ビジネスにおけるイノベーション(革新)を考えるにあたっては、様々なアプローチがあります。
その一つに「サスティナブル(持続可能な)」をキーワードにしたアプローチがあり、注目を集めています。
「サスティナブル」という言葉はあまりにも意味が広く、これをキーワードにして何から取り組んだら良いのか考えづらい側面もありますが、日本には「もったいない」という分かり易い言葉があります。
環境分野で初のノーベル賞を受賞したケニア人女性のワンガリ・マータイさんが2005年に来日した際に「もったいない」という日本語に感銘を受け、世界に広めてくださいました。そのことをご存知の方もいらっしゃるかと思います。
この言葉の何が素敵かというと、3R(Reduce(削減)/Reuse(再利用)/Recycle(再生))といわれる環境活動を一言で表している上に、かけがえのない地球資源に対する尊敬の念が込められていることです。
日本の日常にある「もったいない」
「もったいない」という言葉は日本では日常的に使われており、日々の生活にこの言葉を代表するモノがいくつもあります。
例えば「ふろしき」という四角い布があります。季節を感じさせる美しい柄などが特徴ですが、ただの美しい布ではありません。
- 結び目を作ってお買いものバッグとして活用
- 書類を運ぶ時に包む
- ワインボトルなど様々な形のものを包む
- 贈り物の包装紙として使う
ふろしきを包装紙代わりにすれば、紙と違って、贈られた人は形を変えて使い続けることができます。
このように日本の日常生活に入り込んでいる「もったいない」ですが、ビジネスの世界ではまだ十分に生かされているとは言えません。コスト削減のためには雑巾を絞るように無駄を無くすことをしていても、ビジネスを成長させるために、つまりイノベーションを起こすためには活用されていないということです。
「もったいない」が生み出す「サスティナブル」なビジネス
先日、「もったいない」を体現している会社の方に偶然お会いしました。株式会社ナカダイ(NAKADAI Co. Ltd.)という企業の方で、その取り組みが非常に興味深かったのでご紹介します。
この企業は、廃棄物処理業者として経営してこられました。しかし、廃棄物の処理だけでなく資源循環のための仕組みをデザインする責任があると考えられ、そこを軸に新たなビジネスを展開しています。役目を終えた製品、在庫からそのまま在庫処分となったモノ、製品ラインから落ちた部材、そうした多種多様な廃棄物を「材料」と捉え、「ソーシャル・マテリアル」として販売・再生させる取り組みです。
なかでも話題になっているのが「モノ:ファクトリー」というワークショップです。
ここでは、産廃工場に集まる多様なモノを、自分で実際に解体できる講座が開催されています。
参加者は自らの手で解体に取り組むことで、自分たちの身の回りで使用しているものについて知るだけでなく、「もったいない心」をくすぐられ、廃材自体に愛着を持ってしまいます。そして、いつもは廃材としか見ないモノを、ついつい使いたくなってしまい、さらには何かを作りたくなってしまうのです。
実際に解体したものは、ナカダイがリサイクルしますが、参加者は気に入ったパーツを持ち帰ることができます。また、パーツを使って、バッヂやモビール、ブックマークなどの作品を作って持ち帰ることもできるのです。
新しい発想やイノベーションはモノから生まれるという考え方に基づいて、ナカダイは廃材をデザインして販売したり、ワークショップを開いて、「もったいない」を軸にした新しい「サスティナブル」なビジネスを展開しています。
サステナビリティ(持続可能性)は、地球上に住む誰もが関係するテーマです。ビジネスに取り入れることで、ステークホルダーに共感され、受け入れられるイノベーションを起こすきっかけにもなります。
皆様の会社では、サステナビリティを戦略的に取り入れられていますか?
サステナビリティを目指したイノベーションは、企業にとっての生き残り策に他なりません。しかし、関心はあるけれどもまだ身近な問題として感じられないという方も少なくないかもしれません。以下よりダウンロードいただける資料では、サステナビリティを実現する”秘訣”を一部ご紹介しています。自社のビジネスモデルを今一度考えるきっかけとなれば幸いです。
[hs_action id=”123″]
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。
株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。