みなさんは、スケジュールの管理をどのようにされていますか?
私はここ数年、スマートフォンでデジタルスケジュール帳を活用しています。
簡単に書き換えることができアラート機能もついて重宝しているのですが、この時期になって来年の手帳を選ぶ楽しみが無くなったな・・・と少しさみしく感じます。
先日読んだヘンリー・クラウド著『リーダーの人間力 人徳を備えるための6つの資質(原題:Integrity)(日本能率協会マネジメントセンター)』にこんな一文がありました。
「船の航跡をみれば船について多くのことがわかるように、人についても仕事の航跡をみればその人のすべてがわかる」
自分の航跡を眺めるには、アナログな手帳の方が書いてある情報量以上のことを振り返ることができるかもしれないですね。
今回はこの書籍の原題「インテグリティ(Integrity)」について書いてみたいと思います。
自分がその立場におかれたら?
様々な組織の不正や不祥事の問題が連日テレビで報道されています。
もちろん、あってはならないことなのですが、自分がその当事者だったらどうしただろうかと考えてしまいます。
コストや納期、顧客や上司からの圧力を感じながら「本当に正しいこと」を主張できるかと考えると、私も不正につながる行動を選択することもあるのではないかと思います。
自分だけが周囲と違う主張をした時に向けられる冷たい視線や居心地の悪さはまざまざと想像できて、それに耐えられない自分の弱い部分、不完全な部分を報道を見るたびに見せつけられる思いがします。
もちろん組織の不正や不祥事は個人の弱さだけに起因するのではなく、集団思考に陥りやすい権威主義的な風土や自組織の常識を過大評価する雰囲気など様々なものが関係し発生しています。
集団思考に陥りがちな状況はいつ、どのような場面で起こっても不思議ではないと思います。
組織の問題は完全になくなるわけではなく、常に状況に応じて解決に取り組む必要はあるでしょう。
一方で、原因を組織の構造や文化だけにできないようにも感じます。
そこにいる「人」が結局は集団思考を作り出していると考えると、私たちは一体何を意識して行動することが不正や不祥事のリスクを低くすることに繋がるのでしょうか?
元外資系のメーカーの方から、アメリカではコンプライアンスという言葉よりもインテグリティという言葉を頻繁に使うということを教えて頂きました。
ドラッカーの書籍にもマネジメントを担う人材にとって、インテグリティを「決定的に重要な資質」と位置付けています。これが欠ける人間は、いかに知識があり、才気があり仕事ができようとも、組織を腐敗させるとまで書いてあったことを思い出しました。
ではこの「インテグリティ」とはいったい何なのでしょうか?
インテグリティとは完全性
インテグリティという言葉自体の定義が難しいのですが、『論語とドラッカー』の著者である安冨歩氏は「人格の一貫性、統合、完全性」という言葉で表現していました。
つまり、自分が「こうありたい」と思っていることと、実際にやっていることが完全に一致している状態です。
でもこれは、頭では分かっていても実践となると本当に難しいと感じます。
さまざまなプレッシャーがかかってくると途端に「長いものに巻かれて楽になりたい」という弱い自分の心の声に従ってしまいそうになります。
大事なことだということは分かっても自分がずっと一致した状態でいられる気がしないのです・・・。
やっぱり自分は不完全だなと思うのです。
インテグリティある人間にどのようにしたらなれるのか示唆を与えてくれたのが冒頭でご紹介した書籍『Integrity』でした。
著者ヘンリー・クラウド氏は次の6つの資質を磨くようにと示してくれています。
1.信頼を確立する
2.現実と向き合う
3.成果を上げる
4.逆境を受けとめ、問題を解決する
5.成長・発展する
6.自己を超え、人生の意味を見つける。
「インテグリティ」がぶれない軸をつくる。
私はこの2~5をみて、人間としての成長を促す「体験学習」そのものだと感じました。
まずは、【2.現実と向き合う】ということは、
不完全な弱い自分や、不完全な組織体質に向き合うことがスタートになります。
どんな人でも弱い部分、どんな組織でも完璧ではない部分があります。その弱さを表さないように振る舞うのではなく受け入れることをしなければ人も組織も成長しません。
【3.成果を上げる】
完璧ではないから成果を上げられないのではなく、今の状態から出来ることを見つけ、様々な取り組みを手を変え品を変えて具体的に実践することが大事です。
その過程で個人も組織もお互いに影響を与え合い、変化していきます。
【4.逆境を受け止め、問題を解決する】
たとえ抵抗があったとしても、逃げずに解決のために出来ることをする中で新しい発見や視点を獲得していきます。
【5.成長・発展する】
これらの過程で得られた知識やスキルや信念を次の成長・発展に活かしていきます。
インテグリティというと高潔で高邁な思想をもった、清廉潔白で強い人間にならなければいけないのだと勘違いしていたので、このサイクルをぐるぐるとまわしていけば良いのだと思えた時に少し気持ちが楽になりました。
自分の不完全さや弱さ、組織の不完全さや欠点はあって当たり前です。
しかしこれに向き合い、学習を続ける力がないと個人も組織も成長・発展しないでしょう。
あとひと月も経つと今年が終わってしまいます。
良いタイミングですので、まずは謙虚に、自分や組織のこれまでの航跡を確認し、不完全さも特徴の1つくらいに捉える態度でポジティブな側面もネガティブな側面も振り返り、次の成長の糧にしていけたらと思います。
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東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。
株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。