サスティナビリティでビジネスモデルを変え、競争優位性を高めたお手本ともいえる企業、インターフェイス社。1973年創業の、米国を本社とするタイルカーペット及びフロア材で世界トップシェアを誇る企業(売上高年間約1000億円)です。

 創業者であり当時CEOであった故レイ・アンダーソン氏が、「2020年までに環境への負荷をゼロにする」というビジョン、「ミッションゼロ」を掲げたのが1994年。このビジョンは最初、驚きと戸惑いを持って社員に受け止められましたが、その後着実に同社のDNAに根付き、イノベーションの源泉となり、「ビジネスモデルのリデザイン」へと繋がりました。

2015年に私たちはインターフェイス社日本法人の福元さんにお話を伺って、ミッションゼロによる具体的な取り組み内容や成果についてお伝えしました(記事はこちら)。その後も取組みは進展し、なんと20183月現在、すでに2020年を超えて次のビジョンへと視点が移っているというのです(2016年のアニュアルレポートで、すでに新ビジョンを表明しています)。

 201711月と20183月、同社のオランダ、スケルペンゼールにあるビジターセンター「Awarehouse(アウェアハウス:気付きの家)」を訪問し、サスティナビリティ戦略を担当するゲアンナ・ファン・アルケルさんにお話を伺ってきました。ミッションゼロの成果とは?その成功を支えた要因とは?そして次にインターフェイス社が目指しているのは何なのでしょうか?

ミッションゼロを体現する空間:Awarehouse

AwarehouseAwarehouseは、ミッションゼロの理念や学びを、インターフェイス社内外の人々に伝えて、サスティナブルな社会づくりを促進するために作られたビジターセンターです。

インターフェイス社はタイルカーペットを発明した会社であり、スケルペンゼールの工場は世界で初めてタイルカーペットが作られたという意味でも、意義深い場所です。この工場の一施設であった古い建物を、オランダの建築家Claessens Erdmannと協力し、リサイクルされた持続可能な材料のみで、同社の技術・製品を使用して建築されています。

Awarehouse『この建物は、反―建築を表していると言えます。私たちは、古い魚網を再生したり、車のフロントガラスの間の素材を再生したり、あるいは自然の物質を含め、様々な物質を再利用して製品を作っていますが、まさにそれと同様にこの建物を再利用しました。ここは、古い工場を、人々がリサイクルの思考とは何かを学べる場所へと転換させた建物であり、サスティナブルな視点から言えば、古い建物を転換することは新しい建物を作るのと同じように素晴らしい、あるいはそれ以上の価値があるということに気付ける場所なのです。』(アルケルさん)
(同社のHPでは、Awarehouseに関する動画をご覧いただけますhttp://www.interface.com/EU/en-GB/about/mission/Awarehouse-en_GB)

そして、このスケルペンゼールの工場もミッションゼロを体現しています。施設の運営には再生可能エネルギーであるバイオガスを100%使用し、製造時に実質的に水を使用せず、廃棄物の削減も進んでいます。エネルギー効率を高めるために、製造現場で発生する熱は回収され、自社で開発したケーブルマネジメントシステムIntercellを介して床暖房として建物内を温めています。

皆をインスパイアしたビジョン、ミッションゼロとは? 

まず先に、ここではミッションゼロについておさらいしておきましょう。

Mission ZERO

1994年、レイ・アンダーソン氏は、インターフェイス社が2020年までに事業活動を通じた環境負荷を無くし、サスティナビリティとは何かを自分たちの行動で世界に最初に示す企業となることを、ビジョンに定めました。これは「ミッションゼロ」と名づけられ、彼はこのビジョンの実現を、エベレストよりも高い山を登ることにたとえて「マウント・サスティナイビリティ」と表現しました。

そして社内の特命チームとともに模索し、この山を登頂するためには7つの峰を超える必要があると定めました。

1つ目の峰:廃棄物ゼロ
2つ目の峰:無害な排出
3つ目の峰:再生可能エネルギーの使用
4つ目の峰:ループを閉じる※
5つめの峰:資源を効率的に活用した輸送
6つ目の峰:ステークホルダーを巻き込む
7つ目の峰:新たなビジネスモデルを作る
※製品製造に使用する資源に、リサイクルやバイオベースのものを取り入れ、物質を廃棄せず循環させるループを構築すること

 取組みの過程で、これらを達成していることを確認するための具体的な成果領域やその測定方法が確立されています。また、1つの課題解決が1つの峰に対応するのではなく、相互に不可分で関係し合うものとしてとらえてアプローチされています。背景には、インターフェイス社が社会・環境とビジネスとの関係をシステムで理解している、ということがあります。

ビジョンがもたらすイノベーション

『ミッション0から生じたイノベーションは数えきれないほどあります。それは製品レベル、プロセスレベルもありますが、最も重要なのはシステムレベル、私たちがどうビジネスを運営するかという部分に関することです。私たちは自然がどのようなルールで成り立っているかを理解し、自分たちのビジネスも一つのエコシステムとして自然に習って運営したいと考えています。』(アルケルさん)

レイ・アンダーソン氏と特命チームのメンバーは、1994年当時、自分たちのビジョンを実現するために、多くの科学者、環境保護の活動家らとコンタクトを取りました。その過程で彼らが頼りにしたのが、ナチュラルステップによる「戦略的で持続可能な発展のためのフレームワーク」と、ジャニン・ベニュスらが提唱する「バイオミミクリー(生物模倣)」のふたつでした。前者からは、持続可能な社会において持続可能なビジネスを実現するために守るべき原則(持続可能性4原則8項目)と、ビジョンへ人々を巻き込み解決策を生み出す方法論(ABCDプロセス)を学んでいます。そして後者からは様々なレベルのイノベーションを起こす、インスピレーションを得ました。

共通言語・共通のフレームワークで皆をまきこむ

石油を原料とするポリエステル糸を使い、化石燃料を燃やして得られたエネルギーを使ってカーペットを製造している企業のトップが、脱化石燃料化を目指すといったのです。社員たちの動揺はすごいものだったでしょう。しかし、

・石油に頼らず、リサイクルやバイオベースの材料に切り替える
・廃棄物を無害に
・ループを閉じる
・エネルギーや物質の使用量を減らす、使うならば環境に負荷を与えない方法で

これらのことを成し遂げなければならない理由は、ナチュラルステップの持続可能性4原則8項目を理解すれば誰もが納得できました。インターフェイス社は全社員にナチュラルステップの考え方の教育をし、マウント・サスティナビリティの山を登るためにはみんなのアイディアが必要だとメッセージしていきました。

サスティナビリティといっても、誰もが最初から理解できたわけではありません。最初は「あなたにとってのサスティナビリティとはなんですか?」という質問から始めたそうです。「リサイクルすること」とか、「ペットボトルを使わないこと」など、それぞれが考えていることを表明し、それが原則とどう関係しているのかなどサスティナビリティの概念を広げるワークショップを実施していったそうです。今では、インターフェイス社の工場では、トラックの運転手の方でも、清掃を担当している人でも、誰もが「あなたにとってのサスティナビリティはどういったことですか?」という質問に答えることが出来るようになっているそうです。そして、現場からアイディアが出てくるまでになりました。

次回はインターフェイス社が次々とイノベーションを起こせる理由を探ります。今回のまとめに、本サイトでは度々ご紹介している「持続可能性4原則8項目」について確認しておきましょう。

4原則8項目アイコン

  1. 自然のなかで、地殻から掘り出した物質の濃度が増え続けることに加担しない
  2. 自然のなかで、人間社会が作り出した物質の濃度が増え続けることに加担しない
  3. 自然が物理的な方法で劣化することに加担しない
  4. 人びとが自らの基本的ニーズ(健康・影響力・能力・公平性・意味や意義を作ること)を満たそうとする行動が、構造的に害されない

※記事内の画像提供:インターフェイス社(Awarehouse内部はBCon撮影)

インターフェイス社が社会問題を解決し、新たなビジネスモデル創造につなげた取り組みをご紹介!SDGsの「アウトサイド・イン」のご参考にどうそ。
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廣瀬 沙織

東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。

株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。