美しい海や川や山、自然はずっと美しくあってほしい。私たち人間が生きていることでこの自然を損ないたくない。かたや、企業経営は、利益追求もしていかなければならない。

環境や社会が持続可能でなければ、業界も自組織も持続可能にはなり得ない。そのためには、自社はどのような役割を負う必要があるのか、どのようなビジネスモデルが求められるのか。企業戦略を構築する際に、はずせないキーワードの1つとして「持続可能性(サスティナブル)」が今、注目されています。

しかし、多くの組織がこの地球環境の危機的状況を感じてはいるにも関わらず、なかなかビジネスの転換にまで踏み込めないのが実情ではないでしょうか。

さまざまな業界や企業から「持続可能な社会の実現」ついての話を伺うと、みなさんの悩みは、この一言に集約されるように思います。
『どのような思考で物事をとらえ、どのような展開でサスティナブルな方向に舵を切っていったらいいのか。』

今回は、改めて「サスティナブルとは?」から始めて、「現在の日本の状況」、そして、「めざすべき持続可能な社会とは」を考えてみたいと思います。

サスティナブルとは?持続可能な社会とは?

サスティナブルに積極的に取り組んでいるスウェーデンに先行事例を見出し、『持続可能性(サスティナビリティ)』に関する勉強会を開催したところ、500名近いビジネスリーダーがご参加くださいました。地球環境と社会の持続可能性の危機に地球規模で直面しているという人類初の課題に対して、「批判をせずリードする」という意味でどのように危機の回避をビジネスに転換していくのか。。。

このテーマに最も詳しく指導実績のある、スウェーデン・ブレーキンゲ工科大学教授カール=ヘンリック・ロベール博士が、北欧企業の取り組み事例や活用している手法などを紹介してくれました。

経営戦略はどの組織も立てますが、その際に持続可能な環境や社会の実現を見据えた方向に進んでいくことが重要です。当然ですが、競争優位確立のためには、お題目やきれいごとではなく、”実践しているか”という事が問われます。

かつての科学者たちは、環境保護について自分の専門分野からしか訴求していませんでした。しかし、様々な問題は「統合的に解決する全体像(フレームワーク)」が必要であり、そのフレームワークに則った方法で解決していかないとひずみが生じるというのです。そして、ビジネスではそのフレームワークを理解した上で「原則」に基づいたサービスを提供していく事が業界をリードし、優位性に繋がっていくのだと教えて下さいました。

そして、博士は、成功している組織をよく研究してくださいと言われました。どのような原則を守り、ビジネスとして何を優先しているかを学ぶべきだと。

持続可能な社会の数歩手前。それが今の日本。

この取り組みは、企業にとって社会的責任であるだけでなく、一歩先行して取り組むことにより「自組織の競争優位と求心力を得る」機会だといいます。

では、世界での取り組み事例と比較し、日本企業の取り組みは、どのように見られているのでしょうか?

『いかに、地球環境や人間社会が直面する問題解決に貢献し、同時に自組織の競争優位と求心力(人材確保・定着など)を得るか』に必要な技術は、圧倒的に日本がリードしているようです。

「日本の高い技術力をこの領域でいかさない手はない」とロベール博士も、はっきり仰っていました。高度なテクノロジーがあり、勤勉でお互いに対して敬意を持ちあう人々が多い日本が、世界の人達にとって“何をすべきか”というお手本にならなければならないと。。。

しかし、残念ながら先行事例として世界中から注目されているわけではありません。先頭集団にすらランキングされないとさえも言われます。

日本の実態としての主な理由は、2つです。
(1)めざす姿(2050年までに100%再生可能エネルギーに切り替える・・・など)を明示して一歩一歩近づけていくバックキャスティング戦略を持たず、できることから着実に実行していくフォアキャスティング戦略が一般的。

(2)一部の部署や一部の人の取り組みにしかなっておらず、組織の全員を巻込めていない。関係者の叡智を集めたイノベーションになっていない。

したがって、周囲からの期待は薄く、また、関係者からの協力を得ることもなかなか難しいようです。

数歩先の社会を見据えて。”サスティナビリティ2.0への旅”に出よう!

勉強会に参加した企業のトップの方々は、いかに社員の理解と協力を得るか悩んでいました。ミドルリーダーは、どのようにしたら自組織のトップ層の理解と協力を得られるかと思案に暮れていました。

この取り組みは、一部の人達だけでリードできるものではないのです。多くの人達の叡智を必要とします。

後日、こういった共通の問題意識をもった企業トップやミドルリーダーが36名集まり、組織的に持続可能経営を展開するためのワークショップを開催しました。

カール=ヘンリック・ロベール博士から学んだ「持続可能性(サスティナビリティ)4原則」「バックキャスティングのABCDプロセス」などを活用して、ケース学習や自組織適応などを検討していくのです。

短期・長期のバランスをどう判断するかという課題や費用対効果の判断、化学的に検証された「持続可能性(サスティナビリティ)4原則」でビジネスプロセスやサプライチェーンを適切に評価する難しさなど、議論は尽きませんでした。

そして、『地球環境や人間社会が直面する問題解決にいかに貢献し、同時に、自組織の競争優位と求心力(人材確保・定着など)を得るか』というテーマには、いくつかのハードルがあるという実態が浮き彫りになりました。

しかし、トップのリーダーシップ経験豊富なパートナーの協力ということをクリアしていけば、「手に届く未来」であることも確認できました。

企業の社会的責任(CSR)であるだけではなく、一歩先行して自組織の競争優位と求心力を得ようとする取り組みを、我々はサスティナビリティ2.0への旅と呼びます。いかに、多くの組織がこの旅に向けて出発できるか、それが今我々に求められていることなのです。

いざ「持続可能な社会」へ!その旅に必要なこととは?

では、順調に“サスティナビリティ2.0”へ旅するためのポイントは何でしょうか?

一つ目:パートナーを得ること

この航海には、羅針盤となるべきよきパートナーが必要です。
既に取り組みを進めているグローバル企業は、スウェーデンにあるナチュラルステップとの出会い・取り組みがサスティナビリティへの進みを促進させたと認識しているようです。
(ナイキ /世界最大手のカーペットタイルメーカー インターフェース /ダウグループ ローム・アンド・ハース・カンパニーなど)

我々もナチュラステップとパートナーシップを結び、認定トレーナー資格も得ました。日本組織の発展のためにお役立ちしたいという使命のもと。。。

二つ目:自己効力感(セルフエスティーム)の向上

荒波を超えていく船員には、地球規模の広い視野や論理思考・システム思考が必要になってきます。また、同時に、揺るがない柔軟な自己効力感(セルフエスティーム)が必要です。

自分自身も揺るがないと同時に、柔軟な自己効力感(セルフエスティーム)を持ち、メンバー個々のセルフエスティーム向上を支援できる『リーダー』、大海のなか、その航路の舵を切る『リーダー』の存在が必要です。

カール=ヘンリック・ロベール博士はこう語っています。
「持続可能性(サスティナビリティ)が達成できるかどうかという問いは、そのための資金や技術を持っているかということではない。 資金や技術はもうあるのだ。問題なのは、十分な数のリーダーが揃うのが間に合うかということである。」 と。

あためて問う。持続可能な社会とは。

みてきたように、「持続可能な社会」は「実現不可能な社会」ではないのです。充分に実現可能な、また、わたしたちのすぐ身近な「手に届く、近未来社会」のことなのです。

その「近未来」からいまの私たちについて考える、それが今まさに求められていることです。
今がその「船出」のときなのです。

【参考情報】
サスティナビリティ2.0への旅(グラフィックファシリテーション:2015年3月)
北欧No.1のハンバーガーショップに学んだ サスティナビリティの真髄
「強い」人材づくりとは?~ 折れない心の源 セルフエスティームの向上 ~

ブログでもご紹介したカール=ヘンリック・ロベール博士らによる、サスティナビリティの観点から企業活動をどう見直していくべきか、分かりやすくまとめた資料を下記よりダウンロードしていただけます。ぜひ本ブログと併せてご参照ください。

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