サステナブルで、安全・安心な社会の実現に貢献するソリューションパートナーを目指すカナデビアグループ。2050年を見据えたサステナブルビジョンを策定するにあたり、実現可能性を高めるために、全社レベルに加えて部門ごとでもビジョンとロードマップを検討しました。ここでは、サステナビリティ推進プロジェクトに各部門から参画した方々にお聞きした、サステナビリティの視点で未来を考えることの意義、難しさ、得られた成果をご紹介します。ご紹介するのはつぎの3つの部門・グループ会社です。

カナデビア株式会社環境事業本部
カナデビア株式会社調達本部
株式会社エイチアンドエフ

ここでは、カナデビアグループの主力事業を担う環境事業本部の取組みをご紹介します。

最先端のごみ焼却発電施設を世界に展開

カナデビア株式会社環境事業本部

KANADEVIA
カナデビア株式会社
環境事業本部 宮城さん

環境事業本部は、ごみ焼却発電施設や海水淡水化装置など、エネルギー・資源に関わる事業を展開する部門です。ごみ焼却発電施設とは、廃棄物を燃やして衛生的に処理すると同時に、大切なエネルギー資源として発電する施設です。カナデビアの主力事業であり、同社グループが納入した施設の処理能力は世界トップシェアです。お話を伺ったのは、サステナビリティ推進プロジェクトに、環境事業本部分科会の戦略委員として参画された宮城さんです。

事業戦略の異なる国内外の事業で統一したビジョンを話し合う機会に

環境事業本部では、国内事業と海外事業がそれぞれ中期経営計画を策定し、事業運営をしてきました。その大きな理由は、国内外でビジネスモデルや案件の規模やスキームが大きく異なっていることです。例えば、主力のごみ焼却発電施設のビジネスでは次のような違いがあります。

国内:カナデビアが施設の建設から運営まですべてを請け負うことが多い。発注者は自治体がほとんど。施設の処理能力100~300トン/日程度の規模が多い

海外:カナデビアが施設のコアな機器は提供するが、建設では地元企業と提携することが多い。発注者は民間企業。施設の処理能力は少なくとも500トン/日、大規模だと8000~1万トン/日ということもある。

今回のサステナビリティ推進プロジェクトでは「事業部として統一するビジョンを話す機会になったこと自体が新鮮」(宮城さん)でもありましたが、初期の段階では「それは国内事業が取り組むべきこと」「これは海外事業にしかあてはまらない」などという意見のすれ違いもありました。それでも、議論を重ねることで、互いの担当領域を分けるような発想で話し合うのではなく、それぞれの良さを認める機会となっていきました。例えば日本の事業では、規模は小さくともプロジェクトの準備を非常に丁寧に進めます。海外では、発注者である事業会社が「ごみ処理が問題になっているので、とにかく早く大規模な施設を作りたい」と考えて、周辺住民への説明や様々な準備を十分にせずにプロジェクトを進めて、結局施設建設が途中で頓挫してしまうこともありました。「プロジェクトには、日本、アジア、欧米など様々な地域を担当するメンバーがいました。そのためそれぞれの良いところが横ぐしで見えるようになりました。お互いの良いところは学び合っていきたいと考えています」(宮城さん)

「自分たちは取り組めている」「自分たちで決めることではない」という思い込みへの気づき

環境事業本部では、「自分たちが作る施設が、廃棄物の適正処理や再生可能エネルギーの生成につながるので、多く施設を建設し、事業を拡大することが社会貢献につながる」と捉えてきました。そのため、サステナビリティに関しても自分たちは取り組めているという感覚がありました。今回のサステナブルビジョンの検討において、廃棄物処理施設におけるサーキュラーエコノミーとは何か、カーボンニュートラルとはどうすることなのか、と改めて考えてみると、議論がさまざまな方向に向かいました。

「最初は『廃棄物処理における環境対応のあり方を考えるのは政府であって、我々ではない』という意見もありました。つまり、仕様が決まった施設を作るのが我々の仕事であって、その通り作った施設がサステナビリティに対してどう貢献しているのかという定義と意義は、僕らが考えることではないのではないか。そんなことを考えるよりも、より良いものをより安く作る方が貢献しているんじゃないか、といったイメージでした。議論の中で、やっぱそれでは駄目だよねとなりました」

「これまでの私たちの事業というのは、例えばダイオキシンをゼロにするとか、顧客から実現困難と思われる要望を受けても、それにお応えすることで信頼を高めてきました。過去には、灰から建設資材を作ることを試みたこともありますが、環境負荷の観点では課題がある取り組みでした。今回サステナブルビジョンを考えてみて、こちらからお客様に「それは本当のサステナビリティにはなりませんよ」と発することも大事なのではないかと考えるようになりました。つまり、企業の側から、どういう社会的価値があるのかといったことを発信することが期待されるようになるのではと考えています。」(宮城さん)

苦心して作り上げたロードマップとKPI

2050年のビジョンや成功の柱を考えるところまでは、新たな発見や気づきもあり、熱中して議論が進みました。サステナビリティの原則に則って検討を進め、自分たちの思い込みにも気づきながら議論を進める中で導かれた成功の柱のひとつが、『オープンダンピングサイトを無くす』です。オープンダンピングサイトとはごみをそのまま埋め立ててしまう処理場のことです。この目標を達成するには、環境事業本部がまだ進出していないような地域にも事業を拡大するなど、大きなチャレンジが求められます。

(検討過程で)つらかったのは、ビジョンであんなに高い設定をしてしまったものを、アクションプラン、ロードマップに落とし込み、KPIで重みづけをすること」(宮城さん)でした。2050年のビジョンは持続可能性4原則に合致していれば、ある意味自由な議論ができますが、実現の過程を具体化するロードマップではそうはいきません。特に今回の検討では、直近3か年については中期経営計画との連携が求められていました。そのため、検討中のロードマップを携えながら、同時期に中期経営計画の策定を進めていたメンバーと話し合いを進め、双方の理解を深め、整合性を取ってロードマップに落とし込むのには、かなりのエネルギーが必要でした。

新たなチャレンジ、顧客との関係性を変えていくことに期待

しかし、苦労をしたからこそ、サステナビリティの取組みとビジネスをしっかりつなげていこうという機運が高まったのも事実です。

プロジェクトで良かったことは、中長期の視点で今後会社や事業がどうあるべきか、危機感や課題感を同世代で共有できたことです。私自身の業務の中では、以前から取り組んでみたかったごみ処理のカーボンクレジット事業について、社内で承認が得られて、より深く企画する機会を頂くことができました。」

「そもそも当社の事業の価値って何だろうと原点に立ち返ると、ごみ焼却施設が求められる背景には、まずごみを集めて遠くに持っていったときに、不法投棄が生じたり、海洋ごみとなったり、ごみの最終処分場が多くなったりといった問題が発生していて、それを何とかしたい、環境を改善したい、というのがお客様に共通の課題感としてあります。これまでは、お客様からこれが欲しいと言われたら、欲しいものに合わせて見積もりをして、安くていいものを提案するというやり方でした。でも、今回の議論で得た気付きは、営業活動にも生かせます。我々の提供する施設ができたらどういう環境改善につながるのかという目線で、お客さまとの関係づくりができるのではと考えています。補助金が付きそうだといったことだけではなくて、最終処分場の臭いを無くしたい、ごみ自体を減らしたいといった希望を理解して、一緒に取り組もうというスタンスで提案をすれば、お客様の側も、施設の規模を大きくしようとか、交渉してみようと変わってこられると思います」(宮城さん)


今回は、カナデビアグループが実績を重ね、さらに拡大・強化を図っているサステナビリティ実現に直結するビジネスをご紹介しました。

次の記事では、調達本部と株式会社エイチアンドアフでのインタビューをご紹介します。


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