組織そのものを成長させる「組織開発」とは

「組織開発(Organization Development)」について、ここ数年、改めて注目が高まっています。
その理由は、従来型の集合研修だけをメインとした人材開発では、期待するほどに組織としてのアウトプットが高まらないという問題意識が背景にあったり、また、昨今の組織内の人々の絆や幸せ(ウェルビーイング)を重視する流れも関係したりしているようです。
「人材開発」が“個人”の能力や技術を成長させるアプローチであるのに対し、
「組織開発」とは、「経営トップあるいは経営幹部・マネージャーが主体となり、日常のマネジメント活動において、人と人との関係性を変えることによって変化に対応しうる組織を創造していくこと」と言えます。

組織が現状を脱し、新たなステージに向かおうとするとき、個人や個人間だけではなく、チームや部門間、組織全体など様々なレベルから働きかけ、組織全体を変えていく必要があります。
つまり、あの手この手の取り組みが必要になってくるわけですが、この時留意しておかないといけないことは、個人・集団・組織に働きかけるとき、それぞれに対して必要なアプローチ・理論・手法は異なるということです。

ここまでお話すると、組織開発は難しそう、と思われてしまうかもしれません。そこで今回は、私がコンサルタントとして関わった実際の組織開発の取り組みについてご紹介します。
そのご相談は、「トップダウン型」で「指示待ち」体質であったある企業文化を変えたい、というものでした。社員が自分ごととして会社の事を考え、エネルギーが高まり、自ら組織を変えていこうとなるには、どのようなきっかけが必要だったのでしょうか。

指示待ち体質脱却のための組織開発事例

ある中堅企業の創業社長からお聞きしたお悩みです。

「創業以来30年、良い時も悪い時もあったが、何とか会社を発展させてきた。ここ数年、そして今後数年間は会社の業績は良いと見通せるが、中長期的に永続できる会社であるためには、現社員の更なる戦力化だけでなく、将来を担う若い社員を採用して育成することが必要だと思っている。なぜなら当社では、一人前になるのに10年かかるからだ。しかし、ベテラン社員からは、“新人は仕事を教えるのが面倒”、“新たな人材に教育投資をするくらいなら自分の給与を上げてほしい”、“必要な時に中途採用をしていればいい”などの意見が出ていて、社長である自分の思いが伝わっていないようだ」
「社員は皆真面目で、使命感もあり、納期を守って仕事もこなしてくれる。しかし、上からの指示が無いと動かないという側面もある。30周年を機に、社員一人一人が会社の方向性や大事にする考え方を理解していて、なおかつ主体性を発揮できる組織へと、活性化を図りたい」

長年トップダウン型の経営スタイルで発展してきた一方で、中途社員比率が高いために、共通の価値観が浸透していない、という組織の特徴がありました。ですから社員に主体性を持ってもらい、組織文化を変えていくのは一朝一夕にはいかないことが予想できました
そこで取り組みを2段階に分けることとし、まずは、組織への影響度の大きい、経営幹部や管理職層から取り組みをスタートすることにしました
フェーズⅠ:経営幹部・管理職の一体感醸成
フェーズⅡ:全社員を巻き込んでの、「経営の自分事化」

フェーズⅠ:無関心を装う幹部社員に生じた変化

まず、開いたのは、経営幹部と管理職全員が参加する会議です。ここで話し合ったことは、

・自社の経営理念の意味合いと、自社の歴史・歩んできた過程を理解する
・これからのありたい姿や、価値観、戦略課題などの討議・共有を行う
・管理職として、自部門・自職場での浸透のため行動計画に落とし込む

社長を除く役員や部長・課長・係長の管理職16名が集まり、のべ4日間(2か月間で前半2日間+後半2日間)の会議です。

参加者は初日は緊張した面持ちで集まり、もともと職人肌の方が多くて、議論に慣れていないためか、討議が活性化しませんでした。私の進行に応じて検討は淡々と進みますが、お互いが遠慮している状態です。 トップダウンの組織文化のために発言は上位者から、そして上位者の発言は否定しないというのが暗黙の了解のようです。また、会議はその場に居さえすればいい、という姿勢の方が多くみられ、ただ時間が過ぎるのを待つような受け身のムードが漂います。私からすると、討議結果も本心からのものなのか分からない、誰も傷つかないような綺麗ごとでの発表が続きました。

しかし、3日目のあるセッションで、場の空気が一変する出来事が起こります。

ある部長が、他グループのビジョン検討結果に「そんなもんでいいんじゃない」とおっしゃったのです。明らかに投げやりに、上から目線で、「どうでもいいよ」という心境をにじませながら・・・

私はあえて皆さんに投げかけてみました。
「他の人も、『そんなもんでいい』と本当に思っていますか?」

その問いかけに、検討グループに所属していたある係長が応えてくれました。
「ちょっといいですか。『そんなもんでいいんじゃない』というのは、どういう意味ですか」
「我々が真剣に考えたことに、いいかげんなことを言わないでください!」

遠慮しあっていた空気が一変し、一触即発状態に陥りました
自分よりも上位者に意見することは暗黙的にタブーとされている中で、係長が誰からの指示もなく自身の想いをぶつけたからです。そしてこの時を境に、お互いに思っていること、感じている事の本音を一気にぶつけ合い始めました。

「本当は役職関係なく自由に意見を言いたかった」「本当はもっとみんながどう考えているのかを知りたかったけど聞けなかった」「本当は自分の考えの浅さがばれるのが怖かった」「どうせいつも社長が決めるんだから自分たちの意見は関係ないでしょと思っていた」「こんな時間馬鹿らしいと思っていた、どうせ自分なんかあてにされていないと思っていたから」などなど。。。

今までは暗黙のルールの中で自分の主たる意見はあまり言わなかった方々が、自身の心情吐露をも含む”本当はこうありたかった”という本音での意見を言いはじめたのです。

私はこのような時間をとても大切にしています。会議の内容(コンテント)そのものは確かに重要ですが、その会議に向かう人々の感情や想い、人と人との関係性(ヒューマンプロセス)が整わない限り、会議やその後の展開も生産的なものにならないからです。

この場面を境にグループ全体の議論が活発化してきたことは言うまでもありません。社長のお悩みのひとつでもあった「新卒採用」についても、「継続していかなければ会社の世代間ギャップは埋められないし、長い意味での発展には繋がらない。新人を育成する土壌つくりも必要である」ということで考えの統一ができました。本音の議論が続き、管理職一人一人が、自信を持って、自職場のメンバーに伝えるべき今後のビジョンや、取り組み課題を明確にすることができました。

うわべの「仲良し集団」から真の「協働関係」へ

個人が集まり集団が形成されると大なり小なり個人間での競争状態が生まれます。この競争状態を避けて、お互いに無関心を装い、表面的に仲が良い関係は、いわゆる仲良し集団の状態です。真の活性化した集団となり「協働関係」に至るには、「葛藤状況」を経る必要があります

4dankai今回の4日間で16名の間にはまさにこの「葛藤状況」が起こりました。そして、その場面で逃げずに向かい合い、本音をぶつけ合うことができたことで、16名全体に「協働関係」が生まれました。これは社長が望んでいた状態でもあり、管理職らが会社の事を「自分ごと」としてとらえ始めた大きな一歩でした。

しかし、経営幹部と管理職による会議だけで取組みを終わらせると、結局それは、「限られた人間」の中だけの協働関係を構築するだけで終わってしまいます。会社を活性化させるためには、この会議で出てきた将来のありたい姿や大切にしたい価値観、実現のための戦略課題について、職場の一人一人にまで理解を行きわたらせなければなりません。

次回の記事では、その後の展開をお話します。


 

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藤井包起

実家が商売をしており、この世界に魅力を感じコンサルティング業界を志望。関西の大学卒業後、株式会社ビジネスコンサルタントにて営業職入社。営業拠点長を経験し、コンサルタント部門へ移籍。

現在、マネジングコーディネーターコンサルタントとして、組織変革の仕事にやりがいを感じ、日々格闘中。妻1人子供2人とも格闘中。趣味は、半年に1回のゴルフと釣り。