“イライラする私”と“ワクワクする家族”

とある日曜日。家族を連れて食事に出かけたときの話です。

最近は、塾だ遊びだと子どもも忙しく、その日は久しぶりの外食となりました。口コミサイトでお店を探し、下調べにもぬかりはありません。

家を出て順調に車を走らせていると、ある地点で車が詰まってしまいました。何やらハザードランプの点滅も見えます。「これは事故だな。勘弁してくれよ。せっかくの休日が台無しじゃないか……」と心の中でつぶやく私。

しかし、相手は渋滞です。イライラしても何の解決にもなりません。ただ、そうは分かっていても、感情がおさまらず、ため息交じりで運転していました。

「きっと家族も落胆していることだろう……」。そう思ってふとバックミラーを覗くと、後部座席の妻と子供はなんだか楽しそうです。退屈しているどころか、むしろこの状況を楽しんですらいるかのように見えました。

不思議に思う私。「事故で渋滞なのに何でそんなに楽しそうにしてられるんだ?」という質問をすると、妻の答えはそのまま私への啓発となりました。

「せっかくのお出かけなんだから、もっと楽しもうよ。事故かどうかもわからないし。自然渋滞かもしれないわよね。ところで、これから行くお店はどんなお店なんだろうね」。

妻の発想はまさに、「厳しい環境にあってもへこたれず、立ち上がって成果を出せる力(レジリエンス)」に他ならなかったのです。

「Fast思考」と「Slow思考」

渋滞時の私と妻のように、同じ出来事に遭遇しても、人によって反応は異なります。ネガティブに反応する人もいれば、ポジティブに反応する人もいる。人それぞれですよね。それは一体なぜなのでしょうか?

2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者ダニエル・カーネマンは、著書『Thinking Fast and Slow』(邦題:『ファスト&スロー(上・下) あなたの意思はどのように決まるか?』早川書房 2014年)の中で、「人間がもつ2つの思考パターン」について言及しています。

  • 【Fast思考】:直感や感情的な連想に基づく判断
  • 【Slow思考】:注意深く合理的思考に基づく判断

事実関係を見ないで、過去の経験に基づき、直感的に感情的に判断してしまう思考を【Fast思考】といいます。物事を認識した時に、人は無意識にFast思考で判断してしまう傾向があります。

 【Fast思考】がダメということではなく、本来抱かなくてもよい感情を抱いたり、取らなくてもよい行動を取ってしまい、非生産的な行動になりがちです。また想定外の出来事に直面した時に、人は【Fast思考】で判断してしまいがちだという事を知っておく必要があります。

前述の渋滞では、私は「Fast思考」をし、妻は「Slow思考」をしていました。私は、本当に事故なのかどうかという事実確認をせず、勝手に状況を決めつけ、不必要にイライラしてしまったのです。

職場におけるFast思考の弊害

職場でも同様なことが起こっています。たとえば、上司や部下とのやり取りにおいて、次のように判断してしまうことがあるでしょう。

  • 「こいつは連絡が遅い。だからきっと、顧客への連絡も遅いに違いない」
  • 「こいつは“ゆとり世代”だから、競争心が希薄だ」
  • 「この悪い状況はずっと続くだろう。自分にはどうすることもできない」

これらは、渋滞時の私と同じように、事実とは関係なく、勝手な決めつけや思い込みで物事を判断してしまっている例です。

そもそも人間は、Fast思考で物事を判断しがちです。非生産的な思考や行動に陥らないためには、自分の思考スタイル(パターン・癖)を知る必要があります。

Fast思考で判断している自分に気づき、冷静になり、Slow思考(事実を正しく認識し、合理的に判断する思考)を活用することが大切ですね。

“非生産的なFast思考”3つのパターン

弊社では、心理学者が調査・研究した結果に基づき、“非生産的なFast思考”を次の3つに分類しました。

1. 勝手な決定

  • 最初に答えありき(情報を入手する前に、答えが決まっている)
  • レッテル貼り(自分や他者に対する一方的な決めつけ)

2. ネガティブの増幅

  • 永遠の不幸(悪いことが続き、自分ではコントロールできないという思い込み)
  • 一事が万事(一つの状況があらゆる状況にあてはまるという思い込み)
  • 負の拡大予言(ネガティブな状況を大げさに捉えてしまう)

3. 攻撃

  • 自己攻撃(自分が直面している問題の原因は、全て“自分の責任”である)
  • 他者攻撃(自分が直面している問題の原因は、“他者や環境のせい”である)

もし、これら3つの思考に当てはまる人がいれば、その人は仕事の生産性を下げている可能性があります。それは、たとえ本人が無意識だったとしてもです。

トレーニングで思考パターンを鍛えよう!

しかし、諦める必要はありません。当人に対し、非生産的なFast思考に陥っているということを理解させれば、思考パターンの是正は可能です。そのために、思考のトレーニングを行いましょう。

それぞれの社員が、レジリエンスを高める思考を身に付ければ、仕事の生産性を高められるだけでなく、職場の雰囲気をも変えることができます。まずは、Fast思考とSlow思考の違いから啓蒙していきましょう。

いかがでしたでしょうか? 思考パターンのトレーニングには他にも様々なアプローチがあります。一例として、「クリエイティブタイプ」診断をご案内します。 「クリエイティブとは何か」に関する視点は人それぞれですが、ここでは6つのクリエイティビティを定義し、あなたの思考プロセスを分析します。 ご興味のある方は下記よりダウンロードし、ご自身の「クリエイティブタイプ」をぜひ診断してみてください。

村中 穣治
大学卒業後、株式会社ビジネスコンサルタントに入社。 入社から11年間にわたり、地場~大手企業に対して、人材開発・組織開発の企画営業担当者、営業責任者を経験。コンサルタント部門に移籍後、管理者、中堅、若手の人材育成を中心に活動し、現在コーディーネーターコンサルタントとして、全国各地で活動をしている。 組織の活性化には、そこで働いているいる人々が、活き活きと仕事に取組むことが大切であるという信念を持ち、組織やチーム、個人の「ワクワク感」を創り出すべく、邁進中。ポジティブ心理学をベースにしたレジリエンス力強化プログラムを中心に展開している。