魅力的なコンテンツというのは、「今、ここ」だけで終わるものではありません。継続的な利益を、自社と顧客に与えて初めて、「成功したコンテンツ」と言えるのです。
このサステナビリティ(将来の持続可能性/一時的な発展、目先の利益だけではなく、それが将来的に継続し、利益をもたらす可能性のこと)を考えるためには、「未来から発想して現在を考える」ことが求められます。理屈は分かりますが、なかなか難しいものです。
そこで一つ、象徴的な例を挙げてみましょう。
「サステナビリティ」という単語が一般的ではなかった120年前に建設された道後温泉の話です。
先日、愛媛県松山市を訪れた際に思わず遭遇したこの事例は、「次世代にバトンをつなぐために未来から発想したコンテンツ」の理想的なモデルケースと言えます。
道後温泉本館建設をめぐる120年前の騒動
松山といえば日本三古湯の一つ「道後温泉」で、歴史漂う景観でも名が知られています。夏目漱石も絶賛した立派な本館が完成したのは、今から120年前の1894年だったそうです。
この道後温泉の歴史のなかで一番驚いたのは、「100年後の今を考えて町づくりを推進した町長」がいたということです。
120年前、老朽化した建物を建て替えるかどうかをめぐり、本館建築推進派と反対派の間で大騒ぎになりました。
反対の理由としては、
- 町の財政が傾きかねない投資であること
- 建て替えによって入湯料を値上げしなければならないこと
- 湯釜の交換をしたら神罰が下るに違いない
などのようなものでした。
教員の初任給が8円の時代に13万円以上(今のお金に換算すると13億円以上)かかることや、今以上に信心深い人が多かったことを考えれば、このような反対意見は当然とも言えます。
しかし、当時の道後湯之町町長の伊佐庭如矢(いさにわゆきや)氏の説得が、反対派の心を動かしました。
「道後温泉は、今のままでも10年、20年は栄えるだろう。しかし、今後もっと鉄道や航路が発達したら将来の状況は変わる。そうしたなかで100年後に道後温泉が同じように栄えている保証はない。100年経っても真似ができないものを造ってこそ意味がある。将来の道後温泉のために協力して欲しい。」
120年後の今日、伊佐庭町長の志が、現在の道後温泉の魅力をつくったことは明らかです。
現在は、道後温泉や松山城、小説『坂の上の雲』の主人公を輩出した土地などといった歴史を資源とし、新たな事業を始めようとしています。「企業研修旅行誘致促進事業」を始めているそうです。
サステナビリティとは世代間責任
サステナビリティとは、「将来世代のニーズを損なうことなく、現在の世代のニーズを満たす開発」という考え方がベースとなっています。
つまり、世代間責任が問われているのです。1世代交代として20~25年、2世代なら40~50年先を見越すということです。
伊佐庭町長の志は、サステナビリティを考える上で必要となる、「未来から発想して現在を考える」ことを実践した事例の一つではないでしょうか。
現在、多くの企業で持続可能な社会・組織をつくろうと考えた活動が始まっています。「未来から発想して現在を考える」ことは、これまでの既存の枠組み、箍(たが)を外したイノベーティブな発想が求められます。
それに加えて、リーダーには粘り強く相手を説得していく信念、組織自体をやる気にさせる力も必要です。1世紀以上も前の道後温泉の逸話は、現代に生きる我々にとっても、良い手本となるのではないでしょうか。
サステナビリティを目指したイノベーションは、企業にとっての生き残り策に他なりません。しかし、関心はあるけれどもまだ身近な問題として感じられないという方も少なくないかもしれません。以下よりダウンロードいただける資料では、サステナビリティを実現する”秘訣”を一部ご紹介しています。(or サステナビリティがなぜ企業の生き残り戦略のため、外すことのできないテーマとなってくるのかスウェーデン出身、サステナビリティの理論化であり実践家として著名なカール=ヘンリック・ロベール博士らの考え方などを交えて分かりやすくご案内しています。 )自社のビジネスモデルを今一度考えるきっかけとなれば幸いです。
[hs_action id=”123″]
株式会社ビジネスコンサルタント入社後、営業職、営業所責任者、コンサルタント、営業情報システム専門営業職、マテリアル開発担当などを経験し、現在は知的財産管理を担当している。ときおり、マーケティングやコンプライアンス等の分野で講師も務める。
キャンプ、焚火、ポタリング、美術館巡りなどの趣味を通じた幅広い交友関係で日々忙しい。