持続可能な社会(Sustainability)への意識の高まりにより、多くの企業は根本から価値観を変革し、イノベーションを起こす必要性に迫られています。

  • 短期的な収益のみを追求し、大量生産・大量消費を行ってきた価値観を振り払う
  • 将来の社会を見据え、経済活動および地球環境・人間社会システムの持続可能性を追求する

今企業に求められているこの2点は、いずれも容易なことではありません。

「エコ・イノベーション」と「ソーシャル・イノベーション」

2002年、持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)で採用されたコンセプトには、サステナビリティの柱として環境(Environment)、社会(Society)、経済(Economy)の3つが挙げられました。

経済と環境の持続可能性については「エコ・イノベーション」と言われる取り組みが広がっています。エコ・イノベーションとは、自然環境との健全な関わりを如何に保つかという視点に基づいたイノベーションです。具体的には、低公害車、省エネ家電、詰め替え用洗剤といった形で、日常的なところまで広がりを見せています。

エコ・イノベーションから生まれた商品の普及は、消費者意識の変革も起こしています。「電気代の節約につながるからエコ商品を購入する」という個々人の便益による選択だけでなく、「せっかく買うなら環境に優しい商品を選択する」という消費者が増えてきているのです。環境意識の高い消費者のニーズに合わせた製品イノベーションも、企業の生き残りを賭けた活動となっています。

また、経済と社会の持続可能性の分野では、社会的な問題や人間の基本的欲求、基本的権利が満たされていない状況を如何に解決するかという視点に基づいた「ソーシャル・イノベーション」が起こっています。バングラデシュのグラミン銀行が手掛けるマイクロファイナンスの事例などが有名ですが、エコ・イノベーションと比較すると取り組み事例がまだ少ないようです。

ケニアの非営利組織「Ushahidi」に学ぶ「ソーシャル・イノベーション」

そこで、社会の持続可能性を目的とした組織として紹介したいのが「Ushahidi」です。「Ushahidi」はオープンソースのソフトウェアやツールを作成するケニアの非営利組織。情報の民主化(democratizing information)、透明性の向上(increasing transparency)、個々人が物語を共有する障害を無くすこと(lowering the barriers for individuals to share their stories)を目的とした活動を行っています。

2008年、ケニアで選挙後に情報統制(media block)が敷かれた際、市民が暴動に関する情報を入手することは困難になりました。「Ushahidi」の活動は、その状況を解決することから始まりました。SMS、e-mail、webを通じて一般市民から投稿された情報を収集し、地図上に視覚化するオープンソースのソフトウェアを開発したのです。このソフトウェアを通じて、今どこで何が起こっているかを誰もが知ることができるインフラが構築されました。その後このソフトウェアは、武力行使だけでなく、ハイチや日本の地震、パキスタンの洪水などの自然災害の状況把握にも役立てられました。

「Ushahidi」の取り組みの素晴らしいところは、特定の地域で必要とされた問題解決手法が、世界各地で同じように必要とされ、広がった点です。普段、情報収集に何の不自由も感じない国の人々が、自然災害や人災によって弱い立場に置かれた際の助けとなりました。

今回、「サステナビリティ」と「イノベーション」というテーマで、環境分野と社会分野のイノベーションを取り上げました。かつては経済的な収益を生むはずがないと思われてきたような事でも、社会的なニーズや将来の消費者意識の変容を見据えて、ビジネス化することに成功しています。経済的収益と地球環境・人間社会システムとの持続可能性を両立させながら、より良い社会を目指す動きに、ますますイノベーティブ(革新的)なアイディアが必要とされています。

参照:
http://www.uncsd2012.org/about.html
http://www.ushahidi.com/

サステナビリティとイノベーションがなぜ結びつくのか、フレームワークでより詳しく理解したいという方のための資料をご用意しています。スウェーデン出身、サステナビリティの理論化であり実践家として著名なカール=ヘンリック・ロベール博士らの考え方などを分かりやすくご案内しています。

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