Good Business Good Peopleでは、
これまでご縁をいただいている国内外の専門家の方々に、
新型コロナウイルスがもたらす困難や不安にどう対処し、
大きく変化するであろう未来の社会にどのように備えるべきか
を考えるヒントを伺いました。
前回のミシガン大学キム・キャメロン博士からは、ポジティブ組織論をベースに、私たちがもっとうまく現状と向き合い、関わる人たちとの関係性を変えて、今を学びの機会としていけるようなヒントをいただきました。
今回は、サステナビリティのレンズを通して、今の危機への対処方法と、afterコロナの世界における事業活動のあり方、について考えます。メッセージを寄せて頂いたのは、英国のNGO Future-Fit財団の共同設立者、マーティン・リッチ氏です。マーティン氏らが開発・普及に取り組む「Future-Fitビジネスベンチマーク」は、サステナブル経営の評価指標としては、今もっとも完成度が高く、また企業活動の実際の変化を促すとして、国連や国連グローバルコンパクト(※)も注目するものです。
※国連グローバルコンパクト(UNGC)についてはこちらをご参照ください。㈱ビジネスコンサルタントは、UNGC及びGCNJに署名しています。
ビジネスは新型コロナウイルスにどう対処すべきか
賢明な行動につなげるために
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(このメッセージは、2020年4月中旬に撮影され、㈱ビジネスコンサルタントが日本語翻訳をしました)
こんにちは。イギリスのロンドンからご挨拶を送ります。非常に困難な試練のときではありますが、皆さんがお元気であることを願っています。私たちの良き友人でありパートナーでもあるBConから、日本の方々へ希望と励ましの言葉を送り、またこのようなときビジネスはどうしたらよいと思うかを話す機会をいただき、今皆さんにお話ししています。
今はまず、働く人々のウェル・ビーイングを第一に
どんなビジネスも、こんなとき真っ先に考えるのは、明らかに、働く人々の健康(ウェル・ビーイング)と、組織や会社が生き延びることでしょう。Future-Fit ビジネスベンチマークの主なねらいは、人々が成功・繁栄(フローリッシュ)することです。損益分岐ゴールといわれるものの5つは、働く人々の健康に焦点を当てています。それはちゃんとした生活のできる賃金を払うことで、心理的、身体的、感情的な健康を維持し続けることを目的としています。近年、こういった問題を重要視する傾向は高まってはいましたが、ことに今のような、人々が大きなストレスを感じている緊急・非常事態においては、日ごろ以上に重要だと言えるでしょう。ですから会社は、今まだ社員がオフィスや工場へ出勤し続けていようと、在宅勤務をしていようと、彼らがこの状況下で安全に、そして健康に、業務を行う上で必要なすべて――環境や機材や教育やサポートを与えなければなりません。彼らが心理面、身体面でともに良好であることができるようにし、それを確認しなければならないのです。
事業活動については、私は二つの観点から考えたいと思います。一つは、緊急時の救援隊としての活動、もう一つは、災害からの持続的な復興活動です。
緊急時の救援隊としてのビジネス
この緊急時に救援隊として機能できている組織は、今直面している状況に即時に適応しています。例えば、ほんの数週間前までレーシングカーをつくっていたF1(フォーミュラ・ワン)チームは、人工呼吸器を製造して病院に供給しています。数々のファッション・アパレル会社が、第一線で医療に従事している人たちのために、医療用ガウンやマスクを供給しはじめました。このように短い時間で、このように大きな活動の切り替えを行うことは、あなたの会社にできることでしょうか?
そして、事態が収束に向かおうとも、今後、復興の努力はずっと続いていきます。その中で、あなたの会社はどんな役割を果たしていくのでしょうか?
危機から復興するとき、新たな世界で存在意義を証明できるビジネスとは
社会と経済を可能な限りすばやく、可能な限り安全に立て直そうとしていく中で、私たちはどうやって自らの使命を果たし、自らの存在意義を証明していくのか……そして、それを、新たに変わった世の中の変化に適応しながら、これまで以上に力強く推し進めていけるのでしょうか?
私たちが再建し、復興していくとき、私たちの目の前には二つの選択肢があらわれます。一つは、以前の、平常時のビジネスにあわてて逆戻りすること。もう一つは、「より良い」ものを新たに創りあげることです。もちろん、過去の平常時のビジネスは魅力的です。なにしろ、それは私たちにとってなじみ深く、私たちがよく知るものだからです。でも、そのビジネスを長年辿り続けた末に、今、私たちがこのような未曾有の危機に直面する地点に立っているのだということを、忘れてはいけません。世界中で未だおさまらない環境破壊、社会の中で増え続けている不正義、そして不平等を目にするとき、私たちは心の奥底では気づいているのです。このままのやり方を続ければ、将来このような危機や災害がまた起こるであろうことを。そしてそれらは、今まで以上の頻度と、過酷さで私たちに襲いかかるであろうことを。
私たちは、本当に、そのような自己破壊と破滅の道をたどりたいのでしょうか?そうではなく、「より良い」ものを建て直すという選択肢があるのではないでしょうか?
環境を破壊するのでなく、回復し再生し、社会の不正義や不平等をなくすことはできないのでしょうか?
システム価値を創り出すビジネスへ
そのためには、私たちみんなが、ビジネスの成功や価値の創造といったことに対する、考え方を問い直し、改めなければなりません。財務的、金銭的な価値にとらわれるのではなく、生態系全体の価値、つまり「システム価値」を考えなければなりません。組織や会社が、地球、社会のために価値を創りだすこと。もちろん株主やステークホルダーたちにも価値を提供しなければならないのは変わりません。しかしあくまでも、地球や社会に利益を生むからこそ彼らに利益をもたらせるのであって、地球や社会の犠牲のもとに利益を生んではいけないのです。
私たちは、「責任」あり「再生」する「弾力性」のあるビジネスを創造しなければなりません。
「責任」ある、というのは、自社のビジネスが環境や社会に与えるネガティブな影響から目を背けずこれを理解し、できるだけ早くこれらを減少させ、取り除く方法を模索し実行することを言います。「再生」する、というのは、地球環境と社会をより強く健康なものにするような製品やサービスを提供することを言います。そして、「弾力性」がある、というのは、これによって、将来どんな「嵐」に巻き込まれようと、私たちが弾力性としなやかな回復力を持ってこれに対応していけるような、そんな組織、会社になっていくことを言います。
Future-Fitは、組織や企業がともに共同体(コミュニティ)の一員として、互いに支えあい、協働しながらこのような困難な課題に立ち向かい、そしてともに繁栄していくことを目指しています。
目の前にある二つの選択肢を見たとき、どちらの道を選びたいか、私にはわかっています。そして、このメッセージを聞いた皆さんも、私に賛同し、より賢明な選択をしてくださることを願っています。
これらの選択の間で迷ったときには、私の良き友人であるBConが、皆さんのご相談にのり、正しい決断をしたり、新たな道を切り開いていくお手伝いをさせて頂くと信じています。もし私にお手伝いできることがありましたら、私あてに質問を頂いてもかまいません。
皆さんと、皆さんの会社や社員の方々、そして皆さんの大切なご家族や友人の、ますますのご発展と健康をお祈りしています。ありがとうございました。
Future-Fit財団ホームページ(英語) https://futurefitbusiness.org/
Future-Fitビジネスベンチマークについて、こちらより資料をダウンロードいただけます
Future-Fit財団共同設立者&エグゼクティブダイレクター
マーティン・リッチ氏
サステイナブル投資のスペシャリスト。主な融資全般とインパクト・ファイナンスの両方で20年以上の経験を有する。
投資銀行業務からキャリアをスタートし、仕組債およびデリバティブ製品の担当としてJP モルガン、HSBC、UBSに13年間勤務。その後、社会的インパクト投資に転じ、Social Finance社の営業担当役員を7年間務める。これらの経験から、資産が地球や社会にどのようなインパクトをもたらしているのかを把握するための、世界共通のメカニズムが必要であることを実感。そして、コーヒーを待つ行列に居合わせた初対面の人とそんなアイデアを話し合う日々が、実入りのいい仕事を辞めてソリューション創造のための非営利団体を共同設立するという、予想外の展開を招くことを知った・・・。
Access Foundation基金投資委員会の社外取締役兼議長、Panahpur、Social Investment Business、Christian Aidの投資/諮問委員会のメンバーでもあり、G7社会投資タスクフォースの資産配分作業部会の元メンバーでもある。
ケンブリッジ大学クイーンズ・カレッジで工学修士を2つ修得。
【世界の専門家に聞くwithコロナ/afterコロナ】
①「感謝」による新型コロナウイルス危機への対処 byキム・キャメロン博士(ミシガン大学教授)
②afterコロナに存在意義を示せるビジネスであるために byマーティン・リッチ氏(Future-Fit財団共同設立者・エグゼクティブダイレクター)本記事
③持続する優位性を持つ組織の特徴、アジリティ by クリストファー・ウォーリー博士(ペッパーダイン大学教授)
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。
株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。