような技術をどのようにTalent Development(TD)に活用するのかが中心のテーマでした。
今年も引き続き試行錯誤している段階のようでAIVRを活用するとこんなことができそうだといった事例の紹介セッションがありました。まだ、「これが成功例!」といったものは見られませんが、身体を使った仕事のスキル習得にVRを使うというのはかなり現実になりつつあります。例えば、医療系の方が「注射」をするトレーニングや、機械を扱うようなトレーニングです。日本では安全意識の向上のためにVRを使っている事例も出てきていますね。

2018年の視点は、2030年からのバックキャスティングな人材開発

こういったことに加えて今年特徴的だったのは、労働力としてAIが職場に入ってくる近い将来のために、「人間」としての価値はどこにあるのか、マシンと人との関係性をどう考えるのか、これからの「タレント(Talent)」をどのように定義するのかを探究する視点が入ってきていたことです。

これまでも人間は様々な技術の進歩の中で、学び直しや新しいスキルの獲得をしてきた歴史があります。しかしオバマ前大統領も対談で発言されていたように、技術進歩の速さはこれまでにないほどのスピードですので、「恐れ」を感じてしまいます。日本でも「20XX年に無くなる職業」といった調査データを雑誌や新聞などで目にする機会もあり、余計に心配になります。

しかし、本当に考えなくてはならないことは、AIなどのマシンをどのように使うのか、その場合どのような組織が最適なのかといったことです。2030年のリアルな職場を想像し、それに向けた人材育成・採用を始める必要性を感じさせられました。

働き方が多様化する時代、求められる能力は変わる

また、2030年に向けて起こりうる変化の大きな波の1つとして、働き方の多様性も指摘されました。これは昨年も話題になっていましたが、フリーランスで働く人が増えていくということです。企業や組織に属さず、フリーランスで働くタレントとどのようにパートナーシップを組むかも考えるべき重要なテーマだと感じます。「人」を採用するよりも、「タレント」を束ねる力が必要になりそうです。

 私たちも本当に今までの人材育成で、2030年に必要なタレントの育成になっているかを様々な立場の方と対話して見定めていかなくてはと、ATD全体を通して強く感じました。

 次回もATD2018から話題となったセッションをご紹介します。LinkedInによる、職場のトレンドに関する調査結果のレポートです。


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廣瀬 沙織

東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。

株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。