「職場の規範」や「企業風土」を変えるには

「職場の規範」や「企業風土」を変えるにはどうすればよいでしょうか? 難しい問題です。とくに、長い時間をかけて培われた“企業独自の雰囲気”のようなものは、そう簡単に変わるものではありません。

たとえば、あるオーナー企業の三代目社長の実例をご紹介しましょう。その企業は、長年トップダウンで、経営者が組織を引っ張ってきた会社です。

社長自身は子供の頃から、両親はもちろんのこと、会社の従業員も自分が経営者になることを望んでいるし、それが当たり前だと思っていました。

しかし、いざ社長になってみると、自分の思い描いていた会社とは違うことに気付きます。その実態は、矛盾だらけの同族経営会社だったのです。そこで三代目は、トップダウンの文化からボトムアップ型の文化に変えようと努力しはじめます。

はじめに制度を変えました。制度を変えれば体質が変わると思ったからです。具体的には、同業種のリーダー的企業が導入していた「職務資格制度」を導入しました。しかし実態はただのモノマネでしかなく、ハートの入っていないものでした。

つまり「俺が組織を変えてやる」という考えが強すぎたのです。

三代目社長は、その後、長年にわたる試行錯誤によって変革を成し遂げました。ポイントは次の3つです。

  • まず「自分が変わる」こと
  • 次に「社員と自分の関係性が変わる」こと
  • 最終的には「社員同士の関係が構築される」こと

その過程を経てはじめて、「協働する組織文化」が構築されたのです。
この事例からは得られる教訓は次のとおりです。

「“組織文化を変える、協働する組織をつくる”と号令をかけるのは簡単だが、大切なのは“まず自らが変わる”こと」

 変革に必要な2つのポイント

組織文化や職場の規範を変えようと思った時に、おさえるべき観点は2つあります。

 1.コンテント

1つ目は「コンテント」です。

コンテントを意識することは、今、この職場にいるメンバーは何をやっているのか、何について話し合っているのかをつねに確認するということです。たとえば、会議で言うところの議題やテーマ、内容など、書き出すことで“目に見える”ものですね。環境の変化に合わせて変えることができます。

 2.ヒューマンプロセス

2つ目は「ヒューマンプロセス」です。

ヒューマンプロセスとは、職場にいるメンバーが今どのような状況なのか、あるいはどのようなことが職場で起きているかというプロセスのことです。これは人と人との関係なので、コンテントとは違い目に見えにくいものです。それだけに、意識して変えることが難しいものでもあります。

冒頭の例で言うと、“職務資格制度を変えた”というのは、「コンテント」を変えたということです。しかし、目に見える「制度」を変えることはできても、目に見えない「人の心」までは変えることができませんでした。

つまり社長は「ヒューマンプロセス」に目を向けられていなかったのです。

そのために、社員からは「また、社長が何かやっているよ」「社長がやっているんだから、文句は言わないけれど、現場は違うよな……」という反応しか得られませんでした。

組織文化や職場の規範を変えるには、制度などの「コンテント」だけでなく、人と人の関係性の部分である「ヒューマンプロセス」に目を向けることが大切です。ヒューマンプロセスを意識した後に、状況を再確認し、効果的な関わり方をするにはどうしたら良いかを考慮するのです。

そうした過程を経てはじめて、最適な“自分の役割”を定めることができるようになります。

とある異業種交流会での学び

紆余曲折を経験しながら、最終的には組織の変革に成功した社長ですが、成し遂げられたきっかけはある異業種交流にありました。

そこで気づきがあった発言は次の2つです。

  1. 「私はサラリーマンですが、真剣に会社を良い会社にしたいと考えているんです!」

この発言を聞き、もしかしたら我が社にもそのような社員がいるんじゃないか? 自分はそのような社員の声を聴いたことがあったか? 信じたことがあったか? と、気づかされたのです。

  1. 「上司が悪い、社長が悪い、他部門が悪い」

もしかすると、自分自身がそうなっているのではないか? どうやって社員を変えようかとその手段ばかりを考えていたのはないか? という気づきです。

ここで社長はこれまでの、なぜ「会社」は変われないのか? なぜ「社員」は変われないのか? という問いから、なぜ「私」は変われないのか? に考えが変化したそうです。

ここから本当の意味での風土変革がはじまりました。

それからの社長は、徹底して社員から意見があがってくるまで待つことに決めました。また、ヒューマンプロセスを重視した取組みとして「オフサイト・ミーティング」も取り入れます。

最初は会社への不平不満、愚痴ばかりが出てきて、聞くのも嫌になったそうです。しかしそのうちに「話を聞いてもらえた」「他部署の話がきけて新鮮だった」という意見が出はじめました。

その後、オフサイト・ミーティングから出てきた自主的なカイゼン・ミーティングへと移行します。社長が「ありがとう」と声をかけると、社員から「社長に言われてやっているわけではないですから。自分たちが自分たちのためにやっています」と笑って言われたそうです。

「変えてやる」ではなく、「自分を変える」ことから生まれる変化は、短期的に劇的な変化は生みません。しかし、社員の側からじっくり醸成される変化であるからこそ、他社には真似できない競争優位につながるのです。

いかがでしたでしょうか? 仕事を進める上では、どの組織においても大小様々な問題が発生します。本記事の内容が少しでも課題解決のヒントになりましたら幸いです。 組織の課題解決に向けてもう一つお勧めしたい手法に、「クリエイティブタイプ」診断があります。 「クリエイティブとは何か」に関する視点は人それぞれですが、ここでは6つのクリエイティビティを定義し、あなたの思考プロセスを分析します。 ご興味のある方は下記よりダウンロードし、ご自身の「クリエイティブタイプ」をぜひ診断してみてください。

廣瀬 沙織
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。 株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。