「せっかく幹部が中心となって、会社の将来のありたい姿や大切にすべき価値観を検討して全社員に発表したけれども、社員からの反応はポジティブなのもの、ネガティブなもの、どちらでもないものが入り混じり、なかなか浸透にまで至らない」

こうした経験をされたことはありませんか?人間は自分が策定にかかわったプランには参画意識を高くもつことができますが、「計画の段階で自分には声がかからなかった」「何で今突然そんなことを言い出すの?」などという気持ちがあると、そのプランの内容には関係なく、抵抗感を覚えるものです。

「一緒に働く人々の関係性が変わることで、成果も変わる」という組織開発について、その取り組み事例をもとにご紹介をしています。「トップダウン形式でやってきた会社が、今後も発展を続けるためには、社員一人一人が自分ごととして経営をとらえるための変革が必要」という社長の想いのもとにはじまった取り組みです。

前回は、「経営幹部と管理職による経営理念・ビジョン・戦略課題の共有化と協働関係の醸成」の取り組みをお伝えしました。しかし、社員全員が主体性を持つためには、職場メンバーにも同じ理念やビジョンを共有し、それに基づく日常の行動発揮を促していく必要があります。
集団(経営幹部と管理職)の活性化から組織の活性化へとギアチェンジを図る必要性が出てきました。ではどのようにすればいいのでしょうか。

今回は、「取り組みフェーズⅡ」として、次の動きをご紹介します。

フェーズ:組織的巻き込み

経営幹部と管理職が4日間の会議で検討したビジョンや今後の課題を、管理職らが各々の職場で社員へ伝えました。しかし、社長が期待したほどの反応は社員らからは出て来ませんでした。このままではせっかく検討したビジョンも、ただのお題目になってしまいかねません。

そこで次のフェーズとして、変革へのエネルギーをさらに高め、一般社員を巻き込むための新プロジェクトを展開することとなりました。
このプロジェクトの目的は、「30周年を機に、社員の生きがいと家族の幸せのため、良い企業文化を作る」「経営幹部・管理職が検討した新たなビジョンを実現していくための、日々の行動規範を作成し、全社で共有する」というものでした。

①管理職4名に、一般社員を含む2名が新たな職場代表として加わる
→より幅広い意見を取り入れる体制にする

②2名の役員にもプロジェクト会議をオブザーブしてもらい、後見役としてバックアップしてもらう
→社長との橋渡しと役員陣の巻き込み
※役員2名は、リーダーシップ啓発のための外部セミナー(合宿形式)にも参加し、変革の推進役としての力と問題意識を高めてもらいました
※他のプロジェクトメンバーも、外部セミナーに積極的に参加し、変革の推進役としての学習をしました

③検討プロセスの中では、全社員に対して行動規範の募集を行い、全社員での投票を経て候補を決定する
→社員にも、「自分たちも行動規範の作成に関わった」と意識してもらうため

④行動規範を具体的な行動レベルで表現して冊子にまとめ、全社員会議の場で発表
→イベントで効果的に演出

⑤職場ごとに、プロジェクトメンバーをリーダーとして、冊子を活用し、各職場での浸透策を検討、実践
→冊子を読んだだけでは腹落ちはしない、一人一人が話し合ってじっくり考えてみることで、実践につながる

各職場での展開の際にも重視したのは、プロジェクトメンバーと他の社員との間に温度差を生じさせない、ということです。全社員に向けた意見の募集や投票、全社員会議での共有といった取り組みは、セレモニーではなく、巻き込みの場としてとても重要な意味合いを持っていました。

実際、社員は自らも投票という形で作成に参加した行動指針の冊子が手元に届いたことをとても喜んでくれたということでした。職場ごとの取り組みを通じて、行動規範を元に行動していく事が、経営理念の実現に繋がっていくという全社的な機運ができてきて、主体的に行動を起こす人材が増えてきました。

これまでは仕事をうまく進めるためだけに関わってきた社員同士が、「会社のビジョンの実現のために、行動指針を実践するためにはどうしたら良いか」という、自分たちのあり様について話し合うことで、関係性が変わり、仕事にも良い影響が出てきたのです。

「組織開発」とは『自己革新組織』として動き出すプロセス

実際、これらの活動を通じて、会社の施策に疑心暗鬼で批判的だった複数の職場社員が、前向きに会社の発展に取り組むようになってきたそうです。後日談としてお聞きしましたが、行動規範の作成のプロジェクトメンバーである若手社員は社長に直接提案をされたそうです。

「これまで、わが社では、退職者が多く、愛社精神に欠ける社員も少なからずいた。今回の取り組みで、組織文化を変えていこうという機運が、高まっている。是非このまま人材育成と新人採用のためのプロジェクトを継続したい」「今後社員の質が、会社の質を決める。自分が採用の責任者として活動をしていきたいので、その役割を与えてほしい」と。

これは『自己革新組織』として自らの組織を自らがよくしていこうとする動きが出てきた証拠です。言われたから動くではなく、自ら問題意識を持って主体的に動ける社員が、プロジェクトを通じて育まれたのです。

組織開発を成功させるために押さえるべきポイント

硬直化した組織文化や職場の規範を変革していくには、はじめはさまざまな抵抗や葛藤が起きることを予想し、かつ変革へのエネルギーを高めていくことが重要です。私たち組織開発のコンサルタントが押さえているポイントをいくつか、ご紹介します。

①どうしたら変革へのエネルギーが高まるか、全体の仕掛けを考える

CHANGE=外圧×内圧×変革の青写真 (アルビン・トフラー)

この公式は、変革を導くには①外圧(外部環境の変化)②内圧(現状への不満、将来への不安もしくは期待)③変革の青写真(変革を進めていくためのプラン、目指す姿)の3つを揃えないといけない、ということを意味しています。
今回の取り組みの場合、
1.外圧・・・経営幹部やプロジェクトのメンバーが外部セミナーに参加することで外部環境の変化や組織マネジメントのポイントを学び、自社をどうにかしなければいけないという問題意識が高まりました。また、社外の幹部との関わりの中で変革の推進者としてリーダーシップが啓発され、自分がどうにかするんだという意識が高まりました。

2.内圧・・・最初のきっかけは社長自身の強い問題意識が取り組みのきっかけでしたが、その後フェーズⅠの会議やフェーズⅡの取り組みを通じて、社員に広く、現状を変えたいという意識が広まっていきました。本文ではご案内していないのですが、この取り組みの後も、継続的な変化を続けるために、行動指針の実践についての相互評価の仕組みや、会社の組織文化の変化を調べるための組織診断を実施して、問題意識を持ち続け、解決する取り組みを継続しています。

3.変革の青写真・・・経営幹部・管理職で検討した将来のビジョンやその実現に向けた取り組み課題、その後作成した行動指針がこれに当たります

組織開発にはあの手この手の取り組みが必要になるのですが、この3つの観点で考えてみると、あなたの組織の現状において、どんな仕掛けをすべきかが分かってくるかもしれません。

②変革への抵抗心理を理解する

人間は自ら決めた変化・変革は好んで取り組みますが、人が決めたことに対しては、そのやり方や言われ方に抵抗を示すと言われています。特に、下記のような状態では、その傾向が非常に強くなるので、社内で取り組むときには配慮が必要です。

1.変革の計画に、自分が十分に参加できていないと感じるとき
自分の意見は反映されず、推進者が独断で進めていると感じたときには不満がでます。自分の意見も反映されているプランだと認識すると、推進者=実行者になります。職場社員にインタビューを行なったり、アンケートを取ったりなどの巻き込みを図ることも効果的です。

2.変革についてのコミュニケーション不足のとき  (説明がないとき)
変革の方向性について何も聞かされていないと感じたときに、多くの人は抵抗を示します。また、力がある人ほど抵抗勢力になります。

3.集団規範を無視してかかるとき(大幅に行動をかえなければならないとき)
集団の中のあたりまえ、規範を変えるには、周囲とのコンセンサスが必要です。周囲と対話をし、心理的にも論理的に納得してもらえるようにしましょう。

今回はコンサルタントが押さえている、組織開発をうまく進めるコツをご案内しました。本情報が皆様の一助となれば幸いです。


1.組織開発(Organization Development)による組織の進化~フェーズⅠ
2.組織開発(Organization Development)による組織の進化~フェーズⅡ


 

新しい取り組みに全社員を巻き込む、、大事なことですが難しさを実感されている方も多いと思います。サスティナビリティの取り組みを、巧みなストーリー展開で全社員の身近なものとしている事例をご案内します。こんな仕掛け方があるんだ!と思われることでしょう。ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。





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藤井包起
実家が商売をしており、この世界に魅力を感じコンサルティング業界を志望。関西の大学卒業後、株式会社ビジネスコンサルタントにて営業職入社。営業拠点長を経験し、コンサルタント部門へ移籍。 現在、マネジングコーディネーターコンサルタントとして、組織変革の仕事にやりがいを感じ、日々格闘中。妻1人子供2人とも格闘中。趣味は、半年に1回のゴルフと釣り。