リーダーシップほど“いい話”を聞くだけでは意味のないテーマはありません。ピンとくるヒントが得られたら、自分で試してみて初めて組織に変化が生まれるものです。

とはいえ、私もそうですが、その方法がやってみて本当に効果がありそうだという確信が持てないと、なかなか動けないのも事実。そんな方にぜひお勧めしたいのが、科学的に根拠が明確(詳しくはこちらの記事をどうぞ)、そして実践のためのアプリケーションも揃っているという、ミシガン大学のキム・キャメロン教授に教えていただいたポジティブリーダーシップです。

実践のアプリケーションの観点で、キャメロン教授のもとでポジティブリーダーシップを学び、グローバル企業でのマネジメントに活用して来られた原田俊彦さんに教えていただいた、ポジティブリーダーのための4つのマインドセットについて今回はご紹介します。

※「働く喜び・生きる幸せ」を感じられる組織づくりをめざす株式会社ビジネスコンサルタントが、キム・キャメロン教授と、マキシオン・ホイールズ社の原田俊彦氏をお招きして開催したセミナー(『ポジティブリーダーシップの理論と実践』:201711112日開催)の講演内容から、ポイントを数回にわたりご案内しています。

原田さんは、マキシオン・ホイールズ社(本社:米国ミシガン州)にてアジア地域の副社長を2016年まで務められたビジネスパーソンです。日本の大学を卒業後、大企業に入社し、活躍するものの、日本特有の考え方の中で働きにくさを感じ、会社を辞めて30代で家族を連れて米国へ渡ります。日本向けビジネスの責任者として結果を出されていましたが、ご自身のキャリアを営業・事業開拓だけでは終わらせたくないと会社に申し出て、全く異色である製造畑にチャレンジする機会を得たのが2008年。専門性もない、どうやってリーダーシップを発揮したらよいのかと悩まれていた時に参加したのが、ミシガン大学でキャメロン教授らが開いていたポジティブリーダーシップの講座でした。原田さんはこれが「とてもしっくりきた」そうで、これがきっかけとなり新たな領域でのマネジメントにも果敢に挑んでこられたのです。

ビジネスの成果につながるからポジティブリーダーシップを使う

原田さんが最初に強調されたのは、ビジネスで成果を出さなくてはポジティブリーダーシップを実践する意味がない、ということ。「ポジティブ?アメリカっぽく明るく楽しい感じでやればいいの?」という表面的な話ではないのです。

その上で、人間にはひまわり効果がある、でもひまわり効果は太陽があって初めて発生するもの(ひまわり効果について詳しくはこちらの記事をどうぞ)。だからこそ、「リーダー自身が気の持ちようを変えて大きな太陽になろう」と原田さんは呼び掛けています。そのためのマインドセットとして、原田さんは次の4つを挙げています。

①まず、自分が幸せになる

②組織の中ではポジティブな人に注目する

③弱みの克服より強みをどう生かすかに注目する

③行き方は知らなくてもよい、どこに行くかを明確に皆に示す

 さあ、それぞれについてご案内をしていきます。

①まず、自分が幸せになる

周囲にポジティブな影響力をもたらすには、まずリーダーである自分が幸せになる覚悟が必要だと原田さんは言います。キャメロン教授のセミナーに参加後、原田さんはご自身でもさらにポジティブ心理学について学習し、ご自分なりにやってみて「たぶん幸せになれた」こととして、7つの実践を紹介してくださいました。

positiveleadership_7practices

  1. 毎日一人以上の人に感謝を伝える

  2. エクササイズ

    「健全な精神は健康な身体に宿る」とは昔からよく言ったもの。原田さんは毎日5キロ、ジョギングをされるそうです。

  3. 生の音楽・スポーツ、精神的・芸術的な刺激を楽しむ

  4. 親切な行いをする

    リーダーの仕事をしていると、リストラやらCEOからのむたいな指示など、自分は悪人では?と思うようになってしまうので、11善でバランスを。原田さんはジョギング中に、公園でゴミ拾いをされています。

  5. パートナーと親密な関係を保つ

  6. 明るく前向きな数名の友人と楽しい休みを取る

  7. 自分にご褒美を与え、小さな成功を祝福する

すぐにでもできそうなこと、あるいは自分はこれはもうやっているよ、ということもあるのではないでしょうか?

②組織の中のポジティブな人に注目する

どんな組織でも20%は何を言われなくても自ら前向きに仕事をやっていってくれるエンゲージしている人、60%は日和見集団、残る20%は積極的にエンゲージしない人からなっていますpositiveleadership_engagedpeople

原田さんは「日本ではこれが難しいようですが」と前置きした上で、リーダーの仕事は、このエンゲージしている人たちが「エンゲージすることを拒否している人たちとの戦い」に勝つように支援することだと言い切ります。

リーダーはいつも足を引っ張るメンバーのことはいったん脇に置き、潜在的にいる、自分で前向きに仕事をする人たちにまず注目をする。その人たちが成功する仕事をしやすい環境をつくって、真ん中の6割がそこに引っ張られて全体がばっと動き出すような状況をつくり出した方が、早く成果を出せるというのです。

③弱みの克服より強みをどう生かすかに集中する

原田さんはご自身の希望もあって50代になってから製造部門への職責転換という大きなチャレンジをされました。製造畑の経験もない、使っている専門用語も違う社員たちをマネジメントするにあたって、原田さんには自分を奮い立たせるために毎朝することがありました。それは、鏡の横に貼った「最高の原田」(※)という1枚の紙を見て、自分の顔を両手でたたき、「今日もやれる」と自分に言い聞かせるというものです。ミシガン大学でのポジティブリーダーシップセミナーの中で体験した、“Reflected Best Self”という「素晴らしい側面の自分像」を何度も思い出して、自分の弱みの部分ではなく、強みの部分を使って何ができるか一生懸命考えたそうです。positiveleadership_bestself

原田さんは、自分の誠実さなど強みの部分から、一生懸命にとにかく現場の人の話に耳を傾けました。そうして信頼関係をつくると、現場からどんどん改善提案が上がって来るようになったそうです。自分で上から指示をして改善させるよりも、現場が動き出すようなリーダーシップをとって、工場の生産性向上を果たされたそうです。

そして、これはアメリカだけでなくタイや中国でもそのやり方で成果が出ました。つまり、アジア、欧米問わずに通用したということです。

※「最高の原田」とは、プログラムの一環としてミシガン大学が実施している実習です。家族や友人や職場の人に「あなたの目に原田さんが最高に映った時の話を、彼が想起出来る具体的事例をもって説明ください。」といった質問をメールで配信し、大学が集め、本人に渡しす。原田さんは、集まったメールを読み、自分のベストな時はどんな良い側面が発揮されているのかをまとめるのです。

 ④リーダーが知っておくべきは「どこに行くのか」であり、「どうやって行くのか」ではない

 リーダーになると自分にプレッシャーをかけて、「何でも自分が分かっていないとだめだ」と考えがちです。原田さんはそれを否定します。リーダーの仕事は、どこに行くのかを明確に示すこと。「東西南北のうち目指すは北。結果として15度くらい外れて北北東位までは許容範囲だけれど、東、西、南ではないぞ」といった目標を伝えられることが重要です。その時、北への行き方は正確に分からなくても、プランすることができなくてもよいのです。「行き方は、みんなで考えればよい」、これがポジティブリーダーシップの捉え方です。

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また、リーダーは過去の原因究明より将来の課題解決に注力すべきだと言います。もちろん問題の種類によっては(品質など)原因究明が重要ですが、もう少し複雑系の問題、例えば「将来うちの会社はどうしたらよいだろうか」を話し合う時に、過去の失敗を繰り返さないためにどうしようかという発想ではエネルギーが出てきません。ポジティブ心理学の考え方は、将来の課題に皆の注意を集め、皆のエネルギーを引き出します。つまり、なりたい自分、なりたい会社、なりたい事業、それは何ですか、その障害を解決するにはどうしたらよいですか、という発想で話をしていくことが大事なそうです。

原田さんの実践に基づくマインドセット、あなたはどれから取り入れられそうでしょうか?次回からは再びキャメロン教授に教えて頂いた、組織へのポジティブエナジャイザーのインパクトや見つけ方をご紹介します。

(グラフィック担当 株式会社ビジネスコンサルタント 遠藤麻衣子)


ポジティブ・リーダーシップシリーズ
1.リーダーシップを科学する_ポジティブリーダーシップで本当に豊かな組織づくりを①
2.リーダーに朗報!人の「ひまわり効果」とは_ポジティブリーダーシップで本当に豊かな組織づくりを②
3.4つのマインドセットでリーダーは大きな太陽に!_ポジティブリーダーシップで本当に豊かな組織づくりを③


リーダーとして自分と周りが活き活き仕事に臨むための秘訣をもうひとつ、ご紹介します。「フロー」ということばをお聞きになったことがありますか?こちらのeBookで、みんなが夢中になって、もっと生産性が高まる職場づくりのヒントが見つかります。




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山田有佳
京都大学総合人間学部、同大学院人間・環境学研究科修士課程修了。専攻は文化人類学、クロアチアで戦災からの街の復興をテーマにフィールドワークを行う。 株式会社ビジネスコンサルタント入社後、企画営業、営業マネジャーを11年。育児休業から復帰後、WEBマーケッターとしてのキャリアをスタート。聞きなれないIT用語と格闘しつつ、サステイナブルな未来につながる選択をしようという人が増えるためのメッセージの発信を目指している。