今回はサスティナブル経営を推進している株式会社ビジネスコンサルタントがその実践者3名を招いて開催したセミナー(「サスティナブル経営で競争優位を築く 『サスティナブル経営の実践』」2015年10月15日・17日)の講演内容から、数回に渡ってポイントとなる点をご紹介していきます。

 前回の記事では、「サスティナビリティを組織で考えるためのチェックリスト」として、カール・ヘンリック・ロベール博士の「持続可能性原則」を紹介しました。
もう一つのチェックリストとして今回はボブ・ウィラードの考える「サスティナビリティのはしご」を紹介します。

 「サスティナビリティのはしご」を考える有効性

ご自身の組織が、サスティナブル経営を目指されるにあたって、最終ゴールと比較して今どこにいるのかを理解し、目指す方向性を示してくれるフレームワークがあったら便利だと思いませんか。

ボブ・ウィラード(サスティナビリティ学博士)は、IBMカナダで30年以上サスティナビリティについての取り組みを行い、ナチュラル・ステップ・カナダのボードメンバーとしても活躍してきました。彼は、ナチュラル・ステップの持続可能性を、企業がサスティナビリティ戦略を作るうえで、重要なフレームワークのひとつとして位置づけています。

その彼が紹介する「サスティナビリティのはしご」(Bob Willard, The Next Sustainability Wave,2005)を見ていきましょう。

持続可能な発展は、より高い価値を創造するための1つのステップとして5段階で考えることができます。
廃棄物を減らしたり、エネルギー効率を高めたりすることは入り口のアクションとして自然なことかもしれませんが、ゴールではありません。

「サスティナビリティのはしご」は、組織がサスティナビリティに対しどのようなスタンスで構えているかについて、異なるステージについて説明しています。

これによって、
・組織が今現在どこにいるのか
・外部環境にどんな機会がありそうか
・どんな動機や脅威がありそうなのか
について明確な全体像を知ることができるのです。この枠組みを使うことは、バランスのとれた、価値創造を最大化するのに必要な次の投資を行うのに役立ちます。

「サスティナビリティのはしご」の具体的なチェック項目

「サスティナビリティのはしご」の5段階、みなさんの企業活動に照らし合わせて見ましょう。sustainable-ladder

1段階:法令だけは守っています

2段階:コンプライアンスを遵守し、企業倫理も大切にしています。

企業は会社法はもちろん、例えば、省エネ法、環境影響評価法、農薬取締法などの環境法令にも従ってビジネスをすることが求められます。法律に定められていなくても社会規範や企業倫理等の社会の要請に応える内部統制を構築し、それを適切に運営する必要があります。法令・コンプライアンス違反が継続すると、業務停止命令や事業免許取り消し等のリスクがあります。企業の持続可能性を考えるための大前提です。sustainable-ladder12

ただし、①と②までのビジネスモデルは、「take-make –waste(搾取し、作り、廃棄する)」という直線的な資源の大量消費モデルに依存したままです。

持続可能な社会や自然環境についての社会的要請は、環境法として多く法制化されてきています。しかし、それらの環境法を守ったからといって、持続可能な社会や自然環境が自動的に守られる訳ではありません。

 サスティナビリティに対してより積極的な取り組みをして行くよう、社会の意識が育った時、つまりサスティナビリティを求める声が社会規範になったときに、法律だけを守っている企業は再びコンプライアンス違反に落ちる可能性があるということです。直線的な大量消費モデルから抜け出す必要があります。

3段階:経営コストを抑えること、そしてリスク管理の観点から、コンプライアンスを越えてサスティナビリティに取り組んでいます 

この段階の企業は、エコ効率を高めることで、コストダウンが達成できるということに意識が向いています。次の4つの方法を通じて「節約する」戦略でも十分効果をえることができるのです。sustainable-ladder3

  1. 省エネをおこない、エネルギーに関するカーボン・フットプリントを削減する
  2. 水資源を節約する
  3. 製品や梱包に係る資材を節約する
  4. 廃棄物取り扱いコストを削減する

 

企業の評判を高め、株主価値を最大化しながら地域社会への投資も行っています。しかし、サスティナビリティ!のかけ声は、特定の部署の活動に留まったままです。コーポレート・ガバナンスの1つの軸になっているというよりは、環境に優しい企業運営方針の1つとして行われているだけなのです。この段階でもビジネスは持続可能ではありません。この段階にいる企業は、いわば自分の企業からの廃棄物に溺れてしまうまでの時間を引き延ばしているだけで、持続可能でない企業習慣を根本的にやめようとは思っていないのです。

4段階:サスティナビリティを新しい投資の機会とみて、重要なビジネス戦略に取り入れています。サスティナビリティ主導の経営力は他社の追随を許さず、ステークホルダー(利害関係者)にもメリットをもたらすことでその関係を良好に維持します

 この段階の企業は、ビジネスモデルを「搾取し、作り、廃棄する」から、「拝借し、使い、元に戻す」という持続可能なデザインに変化させています。自分の企業を「サスティナビリティにコミットした会社」として、ブランドを再構築します。企業価値や企業のDNAに持続可能性原則を取り入れ、持続可能性原則にそったやり方と企業戦略とを整合させています。sustainable-ladder4

 この段階の企業は、すべてのステークホルダーにメリットをもたらすような、画期的なサスティナビリティの取り組みを行い、付加価値を得ています。「環境に優しくする」ことでコストやリスクを削減するのではなく、投資や機会に焦点を当てています。具体的には、持続可能性原則にあう製品を、持続可能性原則に合う形で運用し、ライフ・サイクル視点を徹底し、サスティナビリティの取り組みから得られる競争優位性を存分に味わっています。

5段階:サスティナビリティの課題を自分の業界の未来を再構築し、そこで競争優位性を確立する機会とみて、リーダーシップを発揮します

 この段階の企業は、情熱、つまり企業と社会と経済の健全性に価値観に基づいてコミットすることに突き動かされている企業です。よりよい世界を作ることに貢献することは正しい。だから、そうしよう!と行った具合です。sustainable-ladder5企業価値は、創設者や社長の価値を正確に映し出します。創設者が運営する会社には、他の4つの段階にいくことなく創設から、解散までこの5段階目にいたままの会社もあります。公開企業は、ビジネス界で社会や自然環境の測定基準が法制化されたら、この段階に来る企業が増えるのかもしれません。そうなる前に5段階目に到達した企業が、業界を引っ張って行くということです。

 

持続可能な社会への参画は何段目から?

企業が長期的に経営を続けていくための最低ラインは、4段階目にいることです。

3段階目までは、サスティナビリティとは何かを学ばずに、「持続不可能な」ビジネルモデルに立脚していても進むことができます。エコ、リサイクル等個別の「節約型」の企業行動でも対応できるのです。

しかし、投資をしていこうと(4段階目)に移ればそうはいきません。目の前の投資案件が、現時点でよさそうに見えるのかだけでなく、長期的に自然環境や社会の状況が変わっても持続可能なのか、もっといえば、その投資のおかげで他の企業活動の足を引っ張ることがないのかを慎重に判断することが賢明でしょう。

そして5段階目の移行を目指して行くべきだとされています。
今回の講演会では、サスティナビリティ2.0をめざそう、という呼びかけがありましたが、その呼びかけとは、「5段階目を目指そう」という内容でした。

本情報提供サイトGood people Good Businessで紹介さているInterfaceは、当初1段階目にいましたが、今は5段階目のサスティナビリティ2.0のステップにいる会社の好例といえます。

先のブルントラント報告書の持続可能な発展の定義【持続可能な発展とは、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすこと」】を知ることにより、わずかでも、サスティナビリティを我が事のように考えていただけたのではないでしょうか。

今の時点で、みなさんが期待するような結果がでていなくても、がっかりする必要はありません。出発点を明確にして、11つ「加担しない」にチェックをいれていけるよう、またサスティナビリティのはしごを軽快に登っていけるよう、計画を立てましょう。


 

ここまで、2回にわたり、サスティナビリティにまつわるチェックリストを紹介してきました。では、このような理念に基づき、実際に計画を進めていくにはどうしたらいいのでしょうか?

それについては、次回のブログで「スカンディックホテル」の例とともに紹介していきたいと思います。
次回以降もお楽しみに!

【参考文献】
http://sustainabilityadvantage.com/2010/07/27/the-5-stage-sustainability-journey/

 

「サスティナブル経営で競争優位を築く WINセミナーシリーズ】
1.自社のチェックリスト① 持続可能なビジネスか否か-4つの持続可能性原則
2.自社のチェックリスト② 持続可能なビジネスか否か-5つのはしご
3.スカンディックホテルのサスティナブル経営 実践事例~ハードの側面~
4.スカンディックホテルのサスティナブル経営 実践事例~ソフトの側面~
5.組織で成果を出すために必要なHuman Energy をどう育てるのか_前編
6.組織で成果を出すために必要なHuman Energy をどう育てるのか_後編
7.サスティナブルなビジネスモデルを作るために知っておくべきこと
8.持続可能な経営を導くリーダーシップとは

いかがでしたか?ぜひチェックリストで自社の現状を確認してみてください。 ブログ中でご紹介したインターフェイス社の取り組みを以下のeBookにまとめています。同社は「2020年までに環境への負荷をゼロにする」そんな無謀とも思えるミッションを掲げサスティナビリティの取り組みを続ける、世界的なタイルカーペット会社です。ビジネスモデルの変革により実績を積み重ねている秘訣をインタビューし、4つの章にまとめました。ぜひ以下よりダウンロードし、貴社の取り組みにお役立てください。

 





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