1994年から「ミッションゼロ」というビジョンを掲げ、ビジネスのあらゆる側面における環境負荷ゼロに取り組むインターフェイス社(本社米国)。サスティナビリティに取り組むことで、イノベーションを次々起こして収益力のある業界トップ企業であり続ける原動力となっていることを、2回の記事でご紹介してきました(第1回第2回)。

1994年以降の取り組みは、次のような成果につながっています。インターフェイス社はビジネス自体は成長を遂げながらも、全体的な環境負荷は大きく削減してきました。

2016年までの“ミッションゼロ”の成果

エネルギー使用量        -43
再生可能エネルギー       +87
温室効果ガス排出量                 -95
水の使用料                     -86
再利用・バイオベース材料        +58
製品のカーボン・フットプリント  -60
※基準年:1996年
(インターフェイ社プレゼンスライド2018年3月より)

 これらの数値以上に重要なことは、同社のサスティナビリティ戦略担当ゲアンナ・ファン・アルケルさんが「システムレベルのイノベーション」と表現するように、同社のビジネスモデルそのものが、「取って、作って、捨てる」から「循環型(閉じたループ)」へと、デザインし直されたということです。

不可能を可能に、鍵となったのは社外の人々との協働

『これまで、カーペットの会社にイノベーションが存在するとは思われてきませんでした。しかし、実際にはビジネスモデルのイノベーションが起こったのです。しかしこれは自社のみの活動では実現できませんでした。自然からインスパイアを受けて様々な商品のイノベーションを起こしてきましたが、同時に私たちは、サプライチェーンの方々との関わりでも同じように自然から学んでいます。自然と同じで、ビジネスも全てがつながっていると考えるのです。例えば、TacTileという製品は素晴らしいイノベーションで、化学薬品を使った糊を使わなくてよいし、においもない、CO2も削減できるものなのです。しかし、カーペットを床に貼る職人の方々には当初受け入れられませんでした。なぜなら、今までとは違うことをしなければならないからです。』(アルケルさん)
そこでインターフェイス社は職人たちを集め、自社で働く人々同様「あなたにとってのサスティナビリティとは何ですか?」という問いから始め、考え、語ってもらうことでサスティナビリティを理解していってもらうという丁寧なプロセスで巻き込みをはかり、協働を実現したそうです。

代替素材探しでは、業界を超えて協働

インターフェイス社はまだミッションゼロを完ぺきに達成したわけではありません。代替素材(リサイクルもバイオベースも)ではまだ新たな可能性を探っていますし、再生可能エネルギーの使用量は、世界各地の再生可能エネルギーの供給量に違いがあるために100%に至っていません。
『ですから、自分たちがリードしてするべきことはまだ、沢山あると考えています。今現在は漁網の回収だけでなく、プラスチックの回収もしています。これも協働がキーワードで、DELコンピューターや、ハーマンミラーなどプラスチックを使用するメーカーとともにプラスチックを回収しています。また、どんなプラスチックが何に使えるかを研究しています。このように、多くの企業や関係者と協働することこそが次のステップにつながります。』(アルケルさん)

次に目指すのは、環境・気候を回復すること:Climate Take-Back

インターフェイス社は2020年を3年も前にして、ミッションゼロの先のビジョン「Climate Take-Back」を打ち立てました。それは環境負荷ゼロを超えて、地球の生態系・自然環境・気候を回復させる影響力を発揮していく、というものです。

2020年までに工場をゼロエミッションで運用すること、低炭素の製品をだしていくこと、これを続けることで、地球を再生していく取組みになります。さらには、工場が森林の役割を果たすようなものを目指していきたいと考えています。まだ未発売ですが、大気中のCO2を取り込む性能を持つ製品も開発しています。野心的なゴールを掲げながら挑戦をしていますが、どうしてこれが可能なのかと言えば「協働」のたまものなのです。』(アルケルさん)

協働を呼びかけてイノベーションを確実に

インターフェイス社は、Awarehouse というビジターセンターを拠点に、ミッションゼロを目指す過程での自分たちの学びを広め、協働を呼びかけています。

『このアウェアハウスは、ポジティブスペースのとても良い具体例です。なぜならここにいることで、すでに可能なことは何で、あなたができることは何かを考えることができるからです。私たちは多くの人を、サスティナビリティの実現に向けて行動しようという状態になるよう働きかけなくてはいけないと考えています。』

人は、自然なものに触れている時、インスピレーションをかきたてられ、創造性が増すと言われています。インターフェイス社は、ミッションゼロを通じて、自分たちが提供すべきは『タイルカーペット』ではなく、例えば足音がしなくて、きれいな空気で、心地よい空間になるというカーペットがもたらす利便性に着目し、製品や製造プロセスそのものをデザインし直してきました。それはいま、これらの独特のデザイン性ある商品として具現化されています。

『ポジティブスペースということについて考えるとき、私は、サスティナブルなスペースでなければポジティブということはありえない、と考えています。私たちが作ろうとしているクリエイティビティをかきたてるインテリア、健康的な空気の空間といったものは、人々のウェル・ビーイングを追及するためにあります。』(アルケルさん)

こういった考え方はミッションゼロに取り組む中ですでに見出されてきたものでしょう。今、インターフェイス社があらたに表明したClimate Take-Backがどのように協働を生み出し、何を達成するのかがとても楽しみです。

※記事内の画像:インターフェイス社プレゼン資料より引用

インターフェイス社が社会問題を解決し、新たなビジネスモデル創造につなげた取り組みをご紹介!SDGsの「アウトサイド・イン」のご参考にどうそ。
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廣瀬 沙織

東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。

株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。