私はコンサルタントとして企業トップの方々からお話を聞く機会が多いのですが、最近頻繁に「強い人材」という言葉を耳にします。

強い人材、、、『強い』、『強さ』とはなんでしょうか。
あらためて、手持ちの辞書で「強い」というこの形容詞の意味を調べてみました。

    • 力や技がすぐれていて他に負けない
    • 健康である。心身が丈夫である
    • 物事に屈しない精神力がある。少しのことでは参らない。ひるまない
    • 環境や条件に屈しない。物事に耐える力がある

などなど。

なるほど、さすがは辞書!
これらの説明と私のコンサルタントとしての経験にいろいろと思いを重ねてみると、企業の方々の求める「強い人材」にヒントがあるように思いました。

そしてもうひとつ、別の単語が浮かんできました。
それは「しなやかな」という言葉です。

「強さ」を言い換えてみると、「困難な状況にしなやかに適応し、折れない、負けない」ということでしょうか。

たとえるなら、柳の枝のような。。。。風が吹けばそれにあらがうことなく、流れるように宙をたゆたい、また元の状態に戻ることができる力…なのではないかと思います。

「強い」人材の要素とは、一体なんなのでしょうか?
そもそも「強さ」とは、育成できるのでしょうか?

最近日本では、このような問題意識を持っている経営者の方々が増えてきていて、私も次のような話をする機会が多くなってきました。

  • 行動変容には2つの学習が必要
  • 行動の根底にはセルフエスティームが働いている

今日は「強い人材」育成に必要なことを、この2つの視点から私の考えをお伝えしたいと思います。

1.行動変容に必要な2つの学習

さて「行動変容」というと、みなさんには少々聴き慣れない言葉かもしれません。それは、「今までの行動を変える」「新しい行動をとる」という意味ととらえてください。

その「行動変容」のためには、2つの学習(「活動思考」と「内省思考」の学習)が必要といわれます。

詳しく見ていきましょう。

1. 「活動思考」による学習

「どうすればうまくいくのだろうか、どんな解決方法が役に立つのだろうか」
問題に直面したとき、このように考え答えを見出していく思考パターンをもとに、適切な解決方法や具体的な手法やテクニックを習得して、新たな行動につなげる学習です。

(例)  リーダーがリーダーシップを発揮するために、必要なセオリー・スキル・手法・アプローチ方法などを身につける学習

2.「内省思考」による学習

「どうして自分は、ひとつの解決策にこだわってしまうのだろう…。わかっているのになぜ行動に移せないのだろう…。」
問題に直面したときに、行動の内面にある感情やこだわり、不安などに気づき、それらの考えから自分を解放し、葛藤を乗り越えて、新たな行動に繋げる学習です。

(例) リーダーとしての他者への関わり方や気持ち感情の背景にある自分自身の不安や思い込みに気づく力を磨き、それらを効果的にコントロールすることを学ぶことで、より効果的なリーダーシップの発揮に繋げていく

最近は2つめの「内省思考による学習」のニーズが増えてきているように感じます。

リーダー育成のためには、スキルや手法を身につけることが重要で、これまでは「活動思考による学習」にばかり意識してきましたが、それだけではなく、自分の気持ち、感情を効果的にコントロールするという「内省思考による学習」も必要だという考え方が広まりつつあるように思います。

2.行動の根底に働く心理とは??

さて、学習したものを行動にうつす過程で影響してくるのが、自分で自分を「ポジティブ」に受け止めているかの心理的な部分です。ポジティブな状態とは、自分を決して投げ出さず、どんな状況でも諦めず、仲間と自分を信頼し、最後の解決までやり遂げる状態、という意味でもあります。この心理的な状態が行動を起こせるかどうか、を左右します。

心理学用語では、ポジティブな自己概念を”セルフエスティーム”といいます。そのセルフエスティームには、3つの要素があるといわれます。

  1. 自己重要感…私は重要で意味のある存在だ
  2. 自己有能感…私はいろいろな問題を解決できる力がある
  3. 自己好感…私は自分のことが好きである
    ※ セルフエスティームの詳細は、こちらをご覧ください。

これらの自己概念がポジティブな時には、私たちは自分の力を精一杯発揮し、周囲に柔軟に対応していくことができると考えています。

私たちの行動(しなやかであったり、かたくなであったり)の根底には、このセルフエスティームが強く働いているといえます。

強い人材の育成には、「活動思考による学習」だけではなく「内省思考による学習」が必要であり、その内省思考を支える基本的な考え方としてセルフエスティームが重要であると考えています。

つまり、行動パターンを理解し学習し、セルフエスティームに気づけば、「困難な状況にしなやかに適応し、折れない、負けない」力を身につけることができる!と私は考えています。

このセルフエスティームに着目したプログラム(HEP:ヒューマン エレメント・プログラム)は1988年から展開し、多くの業界の人材育成に活用されています。
また「折れない心を作る」プログラム(レジリエンス プログラム)も多くの方々から好評をいただいています。

初めから強い人はいない!訓練で「強く」なれる!

グローバル化、ダイバーシティ化のなかで、価値観、国籍、性別、労務形態、年齢などの「違い」にこだわらずに、「違い」をしなやかに認め合い、受け入れ、一緒になって課題を遂行していくことができる「強い人材」が求められています。

変化に対応するだけではなく、自ら変化を生み出す、組織にイノベーションを起こせる人材育成を考えるとき、こうした考え方は重要になるのではないでしょうか。

そして、一歩先をいく「選ばれる人材」「選ばれる企業」になるポイントも、この考えのなかに答えがあるような気がしてなりません。

本ブログでご紹介したしなやかな強さ、ポジティブな心理状態は、組織に様々なメリットをもたらします。そのひとつがクリエイティビティです。「クリエイティブとは何か」に関する視点は人それぞれですが、以下よりダウンロードいただける資料では、6つのクリエイティビティを定義し、あなたの思考プロセスを分析します。 ご興味のある方は資料をダウンロードし、ご自身の「クリエイティブタイプ」をぜひ診断してみてください。

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