新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、日本全国を対象に緊急事態宣言が出されました。私たちの会社では、今夏予定されていた東京五輪にむけて徐々に在宅勤務の環境を整えているところでした。それでも、多くの社員が一斉に在宅勤務を始めることで様々な課題が発生し、日々改善に取り組んでいます。

働き方の変化がこれで決定的になりましたが、皆様の職場ではどのような対処を
されていますか?
リーダーの方々の多くはこれを新しい働き方を試す機会ととらえ、目の前の課題に着実に取り組んでいらっしゃると思います。

この記事では、そんなリーダーの方々にぜひ参考にして頂きたい、ATD※による研究に基づいた情報をお届けします。
参考情報:Leading in Uncertain Times: 3 Things to Do Right Now
https://www.td.org/insights/leading-in-uncertain-times-3-things-to-do-right-now
※ATDとは、Association of Talent Developmentの略称。世界中の人材開発の
専門家や、人材開発に関連するツールを提供している企業の集まり。

外部環境が急激に変化し、不確実な状況に戸惑う人も多い今、チーム運営を安定させ、パフォーマンスを上げる大事なポイントは、人々のモチベーションです。そのモチベーションの鍵は、人とのつながりの実感です。チームのモチベーションと、心理的安全を確保するために知っておくとよい3つのポイントをご紹介します。

ポイント1:誠実なコミュニケーションを頻繁に   

あまりにも急な変化に対して、人々がとる典型的な反応は「沈黙する」ことだそ
うです。
「国の公式見解や都道府県の指示を待ってから…、組織の方針が確定してから…」といった感じで、間違ったことを言わないように慎重になるからです。

ある意味、初期段階では合理的な反応なのですが、これが続くとチームにおいて
はメンバーの心理的安全を奪ってしまう原因になりかねません。

なぜなら、人間の脳には強いネガティブなバイアスがあるので、情報がなければ
通常、最悪の事態を想定してしまいます。情報がないままでいると、まことしやかな噂が流れだして人をますます不安にさせてしまいます。ですから、こういった状況では、リーダーは誠実で頻繁なコミュニケーションを心がけなければなりません。

リーダーは、つい「自分が全部知っていなければ」と思ってしまい、それをチームメンバーから期待されていると思いがちですが、そんなことはありません。この状況では、チームメンバーにとって心理的安全が大切であり、コミュニケーションをとることそのものが大事なのです。リーダーとつながっていること、守られていることを感じたいだけなのです。

ですから、コミュニケーションはまず誠実なものであることが重要です。自分が知っていることを共有し、自分の知識の限界を正直に話し、可能な限り情報を得て、真摯にコミュニケーションを取ろうとすることで信頼を築くことができます。

オープンなコミュニケーションは、チームのモチベーションを高めます。何を知っているか、何が決定されたか、何を知らないか、何が決定されていないか、そして次の情報がいつ共有できそうなのかをオープンに話すことで、チームメンバーへの気遣いと敬意を示すことができます。

ポイント2:“距離”をマネジメントする

緊急事態宣言が発動されてから、チームメンバーが離れた場所にいながら、一つのチームとして機能する「バーチャルチーム」で働くことになった方も多いのではないでしょうか?
バーチャルチームの効果的な運営について、今こそリアルに学べる時ですね。

バーチャルチームの場合、さまざまな観点で距離を確認することが大事なポイントです。

◆物理的(physical)な距離 … 場所や時間
◆運用上(operational)の距離 … チームの規模、メンバーのスキルレベル
◆親和性(affinity)… 価値観、信頼、相互依存性

この中でも、最初に手を付けるべきは、「親和性」に関する距離感です。ストレス状況下では、チームメンバー間の対立や誤解が増えてしまいがちです。

それを避けるためにも、チーム内で共有される「目的」をより明確化することが
大事です。ちょうど、日本では4月が年度始めの組織も多いと思います。私たちのチームもこの機会にもう一度自分たちのチームのミッションの見直しを行いました。目的が明確になれば、メンバー間の信頼関係、相互依存関係を強めていくことができます。そして、チームメンバーが普段以上に大きな目標を達成することが可能だと思います。

対面での会話に代わる手段として、ビデオ会議を活用しているチームも多いと思
います。在宅勤務時には対面コミュニケーションで成立する「あ・うんの呼吸」は通用しません。ですから、リーダーはさらにコミュニケーション能力を高める必要があります。自らの発信だけでなく、メンバーからの反応や質問の時間なども想定し、デジタルでのコミュニケーションの規範を試行錯誤しながら確立しましょう。また、全員が同じスキルや価値観で動いていないことも心に留めてコミュニケーションの強化を図ることも意識しましょう。

ポイント3:リアルなチームに戻った時の準備

今の状態は永遠に続くものではありません。いつか終息する日がやってきます。しかしながら、働き方やコミュニケーションは、以前と全く同じには戻りません。
リアルなチームに戻っても、不可逆的な変化としてその痕跡は残ります。ですから、リアルなチームに戻った時にリーダーは、何事もなかったように仕事を進めるだけでは不十分です。
“また一緒にいること”に皆が慣れるための時間をとり、以下のような観点でオープンに対話をしてみましょう。

◆バーチャルチームの時には、何がうまくいったのか
◆何がうまくいかなかったのか
◆どんなところを継続したいか
◆この経験が長期的にチームにどのような影響を与えるか

ここで優先したいことは、日常から離れて対話のための時間と空間を作ることです。こうすることで、大きな波を乗り越えた後にチームが(バーチャルではなく、リアルなチームとして)もう一度まとまることができる状況を作り出せます。

今回は、研究調査に基づいたリーダーとして不確実さを乗り越える3つのポイントをご紹介しました。
困難な状況にあっても、メンバーの求めることをとらえ、リーダーが振る舞いを変えれば、チームワークやモチベーションを高めることが出来るでしょう。


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