あなたの職場には一緒にいるとワクワクするようなリーダーや仲間がいますか?
組織や職場ではエネルギーを人や場に与える人と逆に奪ってしまう人がいるようです。人は自然と、エネルギーを貰える人を見かけたら近寄って、エネルギーが奪われると感じる人を見かけたらちょっと距離を置く動きをしてしまいます。それは意識した動きではないでしょうが、「自然と・・・」そうなってしまうものです。
実は先日、学生時代の指導教官が退官される感謝の会に参加しました。久しぶりにお会いしたのですが、研究そのものへの情熱はもちろんのこと、幅広い分野に好奇心を持ち、それを楽しんでいる様子に変わりがなく、とても多くのエネルギーを貰えました。
ほんの2時間位でしたが、この先生と一緒にいると尊敬の念を感じるとともに自分もワクワクすることを嬉しく感じた会でした。まさしくエネルギーを人や場に与える先生です。
では、エネルギーを人や場に与える人と逆に奪ってしまう人の違いは一体何なのでしょうか。また、そのような人は組織にどのような影響をもたらすのでしょうか。
今回は3回に渡って「ポジティブなエネルギーとその効用」に関して、ミシガン大学のキム・キャメロン教授から教わったことをご紹介したいと思います。
キム・キャメロン教授が注目する企業回復の要因とは?
ミシガン大学のキム・キャメロン博士は、ビジネススクールで「ポジティブ組織論」や「ポジティブ・リーダーシップ」の研究をしている方です。
もともとは、どうして企業が衰退していくのかを研究していました。しかしある時、企業が回復していく事例をみて、その要因は一体何かということに興味を持って研究テーマを変えました。そして、その要因こそが「ポジティブ・リーダーシップ」だと様々な研究から結論づけたそうです。
ポジティブなビジネス、ポジティブなリーダーシップは世界にポジティブな変化をもたらす!といった、一見すると楽観主義かと思われるようなことですが、数多くの研究によって実証されています。
組織に変化をもたらす「ポジティブ・エネルギー」
キャメロン教授の研究する「ポジティブ・リーダーシップ」の中心にある概念こそが「ポジティブ・エネルギー」です。
日本ではストレスチェックが義務化されたり、燃え尽き・抑うつ・疲労が組織に悪い影響を与えないようにするための様々な対策が講じられています。しかし、「ポジティブ・エネルギー」が組織や職場に生み出す影響については、あまり注意が払われていないように思います。
「ポジティブ・エネルギー」の特徴をキャメロン教授は以下のように表現しています。
- 活気(aliveness)
- 覚醒(arousal)
- バイタリティー(vitality)
- 熱意(zest)
私たちが活動したり、何かを創り出したりする時の源となる力です。
リーダーが「ポジティブ・エネルギー」を持っていることは、とても重要で、職場にいるメンバーの潜在的なリソースや能力を解放し、開花するまで高める上で欠かせないものではないでしょうか。
「ポジティブ・エネルギー」と他のエネルギーの異なる性質
「ポジティブ・エネルギー」と他のエネルギーは一体何が違うのでしょうか?
「ポジティブ・エネルギー」を効果的に組織や職場で育みたい時には、「エネルギー」の種類を知って、分けて考える必要があるとキャメロン教授は言っています。
それは、“使われると枯渇するエネルギー”と、“どんなに使っても増える一方のエネルギー”といった違いです。
“使われると枯渇するエネルギー”は3種類あります。
【身体的エネルギー】
マラソンをしたり、1日中忙しく過ごしたり、活動したりすると身体は疲れて、エネルギーを失ってしまいます。栄養や休息、睡眠を取らないと回復しないので美味しく食事を楽しんだり、ゆっくり寝たりすることが大切です。
【心理的エネルギー】
難しい問題に長時間取り組むと、頭が疲れて集中できなくなります。回復するには、精神的な休息を取ったり、リラクゼーションが必要です。猫と戯れることが癒しになる人もいるでしょうし、瞑想なども効果的です。
【感情的エネルギー】
スポーツの競技や観戦で感情的に興奮したり、大切な人との別れによって激しい哀しみに直面したりすると奪われます。これも休養しないと回復しません。
かたや“増える一方のエネルギー”である【関係性エネルギー】は、この3つの個人的なエネルギーとは対照的なものです。
ポジティブな対人関係を通じた【関係性エネルギー】は枯渇するどころか、どんどん増えていくといいます。
お互いに相手のことを思いやったり、好感を持てる人と話す時や一緒に仕事をする時には時間も忘れ、今まで感じていた疲れも吹き飛ぶ位に集中できたり、仕事が一気に進むといったことがあります。
もちろん、後から身体的エネルギーの低下に気づくこともありますが、気持ちとしてとても充実した状態になっています。
このような状態を組織や職場で常に創りだせたら、とんでもないパフォーマンスが生まれるんだろうな・・・と想像するだけで楽しくなります。
この【関係性エネルギー】を生み出せる人こそがエネルギーを人や場に与える人だと言えます。
組織や職場のやる気を喚起するには、「動機づけ」や「インセンティブ」が重要だと言われていますが、それは「ポジティブ・エネルギー」とは違うものだとキャメロン博士は説明しています。
次回は「動機づけ/インセンティブ」との違いや、「ポジティブ・エネルギー」を生み出す方法についてお伝えしたいと思います。
『ポジティブ・エネルギー』シリーズ
1.ワクワクできる職場にあふれる『ポジティブ・エネルギー』とは-ポジティブ・エネルギー①
2.今欲しい、職場にエネルギーをもたらす人材の特徴-ポジティブ・エネルギー②
3.変革を持続可能にするために、組織が増やすべき人材は『ポジティブ・エナジャイザー』_ポジティブ・エネルギー③
ポジティブ心理学に関心のある方、ポジティブが大事とわかってはいても、過度にネガティブな発想・行動パターンから脱する方法が分からないという方へ、こちらのプログラムもご参照ください。
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東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。
株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。