業務が手一杯になった時に私はよく「時間がない、1日24時間じゃ足りないな」と思ってちょっと愚痴っぽくなってしまいます。
その根本にはどんなメカニズムが働き、どのように対処することができるのでしょうか?
今回は、「時間がない」課題について考えてみたいと思います。
「時間がない」のメカニズム
多くのリーダーはマルチタスクで、様々な業務を抱えながら仕事をしていますが、それに加えて環境変化に対応するため新しいプロジェクトが次々に立ち上がってきます。
新しいプロジェクトがいかに大切なものであったとしても、「時間がない」という状況から徐々に参画度合が薄れてくる場合があります。
過去に私が経験したプロジェクトを思い起してみると、次のようなことが起こっていました。
【プロジェクトの初期段階】
経営者からのプロジェクトへの期待
↓
期待を感じてプロジェクトへの参画が高まる
↓
プロジェクトミーティングの時間の充実感が高まる
↓
プロジェクトへの参加の意義がますます高まる
↓
プロジェクトへの参画度合がさらに高まる
初期段階では、とても意義や充実感を感じて参画度合が高まっていきます。そして、本格的に議論を始めていく段階になるとより集中的にミーティングの回数を重ねたくなりました。その日程を確保するためのスケジュール調整の中で問題となったのが、「本業」と「プロジェクト」の時間配分についてです。
【プロジェクトの中盤】
経営者から本業での目標達成プレッシャーがかかる
↓
ストレスを感じプロジェクトへの参画度合が下がる
↓
プロジェクトへの時間配分が減り、平日は本業の目標達成活動に集中
↓
休日のプロジェクトミーティングが増える
↓
家族と過ごす時間が減り、家族から不満がでる
↓
プロジェクトミーティングに集中できない
↓
プロジェクトの参画度合がますます下がる
このように、「プロジェクト」と「本業」との時間配分のジレンマに陥っていき、なんだかプロジェクトについて考えること自体が重荷となっていきました。
そしてプロジェクトメンバー以外の人たちから「最近、プロジェクトに力が入っていない」などと言われてしまいますがやる気がないことが問題ではありませんでした。
このような経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それでは、このサイクルに陥った時に一般的にはどのような対処がされているのでしょうか。
短期的な対処療法で悪化の一途
「時間がない」問題を解決するために、私のとった対症療法はますます問題を悪化させてしまいました。
例えば、どうしても休日のミーティングは決行しないとプロジェクトが進まないので、家族に休日一緒に過ごせないことへの弁明をします。しかし、ゆっくり話して理解してもらう時間もとらず「仕事は大事だから」と防衛的に伝えて、家族には疎外感を感じさせてしまいます。そして家族からの不満をさらに増大させるというサイクルが強化されていきました。
これでは根本的な解決にならないどころか、より一層ストレスを高めることになって身動きがとれなくなります。
だからといって、新しいプロジェクトに割く時間を減らすというのも本末転倒です。
それではどうしたらよいのでしょうか?
時間を生み出すためできること
最大の問題は「仕事量が多すぎる」ということではなく、「時間の使い方に対する柔軟性がない」ことだとピーター・センゲ博士は『フィールドブック 学習する組織「10の変革課題」(日本経済新聞社 2004)』の中でいっています。
つまり時間の使い方に関する自分自身のメンタルモデル、こうあるべきという思い込みを見直すということです。
例えば、「時間を生み出す5つの方法」として以下のような項目を挙げています。
1.活動を集約する
現時点で携わっている活動を列挙し、レバレッジを生む活動にほかの活動を組み込んでいく
2.意思決定のスタイル・リスト
腹の探り合いになるようなコミュニケーションパターンではなく、誰がどのように意思決定しているかを理解し行動に生かす
3.スケジュールを見る
自分自身/プロジェクト/組織、それぞれのビジョンを書き出し、2か月先のスケジュールと照らし合わせ、どのビジョンにも合致しないスケジュールを取り除くことを考える
4.注意の評価
一緒に仕事をしているメンバーに、「私が注意を向けすぎているもの/注意の向け方が足りないもの」を書き出してもらい、自分の注意を調整する
5.「妥当性、時間、相互利益」に対する自問
人に頼める仕事で自分がしなくてもよいと思っている仕事は何か、自分がやるべきではない仕事で今やっているものは何かを自問する
時間の使い方の妥当性を検討してみると驚くほど本来自分が優先すべき仕事に時間を使っていないということがわかります。少し考えてみただけでも次のようなものを思いつくことができました。
・自分ではなくても、誰かに任せられる仕事に時間を使っている
・独りよがりで作成した資料が上司に受け入れられず作業をやり直す
・ゆとりの時間を持つことを恐れ、忙しくするための仕事を探してやっている
今一度、自分の携わっていることを本来の業務やプロジェクト、自己学習など含めて洗い出し、重要度と緊急度のマトリクスで分類してみたり、Will/Can/Mustで分けてみるとよいかもしれません。
気持ちが焦っていると難しい作業なので、少し深呼吸が必要ですが・・・。
また今回取り上げたプロジェクトの例でみると、「家族との関係」を良好に保つためにできることは日常の中で工夫できることのように思います。
急がば回れといわれるように、いま目の前にある業務に追われ続けるのではなく、いったん立ち止まって、時間の使い方のメンタルモデルを変えることで更に意義ある仕事に注力できるようにしたいと思います。時間の使い方への柔軟性を高める、そのための切り口をご案内しました。より効果を高めるためには、自分自身の思考の傾向に気づく、ということも必要ではないでしょうか。そこでひとつご参考に問題解決ツールをご紹介します。「クリエイティブタイプ」診断というものです。
「クリエイティブとは何か」に関する視点は人それぞれですが、ここでは6つのクリエイティビティを定義し、あなたの思考プロセスを分析します。
ご興味のある方は下記よりダウンロードし、ご自身の「クリエイティブタイプ」をぜひ診断してみてください。
[hs_action id=”514″]
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。
株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。