働き方や働く人たちの価値観の変化、人が集まって生み出すべき価値が変わってきていることをうけて、これからの働く場のあり様を見つめ直す必要性はありませんか?Well-being共創ラボ(㈱ビジネスコンサルタントが運営)では、働く人たちが、その人らしくいられて力を発揮できるオフィスづくりを大事にされているNAMITOKAZE代表の山川知則さんをお招きし、ワークショップを開催しました。前編では、組織ではたらく人たちのウェルビーイングが高まるフィスづくりのために、どういった視点やどのようなプロセスで考えることが大事になるのかをご紹介しました。後編ではワークショップの進め方、参加してみての感想や気づきをご紹介します。
「新しいオフィスで起こってほしいこと」を考えるワークショップの進め方
前編でご紹介したとおり、ウェルビーイングを感じるオフィスづくりを目指すために、社員参加型のワークショップで紡ぎだしたいのは次の二つの観点です。
①新しいオフィスで起きてほしい行動・コミュニケーションを考える
②それを起こすための機能や仕組みやデザインを考える
今回体験したワークショップの流れがこちらです。
ステップ1 130枚のカードから、自分が新オフィスで起こってほしいと思う行動・コミュニケーションを二つ選ぶ(15分)
ステップ2 ペアになって、なぜそのカードを選んだのかお互いにインタビューする(10分×2)
ステップ3 グループでインタビュー結果を共有する。発表をするのは聞き手。(15分)
ステップ4 起きてほしい行動・コミュニケーションを起こすためのアイデアの検討(10分)
今回は、多数の組織の方が集まるワークショップでしたので、少し省略したステップになっています。実際のオフィスづくりではもう少し細かなステップや、便利なツールがあります。詳しくご覧になられたい方は、NAMITOKAZEのホームページを参照ください。
①じっくり時間をかけて「新しいオフィスで起こってほしい行動・コミュニケーション」のカードを2枚選ぶ
ワークショップにお集まりいただいた方のほとんどが経営者・経営幹部。日ごろから組織全体のことを考えるお立場なので、あれもこれも気になります。ほとんどの方が「難しいなあ」と迷いながら、選び取られていました。ぴったりの内容が無い方は、ポストイットにご自分の考えを書き込みます。
②二人一組で相互インタビュー
2枚を選んだ理由について、次の質問でインタビューをしていきます。
・なぜそのカードを選びましたか?詳しく教えてください。(象徴的なエピソードなどあれば)
・そのカードに関して、現在の状態はどんな状態ですか?詳しく教えてください。また、なぜそのような状態になっているのでしょうか?
・そのカードに関し、新オフィスではどういう状態になっていてほしいですか?
ご参加者の多くは、ほぼ初対面。それでも、カードと決まった質問項目があるため、ご自身の組織への希望とその背景にある課題意識、ご自身の考え方やそのベースとなっている過去の体験など、短い時間で深いやり取りが実現していました。
③グループ内での共有
1グループは4人でインタビュー内容を共有します。インタビューをした人が、お相手の選んだカードやその背景を説明します。自分のことではないのではっきりと話しやすかったり、本人も人から説明をしてもらうことで、自分の考えをより深めることができるというメリットがあります。
④手法に基づくアイデア出し
起こってほしい行動・コミュニケーションを実現するためのアイデア出しには、「強制発想法」とアイデアカードを紹介いただきました。
強制発想法では、あるテーマを選んだら、それを実現する方法を、次の7つの切り口で考えます。その7つとは、オフィス環境、制度・ルール、ICTツール・モノ、イベント、やめる、その他です。ありたい行動は必ずしも空間デザインだけで実現されるわけではなく、人事制度の改定やツール類の導入が必要なケースもあります。
山川さんによると、ここで検討される、起こってほしい行動・コミュニケーションを実現するアイデアは、そのままオフィスづくりに反映できるほど完成度高いものではなくても大丈夫なのだそうです。オフィスデザインの専門家は、ここまでに紡ぎだされた望ましい行動・コミュニケーションがコンセプトとしてしっかりあれば、それを実装するアイデアを提案してくれます。また、検討過程で変更が生じたとしても、生み出したい姿がコンセプトとしてはっきりしているので、ぶれずに検討を進めることができます。
ワークショップに参加してみて
山川さんによるオフィスづくりのワークショップを体験してみてまず感じたのは、カードがあるので、空間に対する専門知識が無くても気軽に話がしやすくなるということ。最初に「オフィスで起こってほしいこと」のカードを選ぶ過程で、おのずと自分の中にある課題意識に優先順位が付きます。そして用意されたインタビューの質問項目に沿って話すので、初対面の方とであっても、自分の課題意識について深い対話がしやすくなるように感じました。
これが同じ組織の人たち同士であれば、普段は話題にしづらい「本当はこういう行動をしたい」「こんな人と関わりたい」という思いを共有することができそうです。
ワークショップの”仕掛け”
山川さんによると、このワークショップでは、次のような“仕掛け”がされています。
・カードに記載されているのは課題ではなく、ありたい姿なので、愚痴ではなく前向きな話し合いになる
・よく出がちな「自販機を置いてほしい、暑い・寒い」といったレベルのことではなく、カードで示されたテーマで話すので、話題がそれず、深い会話が起こりやすい
・日ごろ、組織の課題を深く考えるような立場ではない方にとっても、カードがヒントになって考えを引き出してくれる
・インタビューの型(質問内容)が決まっているので、話すのが苦手な方でも話しやすい
・アイデアを出すために強制発想法を用いるが、大勢でわいわい取り組むとアイデアがアイデアを生むような状態をつくれる。
空間をつくるプロセスに多くの人が参画することで、組織として大切にしたいことが明らかになります。イノベーションを起こすために「オフィスで皆が学ぶ機会を増やしたい、社内外のひととの交流を増やしたい」、そのために、「外部の人も入ってきやすい場所に多機能のオープンスペースを設ける」。このように「〇〇の行動を起こしたいから、この空間には〇〇のデザイン・機能が採用されている」と、オフィスのすべてのエリアに理由付けができると、新しい空間への社員のオーナーシップが高められます。このようにして生み出された空間は、大切にしたい価値観や行動を意識させ、行動を促し、組織と人にポジティブな影響を与え続けるのではないでしょうか。
山川さんの活用されているツールについて、詳しくご覧になられたい方はこちらからどうぞ
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京都大学総合人間学部、同大学院人間・環境学研究科修士課程修了。専攻は文化人類学、クロアチアで戦災からの街の復興をテーマにフィールドワークを行う。
株式会社ビジネスコンサルタント入社後、企画営業・営業マネジャーを担当。現在は同社の研究開発部門で、環境と社会の両面でサステナブルな組織づくりにつなげるための情報収集やプログラム開発等に取り組んでいる。Good Business Good Peopleの中の人。