一年の計は元旦にあり、と言います。今年は問題解決能力を高め、デキるビジネスパーソンを目指す、そんな決意を固めた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ところが、何か問題や課題を目の前にすると、漠然とした不安を感じて解決がズルズル先延ばしになったり、それどころかネガティブな事ばかりを考えたりして事態が何も変わらない、なんてことはありませんか?

実はそこにはネガティブな思考のループが関係しているかもしれません。
今回は、思考のデス・スパイラル:破滅的思考から抜け出す方法をご紹介します。

 貴重なエネルギーを浪費する破滅的思考

破滅的思考とは、合理性のない最悪のケースを何度も繰り返し考えることです。この思考は問題解決を停止し、救いようのない不安を作りだし、自身の貴重なエネルギーを浪費することになります。

私は学生時代、この破滅的思考を強烈に繰り返した経験があります。大学院の修士論文提出締め切り数日前に、提出が間に合わずこのままでは卒業できないかもしれないと絶望したことがあったのです。

その時の私の思考パターンはこうでした。

修士論文の締め切りに間に合わず、卒業できない
→担当教授から呆れられ、見放される
→後輩から馬鹿にされ、後ろ指を指される
→就職が決まっていた会社から叱責され、内定を取り消される
→再び就職活動をしたとしてもどこにも採用されない
→仕事に就けず、収入が得られない
→これからバリバリ働くと思っていた自分のキャリアが実現できない
→私の人生もこれで終わりだsaiaku2

私はこの考えが頭の中をぐるぐると巡り、「もう駄目、もう無理」と涙を流して茫然とするばかりでした。締切りが間近だというのに全く作業が進まず、無駄に時間を浪費してずいぶんと親を心配させた記憶があります。最終的には、なんとか提出でき、無事審査を通って卒業し、就職することができました。

今思えば、卒業できなければ人生終わりなんてとんでもなく飛躍した思考で、なぜあんなにも自分は動揺してしまったのだろうと不思議に思うことがあります。

実際に会社に入ってみてわかったことですが、3月に卒業できずに10月に入社した社員や、新卒で入社した会社を退職し中途入社してきた社員もいます。大学を卒業して就職できなかったら人生終わりなんてことはないのです。でも当事者は客観的に物事を考えることができないのですね。 

 「ズーム・アウト」で破滅的思考を止める   

最近、私が抱えている懸案事項は「仕事と家庭の両立」についてです。

 新しいプロジェクトのリーダーや責任ある立場を打診されると、ありがたい!頑張りたい!と思う反面、もしもこうなったらどうしよう、ああなったらどうしようとありもしないことに考えをめぐらせて、その打診を受けることを躊躇してしまうのです。つい、いつもの癖で破壊的思考に陥りそうになります。

そんな時、現状を冷静に見つめ、問題解決の糸口を導き出してくれる「ズーム・アウト」という手法を活用します。
ズーム・アウトには「一歩引いて物事を大局的にとらえる」という意味が込められています。手順は以下の通りです。

STEP1:最悪の状態を想定した考えを書き出す(何から何までうまくいかない)
STEP2:最良の状態を想定した考えを書き出す(何から何まですべてうまくいく)
STEP3:最も起こりうる状態を想定した考えを書き出す
STEP4:「最も起こりうる状態を想定した考え」に対処した計画を明確化する


「仕事と家庭の両立ができるか」というテーマについて、まずは最悪の状態から書き出します。image

STEP1:最悪の状態を想定した考えを書き出す(何から何までうまくいかない)

・仕事のコントロールができずパートナーも忙しいため、保育園のお迎えはいつも遅れがち
・家に帰るのが遅くて食事の支度ができず、常にできあいのものばかり
・子どもが身体を壊し、看病に手が取られて仕事が進まない
・仕事の成果が出ないので上司から叱責され、見放される
・子どものせいでキャリアが築けないと子どもを疎ましく思う
・自分には仕事も母親業もうまくできないのかと滅入ってくる
・心に余裕がなくなり、パートナーと険悪な雰囲気になる
・結婚生活が破たんし、離婚する

次に、最良の状態を書き出します。

STEP2:最良の状態を想定した考えを書き出す(何から何まですべてうまくいく)

・働き方の見直しを会社に打診し、仕事のコントロールができている
・パートナーと家事・育児の分担ができ、子どもと向き合える時間が取れている
・子育てを機に手作りのおいしい食事を作ることができるようになる
・実家の両親が近所に引っ越してきて、日中の子どもの世話をしてくれる
・祖父母と関わることで、子どもの豊かな心がはぐくまれる
・パートナーが私にフリーの1日を週1回作ってくれるので、心に余裕ができる
・仕事が軌道に乗り、会社から評価され、収入が大幅に増える
・家庭と仕事を両立しているロールモデルとしてテレビや雑誌にインタビューされる

次に、最も起こりうる状態を書き出します。

STEP3:最も起こりうる状態を想定した考えを書き出す

・周りの協力を得ながら、保育園のお迎えに間に合う時間には帰れている
・仕事自体の時間は短くなっても今までのキャリアを活かした仕事で成果を出せている
・収入が大幅に増えることはないが、成果にみあった収入を得られていることに感謝している
・毎日ではないにしろ、大抵はきちんと食事が作れている
・栄養のバランスは保育園で補っていると自分をゆるし、たまには外食やできあいのものもおりまぜる
・パートナーが家事・育児を可能な限り手伝ってくれる。ただ、どうしても仕事があって無理なときもある
・パートナーが週末に2時間位フリーになる時間を作ってくれることで心理的バランスは保てている
・もしもの時のサポート体制が組めている

この「最も起こりうる状態を想定した考え」に対処する計画を明確にします。

STEP4:「最も起こりうる状態を想定した考え」に対処した計画を明確化する

・1か月単位のスケジュールを確認して計画を立て、見通しを立てた生活をおくる
・計画の中で、誰にどのような協力をしてもらうのかを明確にしておく
・ベビーシッターの登録をしておくなど、子どもの病気などの不測の事態にも備えておく
・サポートしてもらう上司や同僚・関係者に感謝の意を示すことを忘れない
・帰宅後30分でできる料理のレパートリーを増やす
・1週間の食事メニューを土日に決め、野菜を刻むなど下ごしらえをしておく
・パートナーとの役割分担を明確にする
・ベビーシッターを雇っても家計を圧迫しないように、収入と支出のシミュレーションをしておく
・子供の年齢変化と共に自分のキャリア構築のシミュレーションをしていく

フォーカスの矛先を変えることで問題解決の行動計画が明確にSONY DSC

始めに最悪の状態を想定しておくと、「いくら悪くてもこれ以下は悪くならないのだから、クヨクヨ考えても仕方がない」と破滅的思考の連鎖を止めることができます。

次に、最良の状態を考えることで、視野が一気に広がります。ここでは自分でも笑ってしまうぐらいオーバーに話を飛躍させて夢を描くことが大切です。そうすることによってネガティブな思考にストップをかけることができ、「最も起こりうる状態」を冷静に考えられるようになるのです。

 上記の2つのステップを踏んだ後に最も起こりうる状態を考えることで、現実的な課題がはっきり見えてくるようになります。そして、自身のエネルギーや知識、経験を問題解決に集中させることができるでしょう。
そして、最も起こりうる状態に対処するためには何をすればよいのか、具体的な行動が考えられるようになるのです。

新年を迎え、新しいことにチャレンジしたい方、なかなか取りかかれない課題を抱えている方、「ズーム・アウト」であなたの集中力を問題解決に振り向けてみませんか?

公開講座 レジリエンス SBRP

伊藤 慎子
関西の大学、大学院で認知心理学を学び、心理学をビジネスで生かすことを目指して(株)ビジネスコンサルタントに入社。 現在はコーディネータコンサルタントとして人材育成、組織開発のコンサルティングに従事。ポジティブ心理学を多くの人たちに広めて日本を元気にしたいと邁進中。 全国47都道府県すべてに出張した経験があり、その土地のおいしいものを食べるのが仕事の合間の息抜き。一番好きなご当地名物は名古屋のあんかけパスタ。