この記事では、当サイトを運営する株式会社ビジネスコンサルタントがご支援した、エア・ウォーター株式会社様におけるサステナブルビジョン策定/SDGs推進の取り組みについてご紹介します。


前回の記事では、エア・ウォーターグループ(以後AW社)のサステナブルビジョン検討についてご紹介しました。

ビジョン検討を通じて、同社の経営理念やパーパス、そして事業活動そのものに、すでにサステナビリティに通じる要素が備わっていることが再認識され、さらに今後は環境・社会・人々に対して持続的な価値創造をしていく必要性が共有されました。

グループとしてのビジョン検討の次は、事業分野別のビジョンとロードマップ策定に取り組みました。事業領域が多岐にわたるAW社では、ビジョン実現に向けたアクションを起こすのは事業部門が主体です。それぞれマーケットやビジネスモデルが異なるため、SDGsへの取り組み方も変わります。

事業分野別の検討は、8つのカンパニーと3つの地域事業会社、合計11事業分野に分かれて行われました。合計すると100人を超える方々が、各々の事業分野ごとのビジョン策定、ロードマップ・KPI設定に携わりました。これほどの大人数の方々に当事者意識を持っていただきながら、具体性のある内容をスピーディに検討するためには、プロジェクトの体制、人選、運営方法などに工夫が必要です。

ここではまず、ビジョン実現のために社員参画を促すことを重視したプロジェクトの設計を、3つのポイントからご紹介します。

社員参画を促すためのポイント1 検討範囲に合わせた委員会・検討主体を設置

AW社におけるサステナブルビジョン検討は、2段階で進められました。

①グループレベルのサステナブルビジョン・マテリアリティの検討:SDGs推進室及び拡大委員会議(各事業分野のトップ)(前回の記事の内容)

②事業分野ごとのサステナブルビジョン・ロードマップ・KPIの検討:事業推進担当者会議

今回の記事で取り上げるのは、②の事業分野ごとの検討フェーズです。前述した合計11事業分野のそれぞれで、事業推進担当者を中心に、プロジェクトチームが形成されました。

このプロジェクトチームは、スピーディに検討・意思決定し、かつ具体性あるアイデアを取り入れるため、次のようなガイドラインで人選がされました。

①事業推進担当:チームのリーダー。組織内に影響力があり、プロジェクトの検討・意思決定を経営目線で行える役職者が担った

②実務担当者:事業分野内での検討に際して、実際に手を動かしてビジョンやロードマップを取りまとめる

③カンパニー傘下のグループ会社から人選される、事業の実態に詳しい方々(各事業分野の状況に応じて、この立場からの参画人数は違いあり)

社員参画を促すためのポイント2 オンライン活用による、効率的なミーティング実施

各事業分野は、以下の観点を検討しました。

・現在の事業活動におけるSDGsに資する取り組みの把握(SDGsに貢献していること・SDGsに反していることの可視化)

・自分たちの事業分野におけるサステナブルビジョン

・ビジョン実現のための成功の柱

・アクションに向けたロードマップとKPI

これら幅広いテーマを検討するために設定されたコンサルタントとのミーティングは、1事業分野あたり2時間×10回。すべての事業分野を合計すると110回、220時間のミーティングでした。そのすべてに堤さんらSDGs推進室のメンバーが同席して、スピーディな意思決定をサポートしました。もちろん、各事業推進担当者の方々はこれとは別に、事業部内でもミーティングを重ねています。

この検討期間は、新型コロナウイルスの感染拡大時期と重なったこともあり、すべてのミーティングがオンラインで行われました。AW社では北海道から九州まで日本全国に拠点があるため、各地をコンサルタントが訪問する・メンバーが移動すると、それだけでプロジェクトの実施日程が限られてしまいます。オンラインにすることで、2時間のミーティングを1日に3回実施することができ、集中して議論を重ねることができました。

社員参画を促すためのポイント3 共通言語づくりは短期集中で。3日間で管理者1600人が研修受講

並行して行われた現場の管理者向け研修会もすべてオンライン実施でした。その対象は1600人。これだけの方々の受講が、3.5日間、計7回の研修で実現しました。もしこの研修を対面で開催していたら、1回あたり40人参加したとしても40回実施が必要で、当然3~4日間では終わりません。会場手配や参加者の移動、資料の発送、などで多くの温室効果ガスも排出されます。「オンラインにより、すごい効率化と脱炭素を実現した。まさにSDGsに叶ったやり方でした。」(堤さん)

もちろん、対面実施の場合は双方向的なやり取りが充実し、大きなメリットはあります。しかし今回は、オンラインで、タイミングを逃さず安全に短期間で研修会を開催する選択肢を取りました。結果として、組織の要職にある方々にサステナビリティへの関心を高め、理解を深めることで、経営としてSDGsに取り組むことの意義の浸透、気運の醸成が図られました。

サステナブルのレンズを通して、自分たちが携わる事業の価値を再確認

ここまで、大規模な全社プロジェクトを企画・運営する立場からの成功ポイントを3つにまとめてご紹介してきました。視点を変えて、事業部門側からプロジェクトに参加した方々は、サステナビリティの視点から長期のビジョンや取り組み課題を検討するという経験や、プロジェクトの運営のされ方をどのように感じていらしたのでしょうか。お話を伺ったのは、同社海水カンパニーで事業推進担当をされた、企画本部高橋美葵さんです(所属はプロジェクト実施時)。

AW社海水関連事業

海水カンパニーは、海水を原料に、国内トップシェアをほこる塩や、その副産物であるマグネシウムを活用した環境製品等を提供している事業部門です。海水といういわば枯渇することのない原材料を用いている点では、環境負荷は少ない事業です。塩と聞くと、伝統的な産業のような印象を受けますが、海水に含まれるミネラルやマグネシウムには、今後の技術開発により新たな製品を生み出せるポテンシャルが大きくあります。

「プロジェクトに取り組んでみて、SDGsはこれまで自分たちがやってきた事業活動と意外とつながりがあるのだということに気がつきました」「私たちの事業は、塩という人の生活に欠かせないものを支えています。改めて事業の意義を再確認しました。自分たちのマイナス面だけではなく、『これだけ良いところがある』と思うと、プロジェクトに取り組むエネルギーも高まりました

海水関連事業では、一部工場では、自家発電に化石燃料を使用したり、原材料の製造時にCO2排出量の多いものを使用したりしています。「もともと認識していなかった新しいリスクが明らかになったということはありませんが、課題意識は高まりました。」

リーダーのコミットメント、共通言語づくり、取り組む人が中心になる計画策定

海水カンパニーでは、プロジェクトの責任者を本部長が務めました。影響力のある役職者がリーダーを担うことで、このプロジェクトに対する組織としての本気度合いが示されます。本部長のもと、高橋さんを含むお二人が実務担当者となり、関連企業3社とともに、ビジョンやロードマップの検討を行いました。

SDGsやサステナビリティというのは、テーマ自体は前向きなものですが、ともすると抽象度が高く、具体的なアイデアを出すとなると進捗しないこともあります。「こういう取り組みは体制づくりが大変です。皆さん、もともとの仕事も忙しいのでおろそかになりがち。でも今回はしっかり体制づくりしてもらえたのでやる気を持って取り組むことができました」

また、検討の随所で、本部長が経営目線のコメントをすることも、より具体性ある計画策定につながったと言います。

関係者は全員、SDGsとサステナブル経営の研修会(ビジネスコンサルタントが実施サポート)を受講していました。共通言語が形成されており、スムーズな議論に繋がりました。

海水カンパニーの場合、ビジョン実現への具体的なアクションをとるのは、事業会社側です。「各社が考えられたこと、会社としてやりたいと考えるものを大切にして、それをカンパニーとしてどうまとめ上げていくか、というスタンスで臨みました」(高橋さん)というように、計画段階から実際にアクションをとる方々の意見が中心となるように、検討が進められました。

リーダーのコミットメント、共通言語づくり、取り組む人が中心になる計画策定、この3つが揃うことで、プロジェクトチームとして効果的に検討に取り組めたと言えます。

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今回は、大規模な全社プロジェクトで、現場の参画を促すためにプロジェクトの設計において留意したいポイント3点、そしてプロジェクトチームを効果的に運営するためのポイントをご紹介しました。次回の記事では、SDGs推進の方針を受けて、AWグループの現場で起き始めた変化についてご紹介します。


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