2018年569日にアメリカのサンディエゴで開催されたAssociation of Talent DevelopmentATD)のInternational Conference and ExpositionICE)に参加し、学んできた内容をお伝えします。
ATD ICEとは世界中の人材開発の専門家や、人材開発に関連するツールを提供している企業が集まり、お互いに新しいアイディアや成功事例などを紹介し、学びあう集まりです。

 今回は、LinkedInの発表から、職場学習のトレンドをご紹介します。

2018年職場学習のトレンドに関する調査結果
~ソフトスキルに再注目!~

LinkedInは世界最大のビジネスに特化したSNSを提供している、シリコンバレーの企業です。20189月で登録ユーザー数は世界で5.5億人。ネットワーキングのほか、採用・転職や学習のプラットフォームとしても利用されています。このLinkedInが、職場学習に関してアンケート調査を行っています。ATDでは、2018Worplace Learning Report:職場学習の調査」として、5つのトレンドが紹介されました。
本調査の回答者は約4000人。経営者200人、人材開発の専門家1200人、マネジャー職200人、従業員2,200人を含みます。

トレンドの1~2項目は、「注目されているスキル」に関するものでした。 

トレンド①「ソフトスキルのトレーニング」が人材開発におけるNo1.の優先事項

ここでいうソフトスキルとは、リーダーシップ/コミュニケーション/コラボレーションのことです。

トレンド②今のニーズと、将来の課題、このバランスを取ることが人材開発に期待されている

質問は、「人材開発において最も焦点を当てるべき重要領域は何か」というもの。次の2つが、回答のNo1.2.でした。

1.どのようにソフトスキルをトレーニングするか
2.将来スキルGAPをおこさないように、トレンドを見定めること

 テクノロジーによる自動化が進展する中、組織の壁を超えて新たなテクノロジーを活用できるかどうかが企業の存続に関わります。さらに、変化のスピードが増している時代において、ビジネスと人の成長を促すための起爆剤となるような人材は、適応力があり、クリティカルな思考を持ち、人びとの意思疎通を促し、リーダーシップを発揮できる人であると解説されました。

 日本でも働き方改革の流れの中で、生産性向上のために定型業務を自動化するツールとして注目されているRPARobotic Process Automation)や、デスクワークの作業効率を高めるためにExcelWordPowerPointなどを学習する方が増えています。一方で、テクノロジーはあってもデータが無い、効果的な活用先が分からない、ということで、組織の課題を発見したり、部門を超えて課題解決をデザインしたりできる人材が求められています。こういったことを踏まえて、ソフトスキルが改めて注目される結果となったように感じました。

 また、トレーニング内容は今必要なことと同時に長期的な視点をもってバランスよく組み立てる必要があることもメッセージとして伝わってきました。②にあげられている「スキルGAPをおこさないようトレンドを見極める」は、経営者層では2番目、人材開発の専門家では6番目の重要度となっています。両者の認識の違いも、考慮すべきポイントです。

オンライン学習により引き起こされた課題

続いて3~4項目はオンライン学習に関するトレンドです。

トレンド③オンラインによる学習ソリューションにより、多様な世代、様々な人が集まる職場のニーズに応えている。そしてこれは不可逆的である。

デジタルラーニング導入率

これまでにないほどオンライン学習のソリューションへの依存度が高まっています。それは学習のコンテントの提供に限りません。人材開発担当者は、学習効果の測定でもオンライン学習のプラットフォームを頼りにしていると解説がありました。オンライン学習であれば、だれがいつどれくらいの時間、どのコースを勉強したかが把握できます。そうした学習へのエンゲージメントに関するデータと、職場の定着率やチームの効果性といった指標を組み合わせ、学習効果を測定しているようです。

なお、人材開発の専門家における、オンライン学習のトレンドTop3は以下のようなものでした。

49%・・・マイクロラーニング
46%・・・Just in Time学習
46%・・・魅力的なコンテンツによる社員のラーニング・エクスペリエンス

 トレンド④人材開発の一番の試練は、「働く人々が学習の時間を作ること」

 集合研修が減り、オンラインのトレーニングコースが増えている影響で、強制的に学習の時間を決められることが少なくなりました。そして、働く人々のニーズとしても拘束されずに自分の都合で学習したいという人が増えています。しかし、学習の時間がなかなか取れず、便利になったけれど、学習をすすめられていない方も多いようです。

私もそうですが、目の前の業務に追われていると、自分として目指す姿を明確に持っていないと学習は後回しになってしまいます。今の業務に集中して学習、成長するという時期も確かにあります。しかし、将来を見据えて、または、現在の業務をレベルアップさせため、自分やキャリアを見つめなおし、必要な学習に当てる時間を意図的に作る必要があるなと感じました。

職場や組織として、このオンライン学習によって顕在化している課題にどう向き合うかを考える上では、次の5番目のトレンドは興味深いものでした。

職場学習の充実は、マネジャーの関わりが重要ポイント

トレンド⑤マネジャーの関与が働く人々の学習意欲を高める重要な要素

「56%の働く人々は、マネジャーからスキル向上のためだと勧められたら、より学習に時間を使うと答えている。」

 人材開発の専門家の大きなチャレンジの1つは「マネジャーを社員の学習に関与させ巻き込むことだ」と断言されていました。学習が動機づけされるのは、「マネジャーとの関係」と「昇進の機会」の2つという調査結果も示されました。やはり、マネジャーの積極的な関わりと、本人のキャリア向上への意識が学習を促進する大きな要因なのです。 LinkedInは、こちらの調査結果報告とは別のセッション(学習のROI測定に関するセッション)で、職場で学習の文化(ラーニング・カルチャー)を作っていく際にはマネジャーの関わりが非常に重要だという発表をしていました。

特にオンラインで学習する際には仕事中に学習する場合が多いのではないでしょうか?
その際、マネジャーとの関係が悪いと「仕事をするフリ」に忙しく、生産的な仕事もできず、学習なんて進まないことは容易に想像がつきます。

 研修をイベント的に実施しても、オンラインでマイクロラーニングを使って学習できる環境を作ったとしても、結果的に職場で学習し続ける文化を作っていくのはマネジャーの仕事です。レポートの中には、「キャリアを高めることを支援してくれる職場であれば、長く勤めたいと考える人が94%」、というデータもありました。人再開発の専門家には、マネジャーをどう巻き込んでいくか、その仕掛けをして、職場全体の学習経験を魅力的に設計することが求められていると感じました。


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廣瀬 沙織

東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。

株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。