新入社員が社会人デビューして4カ月が経とうとしています。研修ではないリアルな体験に戸惑っている社員もいるのではないでしょうか。

また、職場の上司や先輩のみなさんは、新入社員をうまく成長に導けていますか?どのようなまなざし、どのような態度でOJTを行っていくと良いのでしょうか?

今回は、「経験・体験」から学習するサイクルをうまくまわすためのポイントについて、ご紹介したいと思います。

経験・体験から学ぶということ

先日、「経験学習」の基本を学ぶ機会がありました。

これは、組織行動学者のデービッド・コルブが経験からの学びを体系化したものです。知識学習と違って、経験・体験から学習し成長するにはポイントがあるのです。

【経験学習モデル】

経験:具体的な経験をする

省察:何が起こったかを多様な視点で振り返る

概念化:他でも応用できるように概念化する

試行:新しい場面で実際に試してみる

これをグルグル回していくことで、日常の経験・体験から学習できるというモデルです。

車の免許を取るときや、コーチについてもらってスポーツのトレーニングをするときにもこのプロセスを踏んでいるので、みなさんにも経験があり、実感していることではないでしょうか。

職場でのOJTでも、このサイクルを後輩と一緒に回していくように設計をしている方もいらっしゃるのではないかと思います。

しかし私は、今さらながら一つ見落としていたことに気づかされました。

それは、一人ひとり経験学習のサイクルのなかでも得意なところが異なるということです。

学習サイクルの得手・不得手

私は最初の「経験」が得意です。何かを「まずやってみる」「飛び込んでみる」ということがとても好きです。

しかし、次の「省察」があまり得意ではありません。起こったことがどんなことであったのか、一つひとつを丁寧に振り返るのではなく、漠然と「うまくいったこと」と「うまくいかなかったこと」だけを振り返るので、次の「概念化」がとても浅くなります。

せっかちな性格だということもありますが、「省察」をする時間を充分に取らず、例え時間が設定されていても、結論づけたら思考終了状態といった具合です。そして、早く実践したくてたまらなくなるのです。

一方、同僚には「省察」が得意な人がいます。何が起こったのかを事細かに記述します。自分の行動だけではなく、周りで起こったことの客観的な面までを書き起こし、さらに、自分の感情面の変化をも記述していくのです。本当に同じ経験をした人が書いた振り返りなのかと、他者からみるといぶかしく思えるぐらいに詳細な「省察」なのです。

しかし、「概念化」は苦手なようで、「省察」したことに満足してしまうタイプです。そのため、時間をかけた割には次のアクションにいかされません。

このように、同じ学習サイクルをまわしていても、人によって「つまずくポイント」が違うことに気づきました。

それでは、どのようにしたら学習サイクルを効果的に回していくことができるのでしょうか?

効果的な学習サイクルのまわし方

まずは、一人ひとりの得手・不得手を先輩や上司、または同僚同士で把握していくことから始めましょう。同僚同士ですと、お互いに補い合うことができます。また、先輩や上司は「つまずくポイント」をうまくサポートしてあげることもできます。

例えば、最初のステップの「経験」が不得手な方は、特に失敗を恐れます。
その場合、体験を細かくステップに分けて踏み出しやすくしたり、自信をもてたりするように、初めに小さな成功を体験させて褒めるといった工夫が効果的です。

次の「省察」が不得手な方には、振り返りをする際のガイドを提示します。何をしたのか、何が起きたのか、変化があったことは何か?といったことを客観的に記述するための質問を用意します。

それと同時に、その時の感情を引き出す質問も効果的だといわれています。例えば、その経験のなかで熱中できたのはいつだったのか、フラストレーションを覚えたのはいつだったのかといった具合です。

ポジティブな感情もネガティブな感情も、それが引き起こされた出来事には、人がどのようにとらえたかというメンタルモデルが反映されるからです。

「概念化」が不得手な方には、これまでの経験と重ね合わせるような質問が効果的です。同じような経験をしたことがあるか、そこからの気づきや学びは何か?その経験の何が自分にとって価値があり意味があることなのか、といった具合です。

そして、最後の「試行」が苦手な方には、学んだことをいかしてどのような違った行動を取るのか、何をするのかを具体的なアクションとして設定する質問が効果的です。

このように、学習のサイクルには「知っていてもできないこと」「効果的ではないこと」がたくさんあります。

職場が一丸となって学習サイクルをまわしていけるようにするために、ご自身、または後輩の「つまずくポイント」を見極め、お互いに背中を押し合うことができると良いですね。

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