先日、阪神淡路大震災から20年の特集がメディアに取り上げられていました。
私もその当時関西にいた1人だったということもあり、いろいろ思い起こしました。起こった事実にも衝撃を受けたのですが、それ以上に思い込みの怖さを思い知った出来事でした。

震災以前は「関西では地震は起こらない」と信じていました。地震の頻度は確かに関東よりも少なかったですし、史実に残るような地震による大災害も起こったことはなかったので、そう思い込んでいたのです。

そのため、当時は過去の知識をもとに、未来もきっとそれが続くだろうと信じて疑わなかったのです。だからこそ、「起こらないはずの事が起こった」ことをどの様に受け止めたら良いかとても戸惑ったのを覚えています。

その後多くの活断層が調査され、日本中どこでも地震が起こる可能性があることが分かりました。地震は「起こるべくして起こった」ものだったと知ることになったのです。

今回は、事業経営において「起こるはずのないことが起こった」と慌てて右往左往して対処するのではなく、「将来起こるであろうこと」に着目し、どのような状況においても価値ある存在として事業を続けていくための考え方についてご紹介したいと思います。

人が逃げ遅れる原因とは?

この震災について感じていることを話していた時に、災害時の心理として「正常性バイアス」という心理メカニズムがあるのを、会社の先輩から教えてもらいました。

「正常性バイアス」とは、予期しない異常に対して心の動きが鈍感になるようなメカニズムです。

日常生活で何かあるたびにビクビクしながら生きていると心が疲れてしまいます。これを避けるために、ある程度の異常は正常の範囲内として処理する心の機能が働くのです。
例えば、東日本大震災時にも津波のサイレンを聞いて、実際に逃げる行動をとったのは10%で、90%の人はテレビをつけることにとどまり、実際に津波を見て、そこで初めて「逃げる」という行動に移ったそうです。

このバイアス自体は日常生活ではとても役に立つものですが、日常の延長線上にない事態になった時に、生命にも危険を及ぼすものとなってしまうという話でした。

これは、企業における組織行動でも同じことが起こる可能性があるなと感じました。目の前に見えている危機を察して対応することができても、将来起こりうる可能性がある危機にはついつい鈍感になって、対応が後回しになってしまうことがあるのではないでしょうか。

「将来起こること」に、「今」どう備える?

例えば、消費税増税後の私の家の近くのお店の対応が様々だったことが印象的でした。

窓ガラスに「価格据え置き」と張り紙をだして、増税後も客足が途絶えないように我慢の経営をしているパン屋さんがあります。
一方、その近くのお蕎麦屋さんは、消費税増税前に新しいメニューを幾つか出して、チラシを近所に配っていました。店主さんに聞くと、増税後には外食が減ってお客様の足が遠のくのが分かっているので、原価率がそんなに高くないけれど、独自性のある新メニューを出して増税後にもお客様に楽しみに来てもらえるように工夫しているということでした。

消費税は今後も増税が予想されています。いつ増税されるのか、何%に増税されるのかは正確に予測できませんが、そうなるであろうことは分かっているのです。
これに対して「まだ大丈夫」と思い込むこともできますし、「何かを変えるイノベーションのチャンス」ととらえて行動することもできるはずです。

この「将来起こることが分かっていること」に鈍感にならずに、それを機会ととらえて現状を変えていくキッカケとして活かせる企業こそ、競争優位を作り続ける持続可能な事業運営ができるのだと感じました。

しかしながら、科学的に「危険が迫っている」「重大な変化が起こりつつある」ことを示す情報があっても、正常性バイアスによる鈍感さによって「まだ大丈夫」と思いこんでしまうというジレンマを拭うことはとても難しいように思えます。
それを解決し、持続可能な事業運営をしていくために押さえておくべきポイントとは、一体何でしょうか?

「将来の組織」をイメージする3つのポイント

スウェーデンのNGO団体The Natural Stepの創設者、カール=ヘンリック・ロベール博士から教えてもらったポイントは、次のようなものです。

1.私たちの将来に起こるであろうことを、科学的にキャッチしてあらかじめ、将来の制約条件を知っておく

2.将来の制約条件を織り込んで、どんな価値を提供するのかをビジョンとして描く

3.そのビジョンを実現させるための鍵となる領域を明確にして、今できることと将来のために投資することを明確にする

正常性バイアスに左右されず、着実に将来にむけて歩むために、組織として上記の3つに取り組む必要があります。少しでも早く戦略転換を意図したアクションを起こしていくことが大事なのだということです。

私たちのパニックを避けさせてくれる、「正常性バイアス」。

しかし、そのデメリットもきちんと把握しておくことが、将来的にも持続可能な組織を作る上での大前提となります。
その上で、「将来のために、今、何ができるか」を考えていきましょう。

本ブログでご紹介したカール=ヘンリック・ロベール博士による、将来の組織をイメージする3つのポイント、その大前提として理解すべきサスティナビリティと企業活動との関連性のモデル等を分かりやすくまとめた資料をご案内しています。ぜひ下記よりダウンロード下さい。





サステナビリティとイノベーション 〜次世代への責任〜




廣瀬 沙織
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。 株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。