人材開発のための世界的なネットワーク団体、ATD(Association for Talent Development)が2016年5月22日~25日、ロッキー山脈のふもとアメリカ合衆国コロラド州デンバーでATD2016 International Conference & Expositionを開催しましたので、参加してきました。
デンバーがアメリカ大陸のどこにあるのか、念のためご紹介しますと・・・
ATD2016とは
この大会は世界中から企業・病院・政府・教育機関・コンサルティング会社・テクノロジー開発会社など、人材開発と組織の成長に関わるマルチセクターからの参加があることが特徴と言えます。
最新企業事例、リサーチ結果の共有、参加者同士のディスカッション、著名な講演者のプレゼンテーション、ワークショップ、300以上の展示ブース、サイン会、ネットワーキングパーティーと、まさに世界最大の人材開発の祭典(フェスティバル)です。
この4日間、会場の外のストリートにはATDのフラッグが飾られ、デンバーの街はATD一色に染まります。
2016年のATDをレポートする際に意識したいキーワードはATDプレジデントであるトニー・ビンガム氏が強調していた言葉です。
「Building a Culture of Learning」~学びの文化を持つ組織はベストな成果を上げつづけることができる~
これを実現するため、人材開発・組織開発を担う私たちは何をどうすれば良いのでしょうか?
次回以降、基調講演者のメッセージや各カテゴリーセッションから得られたインサイトから今後の取り組みのヒントを探ってみたいと思います。
その前にまずはATDに参加したことがない方のために、この大会の概要をご紹介します。
世界中から人材開発に携わる人が集まる場
2016年のATD ICEには83ヵ国から10,200人の参加者が集いました。このうち、2割弱の1,800人はアメリカ以外の国からの参加です。昨年は全体参加9600人のうち、アメリカ以外の国からの参加が2300人でしたので、今年はアメリカ国内の参加者がかなり増えたと推察されます(昨年7300人→今年8400人参加=1100人増加)。
毎年、上位参加国の顔ぶれに変わりはありませんでしたが、ここ3年で初めて台湾が参加上位に入ってきました。またアップル、サムスン、ボーイング、コカコーラなど企業の人材開発部門の参加も多く、政府部門からはFBIやNASAの関係者も参加しているそうです。
海外からの参加者のためのラウンジには巨大な世界地図が掲示されます。ここに参加者が自分の名刺を貼るのも毎年のお決まりです。
韓国、日本、中国は毎年の常連参加国なので、同時通訳機の貸し出しがあります。これを機会に、ちょっと英語に自信がないな、という方も来年は参加を検討してみては、いかがでしょうか。
多彩なセッション
4日間にわたる会期中、14のカテゴリから300以上のセッションがあり、どれに参加しようか迷うほどです。発表者は企業、大学関係者、コンサルタントが持論・実践結果や自社の売り込みも含めつつ60分から75分のプレゼンテーションを繰り広げます。
セッション毎のタイトルには「マイクロラーニング」「バイトサイズ」「脳科学」「ミレニアム」といったキーワードが目を引き、これは昨年と同じ流れだと感じました。
いかに学習者を飽きさせずに最後まで受講してもらうか。そのためのプレゼンテーションのコツやビジュアルの見せ方といった実務的なセッションも人気を集めていました。(セッション数 イベントサイトより 2016年5月31日調べ)
高尚で概念的なメッセージから具体的なノウハウまで、多様な関心を持つ参加者が何かしらを「take away(お持ち帰り)」できる幅広いラインナップが揃うこともATD ICEの魅力でしょう。
ちょっと長くなりましたのでこのあたりでおしまいにして、次回以降基調講演者のメッセージやセッションからのインサイトをご紹介していきたいと思います。どうぞお楽しみに!
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参考:世界最大の人材育成会議 ATD2015より
- 問いを持つことが会話を生産的なものにします~ATDからの学び~
- 人材開発の潮流は?ATDの概観から探る
- ATDにみる未来の学習のかたちとは?
- 「新しいリーダーシップ開発」に必要な3要素~今年のATDからの考察~
西南学院大学にて文化人類学を学ぶ。外資系人材ビジネスに13年勤務した後、カリフォルニア大学アーバイン校留学を経て2013年株式会社ビジネスコンサルタントに中途入社。プログラム開発のための探索活動や、サステナビリティコンテンツや診断ツールの翻訳プロジェクトマネジメントを担当。プロセスワークを学び、アート・オブ・ホスティング&ハーベスティング実践者としてオンライン・オフラインでの対話の場のサポートを行っている。