行動は「同時に2つ」実践するのがいい

私は小さな頃、よく祖父母の家で過ごしました。そこは、「ど」がつくほどの田舎。平屋の小さなおうちで、夏の間は引き戸も窓も玄関もすべて開けっ放しという状態でした。

ある夏の日のことです。アブのブンブンいう音にイライラしてハエたたきで追いかけていると、突然、祖父が「面白いものをみせてあげる」と言い出しました。そして祖父は自分を刺しに顔に止まったアブを手で捕まえ、おもむろに片側の羽をむしってテーブルに置いたのです。

すると、どうでしょう。

アブはすごい勢いで駒のように回り始めます。必死に羽をバタバタさせても、アブはどこへも行けません。目がまわるのでしょうか、時に止まり、ふらふらと歩きかけ、そしてまた飛ぼうとするのですが、またグルグル回るだけです。普段素早く飛ぶアブも、片側の羽を動かすだけでは、上手く飛べませんでした。2つある羽のうち、片方の羽を失ってしまえば、アブは飛ぶことができず、ただうろたえるだけになってしまいます。アブが自由に飛び、さまざまなところに行くためには、両方の羽が必要なのです。

ところで、皆さんは組織に「いい人材を確保しよう!」と思ったら何をしますか。組織を宣伝したり、他社より高い給与を提示したり、外部から新しい人材を獲得することを目指すでしょう。

もし皆さんのいる組織が素晴らしいところだったら、居心地のいい職場を作ろうとしたり、評価制度をフェアにする等の工夫もしたりするでしょう。そうすることで、社内にいる人材を確保しようと考えるはずです。

勉強も同じです。何かを勉強して身につけようと思ったら勉強時間やその時間の質をあげることはもちろん大切です。しかし、覚えたことを忘れないような工夫をしなければ、せっかく新しいことを学ぶために使った時間も無駄になってしまいます。

こんなふうに、何かを成し遂げようとするときには「同時に2つ」の行動を実践すると上手くいくことがあります。これからお話するサスティナビリティでは、「すべきこと」と「すべきでないこと」を明確に理解して、行動することが大切です。

「我慢する」のではなく、人々の「ニーズを満たす」

サスティナビリティのために「すべきこと」

サスティナビリティのために「すべきこと」といったら、皆さんはどんなことを連想するでしょう。

  • マイ箸やエコバックをいつも携帯する。
  • 部屋の照明器具を減らす。
  • 暑くてもエアコンなしで過ごす。

こんなふうに「節約する」ことや、「我慢する」ことを連想する人が多いのではないでしょうか。

でも世界では少し違うようです。たとえば、1987年にブルントラント委員会が発表したサスティナビリティに関連した定義を見てみましょう。

「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすこと」。

この定義で大切にされているのは、「ニーズを満たす」ことです。「ニーズを満たす」ことが許されると、「やりたい放題やる」ことが許されると思う人もいるかもしれません。

しかし、2つは全く違います。

なぜなら、ある人が「やりたい放題やる」と、他の人々が「ニーズを満たす」ことが難しくなるからです。自分以外の数多くの人々、そしてまだこの世にいない次世代以降の人々も「ニーズを満たす」ことができるようにすることが大切なのです。

では、みんなの「ニーズを満たす」にはどうしたらいいのでしょうか。そのヒントになるのが「基本的ニーズ」という概念です。チリの経済学者マックス・ニーフは、基本的ニーズを「人間なら誰もが生まれながらにして持つもの」であり、人間の潜在能力を示す、としました。そして、「自由」や「安全」など基本的ニーズとして9項目を挙げています。

この「基本的ニーズ」を理解することが大切です。まずは自分の「基本的ニーズ」、それから、みんなの基本的ニーズを理解して、その実現を妨げないことです。みんなの「ニーズを満たす」ことが、サスティナビリティのために「すべきこと」です。

「システム4条件」に違反する行為に「加担しない」

サスティナビリティのために”すべきでないこと”

サスティナビリティのために「すべきでないこと」を明確にした人がスウェーデンにいます。医学博士カール=ヘンリック・ロベール氏です。カール氏は、世界中の科学者やサスティナビリティを実践する経営者らと議論を進めました。その結果、ある結論を導き出しました。それが「システム4条件」です。

「システム4条件」とは、簡単に言えば、ルールです。持続可能な社会において、人々が活動するときに守るべきものです。このルールは、科学的見地に基づいたものであり、人間の文明を後退させることもありません。

とても残念ですが、人間社会は現在、「システム4条件」に違反しています。そのため、環境汚染や温室効果ガスの排出など地球環境の破壊が進行しています。忙しい毎日を過ごしていると忘れてしまいがちですが、私たちは、人間社会の一部です。私たちの行為は、何らかの形で人間社会に影響を与えます。そして地球に影響を与えているのです。

確かに人間社会の大きさに比べれば、私たち一人一人は小さい存在です。でも人間社会を変えることができるのは、私たちだけです。一人でも多くの人がサスティナビリティへの一歩を踏み出すことで、社会そして地球に影響を変えることができます。

「システム4条件」への違反に加担しないこと、それがサスティナビリティのために「すべきでないこと」です。
※『「システム4条件」への違反に加担しないこと』を「持続可能性4原則」といいます。

これからもサスティナビリティのお話をお届けします

今回は、

  1. サスティナビリティという目的に向かうためには、2つの羽を動かすことが必要だ
  2. 2つの羽とは「ニーズを満たす」ことと「加担しない」こと

という2点について、簡単にご紹介しました。

今回出たキーワード、「基本的ニーズ」や「システム4条件」については次回以降に詳しくご紹介します。また、もう少し具体的なサスティナビリティのお話、グラフィック・アニメーションの詳しい解説、世界のサスティナビリティ事情等をお届けしていきたいと思っています。どうぞお楽しみに!

本ブログでご紹介したカール=ヘンリック・ロベール博士らの考えるサスティナビリティ実現のために理解しておくべきフレームワークなどを分かりやすくまとめた資料を以下よりダウンロードいただけます。ブログと併せて、ぜひご参考にしてください。





サステナビリティとイノベーション 〜次世代への責任〜




牧原 ゆりえ

一般社団法人サステナビリティ・ダイアログ代表理事/Art of Hosting Japan 世話人

国際基督教大学を卒業後、大手監査法人に公認会計士として勤務。出産を機にサステナビリティに強い関心を持つようになり、家族とともにスウェーデンで4年に渡り生活。持続可能な社会のための戦略的なリーダーシップ等2つの修士課程で学ぶ。留学中に出会った北欧発の参加型リーダーシップトレーニングArt of Hosting、グラフィック・ファシリテーションを軸に、スウェーデンのサステナビリティ戦略フレームワークを伝えるための活動を展開。