先日、ミシガン大学でのポジティブ・ビジネスをどのように実践していくかを研究する大学教授や経営者の集まりに参加しました。

私自身がこの会議で感じたメッセージは、「potential(潜在力)」です。

人や組織、ビジネスがもつ潜在力を引き出して、よりよい未来を築こうというポジティブなメッセージを受け取りました。

まだまだ限界なんかじゃない。
これからも人や組織はよりよい世界・社会を創り出すことができる。
その能力が人間にはまだ眠っている。
組織もビジネスももっと変わることができる。

そんな勇気が湧いてくるような会議でした。

今回のアメリカ滞在中に参加した「ハフィントンポスト」のCEO兼編集長であるアリアナ・ハフィントン氏の講演会をきっかけに、人間学習や成長について感じたことをご紹介したいと思います。

【参考】ハフィントンポスト 日本語版

一生懸命になる行動に隠されたワナ

一般的に「成功している人」は、

  • 睡眠時間を削ってでも一生懸命働いている
  • ビジネスと私生活は、トレードオフ関係だと信じている
  • タスクを同時にこなすタフさがある

と信じられていると、ハフィントン氏は講演の冒頭で語りました。

皆さんはいかがでしょうか?

「一生懸命働いて、とにかく忙しくしていることが良いことだ」と、なんとなく思っている自分に気づきました。

一方で、「これだけ忙しく頑張っているのだから、いつかは報われる(成長した自分がいる)だろう」と心のどこかで思っています。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

ハフィントン氏は、科学的な実験のデータを元に、これを否定しました。

  • 睡眠不足の状態では、まっとうな判断ができない
  • 仕事ばかりしていると、本当に自分がしたいことを考えられない
  • 人生と仕事に遊びの要素を取り入れると、生産性があがる

つまり、ハードワークする人が成功すると思われているが、実はそうではなく、人間らしく、人生を充実させることも成功の要素の1つであるといっているのです。

とはいっても、科学的データを示されても、いつもの仕事のパターンはなかなか変えられないものです。
「実際に睡眠時間を増やそうと思っても、どうしたら時間が捻出できるのか想像もつかないな…」と思ってしまいました。

実は気づいていない本当の目標

30年間ものあいだ、大人の学習や行動と精神の変容を研究しているハーバード大学のロバート・ケーガン博士は、自書のなかでこのような研究を紹介しています。

生命の危険にさらされるような生活習慣病の改善を、専門医から警告されたとき、実際に自分を変えられる人は、なんと7人に1人(たった15%)だというのです。

私の先輩も、生活習慣病だと指摘されているのですが、ある日、一緒に食事したら、こんなことをいっていました。

「やせないといけないことはわかってるよ。だから、これまでもたくさんの流行のダイエットを試してみた。これだけいろんなダイエットをしたことがあるのは自分くらいだろう。ここまで来ると、ダイエットは趣味の領域だね」

それなのに、一向に体形が変わる様子がないので、またさらに尋ねてみました。

「なぜ、ダイエットしているのに変わらないんですか?」
「毎回、リバウンドしちゃうんだよね。だって、食事をすることが人生の楽しみだから。目の前の幸せについつい飛びついちゃうんだよね…みんなと食事してると楽しいし」
「……」

この先輩のような状況は、一概に、意志が弱い人だからということで片づけられないと、ケーガン博士は言っています。

そして、以下の4つの観点で状況を整理することを勧めています。

  1. 改善目標
  2. 阻害行動
  3. 裏の目標
  4. 強固な固定概念

たとえば、先輩の状況はこのように表現できそうです。

  1. 改善目標:体重を○○kgまでおとす
  2. 阻害行動:外食が中心
  3. 裏の目標:皆と楽しく食事をして過ごしたい
  4. 強固な固定概念:楽しくなくちゃ人生じゃない

変わりたいのに変われないのは、意志力の問題ではなく、「皆と楽しく食事をして過ごしたい(裏の目標)」を満足させている、「外食が中心(阻害行動)」そして、その背後には「楽しくなくちゃ人生じゃない(強固な固定概念)」が潜んでいるのです。

たとえば、私の睡眠不足が改善されない状況は、次のように表現できます。

  1. 改善目標:睡眠時間を増やす
  2. 阻害行動:仕事と勉強、そして友人と会う時間を減らせない
  3. 裏の目標:忙しくしている自分を褒めたい
  4. 強固な固定概念:忙しい人こそが頑張っている人

本当は睡眠時間をとって休んだ方が仕事の生産性があがると知っても、なかなか変えられない。本当はやせないと病気になるとわかっていてもやせられない。どちらにも強固な固定概念が邪魔をして、なかなか変わりたくても変われないという状況にあることは共通していました。

目標に掲げた行動をとるように「一生懸命頑張ること」は、とても大事です。

しかし同時に、その裏にある「裏の目標」と「強固な固定概念」の存在に気づくことが、学習し成長するための第一歩だと言えるのではないでしょうか。

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廣瀬 沙織
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。 株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。