気がつくともう11月後半です。まだまだ、今年中に達成させないといけないことが山積みなので、スピードをあげて今年度のことをやりながら、来期も見据えた業務の方向性を定めているところです。
さて、今の時期、経営者・人事の方で話題になるのは、教育や研修について「成果が出ているか?」ということではないでしょうか?
今回は、「研修受講者の職場での行動が変わる」効果的な方法をご紹介いたします。
研修の成果測定からわかること
研修の成果測定方法で最も有名なものは、
「ドナルド・カークパトリックのトレニーング評価の4つのレベル※」です。
- 研修の満足度・役立ち度
- 知識やスキル獲得の程度(理解度・スキルアップ度)
- 学習したことを活用度(行動変容度)
- 受講生の出した成果(得られたもの)
1997年のアメリカ企業が研修受講者にアンケートを取ってみたところ、受講者のうち72%が1.にYesと答え、2.が30%、3.が11%程度、4.が7%という結果でした。2001年に日本で実施した調査も同じような値だったようです。
このデータの注目すべき点は、2.の理解度は30%だったにもかかわらず、3.の行動を変えたのは11% ということです。
この結果は、「研修で知識やスキルを身につけても、職場に帰って具体的に行動が変わる受講生は1/3しかいない」ことを意味します。
では、「研修は意味がない」・・・と結論づける前にもう少し深堀して考えてみましょう。
職場で実践されない本当の理由は?
この結果を言い換えると「職場で、学習したことを実施しようと思えばできるけど、実施していない」ということです。
その理由には、次の3つが考えられます。
- 実施する必要な状況が無かった。
- 重要性/必要性を感じなかった。
- 必要性は分かっていたが、行動できなかった。
問題になるのは、以下の2つのケースです。
「2.重要性/必要性を感じなかった」「3.必要性は分かっていたが、行動できなかった」
それでは、なぜ行動を起こさないのでしょうか?
「2.重要性/必要性を感じなかった」
「問題認識力」とか「問題発見力」というものにつながる「認識」の問題です。これは、知識やスキルというものより、思考様式や価値観に影響されるものです。
「3.必要性は分かっていたが、行動しなかった」
「あの場合、もし行動しても上手くいかなかっただろうから、行動しなかった」ということでしょう。つまり、本人に「うまくいく自信がなかった」ということです。
行動につなげる重要な要素とは?
このように、行動を起こすまでには、知識やスキル以外に重要な要素があります。これを我々は、「個人的属性」と呼んでいます。
この「個人的属性」は、「知識やスキルを活用して行動につなげていく土台となる能力」という言い方もできます。
研修の後の行動変容もそうですが、求める行動を促そうとすると、この「個人的属性」の啓発が重要になってきます。
このように自分の持っている「個人的属性」を理解するために開発した診断が「キャリア・ポテンシャル診断」です。
「自分の持っている個人的属性はどのようなものか」
「自分はどのような役割を組織の中で果たせば、高い成果が出せる可能性があるか」
「自分は、どのような属性を啓発する必要があるか」 がわかります。
「自分がどのような個人的属性を持っているか」が分かれば、「自分がどのような行動が取りやすいか」が理解できるのです。
研修で学習したことを職場での実践に結びつけるために、研修とあわせて診断を実施すると効果的です。
研修効果を高めるために活用する以外にも、組織全体で診断を取ると、人材育成戦略に活用できる人材マップが作成できます。
ご興味ある方は、こちらに「キャリア・ポテンシャル診断」の詳細が掲載されていますのでご覧ください。
※ご紹介した研究は1959年にカークパトリックが提案したモデルに基づいております。
現在はその息子ジェームス・D・カークパトリックがThe New World Kirkpatrick Model (新しい世界のカークパトリックモデル)としてモデルを更新しております。
http://www.kirkpatrickpartners.com/OurPhilosophy/TheNewWorldKirkpatrickModel/tabid/303/
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東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。
株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。