前回のブログ(”学びの文化”を持つ企業は高業績!ATD2016レポート)で学びの文化が定着している企業は高業績でもある、とお伝えしました。
今回はATDで発表された企業事例を中心に、学びの文化を定着させるためのヒントを探っていきたいと思います。

70:20:10の法則

ATDが推薦している取り組みの1つに「70:20:10の法則を共有し、学びの70%は職場にあると啓蒙する」があります。
「70:20:10の法則」とは1996年 アメリカのCCL(Center for Creative Leadership リーダーシップに関する研究機関)が約200人の上級管理職を調査した結果に由来しています。

人は学びの
・70%を仕事上の経験から学ぶ(問題解決、異動、リーダー経験など)
・20%を他者との関わり合いから学ぶ(メンター、人からのアドバイスなど)
・10%を公的な学習機会から学ぶ(研修やセミナー、読書など)
というものです。

「70:20:10の法則」はその後、人の学習や成長を語る際に欠かせない引用となりました。

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これを見た研修企画担当者は、研修は人の学びに10%しかお役に立てていないのか、とがっかりする必要はありません。
まして厳密に70:20:10の割合にする必要もなく、大切なのは他者との関わりや仕事上の経験とのバランスを取ることがポイントだということです。

この法則が世に出たことによる研修分野へのインパクトは大きく、「研修」に過度な期待を寄せるのではなく、日々の生活全体を見渡してトータルに学びを設計する必要がある、という一定の合意が得られました。

しかしわたし自身は、研修を企画する立場として、どのように70:20:10の法則を活用すれば良いのか、今一つイメージを持てていませんでした。

70:20:10を実践する企業 フィリップス照明大学

そのような問題意識で参加していたATDセッション期間中、「70:20:10」を活用しているユニークな事例に出会いました。フィリップスの企業内大学の取り組みです。

同社では以下のような学習チェックリストを使い、人材開発施策の70:20:10を確認しています。

具体的には学びの段階を4段階(1.準備-2.習得-3.振り返り-4.測定)で整理し、各段階の取り組みをフォーマル・インフォーマルに振りわけてみるというものです。
フォーマルな学びは人材開発部門が企画実施する部分。インフォーマルな学びは人材開発部門の支援のもと、現場が実施する事です。manabi2

※近年の実務家やコンサルタントの中では「他者との関わり20%」と「実務上の経験70%」をあわせて「インフォーマルな学び 90%」と定義する流れもあり、同社もこれに倣っています。

 

 

学習チェックリスト

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(「Learning as a daily habit」 Ronald Plantinga氏, Learning施策について以下のような観点で確認しているそうです。

・フォーマルな学び(10%)に偏っていないか?
・職場実践や上司や同僚からの関わりも視野に入れた施策になっているか?
・人材開発部門は、学習者がやる気を起こすようなPR活動を行っているか?
・人材開発部門は、学習者同士をつなぐ仲間作りを支援しているか?

以下はあるマインドセット研修を実施した際に上記の学習チェックリストに当てはめ、取り組めていること・いないことを確認した例です。

学習チェックリスト 活用例

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ATDが推薦する取り組みの1つである「70:20:10の法則を共有し、学びの70%は現場にあると啓蒙する」の在りようとして、フィリップスでは、実務上の経験70%と他者とのかかわり20%を充実させるために、チェックリストを用いて研修施策を検証している事例の紹介でした。

人材開発部門が行うことは、10%のフォーマルな学びの効果を最大化させるために、90%のインフォーマルな学びを促す環境を整えること、と言ってよいかもしれません。

インフォーマルな学びを充実させる工夫とは

そこで、インフォーマルな学びを充実させるために役立つ表がATDの別のセッションの中で紹介されていました。学びの手段と使う目的の一覧です。manabi7(「101 ways to Expand Learning Active Beyond Your Classroom」Elaine Biech氏, ebb associates inc セッションより一部抜粋)

セッションの中で特に強調されていたのは、“受講者同士をつなぐ“働きかけや声かけを忘れずに、ということです。例えば研修の最後に小グループでブレーンストーミングし相互の交流を厚くする、受講者同士で相手を決めて次のフォローアップの日程を決める、SNSで学び同期のコミュニティを作るなど。

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学びの文化を定着するために

これらの例を見ていくと「学びの文化」を定着させるヒントは日常の中にあるという事が分かります。
日本の例で言えば、受講者同士の関係性を温め、コミュニティを豊かにするために「懇親会」を設定する研修が少なくないのは、職場に戻ってからのインフォーマルな学びの重要性を経験則で理解しているからではないでしょうか?

今はまだ意図的な仕掛けが必要な組織でも、いずれ仕掛けがなくとも継続的に従業員がパフォーマンスを向上させる方法やスキルを探究し、共有し、実践されたとき、学びの文化が定着したと言えるのでしょう。

【編集後記】
私にとってのATDを70:20:10で振り返ってみました。
ATDに参加するという公的な学習機会の学び(10%)
ブログやレポートを書き、フィードバックを貰う他者との関わりあいからの学び(20%)
ブログ原稿を書いては破くを繰りかえす仕事上の経験からの学び(70%)
たしかに!手ごたえとしてこの割合は自身納得するものがあります。

遠藤 麻衣子
西南学院大学にて文化人類学を学ぶ。外資系人材ビジネスに13年勤務した後、米国留学を経て2014年(株)ビジネスコンサルタントに加わり商品開発のための探索活動を行っている。就職と離職の場面を何百回と目にした経験を元に人が仕事を通じてイキイキとする支援や大人の学習意欲、またキャリア観を高める支援を探求中。英語力キープを兼ねて海外文献や学会情報へのアクセスを欠かさない日々を送っている。