「Wedge」3月号の『米国流「ガバナンス」が企業を弱くする』という記事が社内で話題になりました。
BConのコンサルタントは移動のために頻繁に新幹線を活用するので、Wedgeはよく手に取るそうですが、次々と3月号を読んだコンサルタントが話題にするので、気になって購入してみました。

企業の不正会計問題もあり、政府主導でガバナンス改革(強化)が進められている中、短期のリターンを追い求めるような指標を持って経営することは日本企業の良さを無くしてしまう恐れがある。10年、20年先の成長を考えた経営をするような「100年の計」ができる土壌を創ることが肝要だといった内容でした。

サステイナブル経営を推進する上で、何を重要な指標として見ていくかによって成果や将来にわたって築かれる強みが変わっていくんだと感じられる記事でした。
そして、私は未来志向の経営指標としての重要な指針を教えてくれるピーター・ドラッカー(以下ドラッカー)のメッセージを思い出しました。

今回は、普遍的な指針としてドラッカーの質問からひも解いてみたいと思います。

ドラッカーからの質問 その1

ドラッカーは沢山の名言を残しており、みなさんも様々な言葉をご存知かと思います。
一方、経営者をコーチする立場として沢山の質問も残している方だと、ドラッカーの翻訳で有名な上田惇生さんの講演会でお聞きしたことがあります。
その質問の中で、私がとても好きな質問があります。その1つは、

「今の仕事は全てワクワク、ドキドキしてやっている仕事ばかりか?」

というものです。

実はこの質問は、1980年代にゼネラル・エレクトリックのCEOに就任したジャック・ウェルチが就任直後にドラッカーに会いに行き、やり取りする中で質問されたことだそうです。
ジャック・ウェルチは市場で1番か2番の事業に集中し、それ以外の事業は収益が上がっていても売却か撤退をしたことで知られていますが、この戦略は先にあげたドラッカーからの質問によって導き出された戦略だそうです。

私がとても驚いたのは、ドラッカーがウェルチに言ったことは、1位か2位になるつもりのない事業からは撤退した方が良いというアドバイスではなかったということです。

「ワクワク、ドキドキしてやっている仕事」というのは、一番大事だと思って運営している事業のことを指していました。
そう思っていない事業で出せる価値では、顧客に対して失礼だというのが真意だったそうです。

「事業とは顧客の創造である」という言葉は有名ですが、それを実践する上で顧客が価値を感じる何かを生み出すのは経営者が心の底から大事に思っている「源」からくるのだと感じます。
この質問を常に自身に問い直していくことが我社なりの戦略や指標を生み出すキッカケになるのだと思います。

ドラッカーからの質問 その2

次に私の好きな質問は、会社で働く「人」にまつわる質問です。
これはアルミニウム精錬会社世界一位のアルコアという会社のCEOだったポール・オニールがNY大学で教鞭をとっていたころのドラッカーから教えてもらったという3つの質問です。

1.あなたは会社で敬意を払われているか?
2.あなたは仕事上の能力をつけようと思った時に応援してもらえているか?
3.あなたが会社に貢献していることを会社は知っているか?

それぞれ3つの質問に、従業員の何%が迷うことなしにYESと言ってくれるかによって、よい経営ができているかどうかの指標となるとドラッカーは説明しています。

これは「人」にどんな風に力を発揮してもらうかを考えていますかということを問いかけてくれます。
我社は「人を大事にする会社」、「人が財産です」という経営者は沢山いますが、本当に従業員がそのように感じているかどうか、それが実現できているかどうかは経営者の「我社はそれなりにやれている」といった思い込みで判断するものではないということです。

ドラッカーのマネジメントの枠組みは、質問1の「顧客」、質問2の「従業員」が中心となっています。
ワクワク・ドキドキ仕事をしているか?従業員を大切にできているか?
といった問いかけは、経営者だけでなく、管理職全員が真剣に考えることによって現場が未来志向になり変革を起こしていくことに繋がる重要な質問だと思います。

ドラッカーからの質問 その3

顧客・従業員、そして「社会」の3つがドラッカーのマネジメントの3本柱です。
社会で活動している企業が社会に与えている影響をどのように考えるか?
社会への悪影響は最小限に、社会に存在する問題には自社の得意技を持って、本業に害を与えない範囲で協力することが企業の社会的責任だと言っています。

ドラッカーのマネジメントの中心概念で出てこないのは「利益」です。経済的な成果は顧客の為によい仕事をする手段に過ぎないということです。
Wedgeの記事にもありましたが、単にROE8%、社外取締役2名などといった指標を追いかけることは企業の存在目的にはなりえないということです。

「よい経営」を測るモノサシは沢山あります。
もちろん、株価や利益も大切な指標ですが、企業がその存在意義をどこに置くかは次の3つ目の質問を考えることで自ずと見えてくるように思います。

「自分(我社)は何をもって覚えられたいか?」

どんな存在だったと後世の人の記憶に残りたいかを問うものです。
未来を考えた時、やっぱり今の自分(我社)より、少しでもよい存在だったと言ってもらいたいと思うのは自然なことではないでしょうか?
未来の在りたい姿を考えると、おのずとその方向に思考や行動が向いていくものです。

今回のドラッカーの3つの質問、仕事の節目ごとに真剣に考え、経営幹部同士、マネジャー同士、また職場で話うことが未来志向の経営への具体策につながるのではないでしょうか。

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廣瀬 沙織
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。 株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。