「この人といると何故だか元気づけられる・勇気づけられる」といった体験を皆さんもしたことがあると思います。

たとえば、
・この人と話をすると元気をもらえたり、やる気が出たりする
・「元気付けてもらいたい」時にはこの人に会ったり話したりする
・この人と話すと、私は仕事をする気力が湧いてくる気がする
といった感覚です。

このような人の特徴は先天的なものなのでしょうか。いえいえ、育むことが可能なのです。ではその特徴を見てみましょう。

前回のブログ、ワクワクできる職場にあふれる『ポジティブ・エネルギー』とは-ポジティブ・エネルギー①では、ポ ジティブな対人関係から生まれるエネルギーは、枯渇するどころかどんどん増えていくという研究をご紹介しました。今回は、「ポジティブなエネルギーとその 効用」に関してミシガン大学のキム・キャメロン教授から教わった「ポジティブ・エネルギー」と動機づけの違いや、それを生み出す人の特徴についてご紹介し ます。

外発的な動機づけに潜む罠

さて、「人からエネルギーをもらっている」という感覚は、いわゆる「動機づけされること」とはちょっと違っているように思います。

外発的な動機づけとは、評価・賞罰・強制など外部からの刺激を与えることで望ましい行動を引き起こすという考え方です。これは多くの場面で使われています。

例えば社員が仕事に打ち込むようにするために、いい結果を出したら給料を上げ、昇進昇格させ、悪い結果だと降格したり減給したりする飴とムチのようなやり方が外発的動機づけです。

一般的に、効果は一時的で、必ずしも人の成長につながるわけではなく、負の側面も指摘されています

ダニエル・ピンク(キャリアアナリスト)は『モチベーション3.0』の中で、外発的動機づけによるモチベーションを“モチベーション2.0”と呼び、ルーチンワーク中心の業務には有効ですが、逆にクリエイティビティが低下し、報酬がないと行動しない状況を生み出すので、環境変化が不確実な時代においては機能不全に陥ることもあるといっています。

一方、ポジティブ・エネルギーを与えてくれる人と接触した時に活気づけられるという感覚は、とても個人的ではあるけれどその感覚やエネルギーそのものが活性化やパフォーマンス向上の源だとキャメロン博士は教えてくれました。

パフォーマンスの向上に大きく影響する「ポジティブ・エネルギー」

キャメロン博士は、パフォーマンスを向上させるリーダーやマネジャーの特性を研究しました。

主に、リーダーやマネジャーの持つ「影響力」「情報量」「ポジティブ・エネルギー」の3つについて、それぞれがどの程度パフォーマンスに影響するかを調べたそうです。すると、 「影響力」や「情報量」 と比較して「ポジティブ・エネルギー」4倍パフォーマンスに影響を与える、重要な因子だということが明らかになったそうです。

組織の成功を説明する要因としての「ポジティブ・エネルギー」の重要度合は、その他の要因を圧倒的に凌いでいることに驚きます。

この結果を受けて、テキサスにあるコールセンター業のベリルヘルス社のCEOポール・シュピーゲルマン氏は上級役員の女性一人を「楽しさと笑いの女王」に任命したそうです。ポジティブ・エネルギーを与え合える相互交流の風土づくりを目的とした役職です。

彼女がファミリー・ファン・デーやホリデー・カーニバルといった場を企画するなど、職場でも休日でもエネルギーが行き交う場づくりを進めた結果、次のような結果を出すことができたそうです。

-業界平均よりも34倍高い利益をあげた
-離職率が格段に低くなった
-顧客ロイヤリティ指標が向上した
-「最高の職場」として外部団体に認定された

本当なの?と疑いたくなるような結果なのですが、キャメロン博士は実際に起きていることであると説明してくれました。

職場でポジティブにエネルギーを与えるリーダーといると、そうでない時と比べて、

 -個人の幸福感
 -自分の職務に対する満足感
 -組織への参加意識
 -職務上のパフォーマンス
 -一体感
 -学習に対する意欲
 -実験的・創造的な活動

全てが増えていくそうです。また研究では、そういった人と一緒に過ごすと家族の幸せ度も高まると証明されているそうです。

「ポジティブ・エネルギー」を生み出す『ポジティブ・エナジャイザー』の特徴は?

キャメロン博士は、こういったリーダーを『ポジティブ・エナジャイザー』と呼んでいます。

ポジティブ・エナジャイザーというのは外交的だったり、社交的、カリスマ的あるいは活発で活動的であるといったこととイコールではありません。例えば、外向性‐内向性といったパーソナリティー特性と「ポジティブ・エネルギー」の相関関係は低いといいます。いつも話を最初に切り出す人や、どんどん話す人、人付き合いのいい人が必ずしも他の人々にポジティブにエネルギーを与えるわけではありません。むしろポジティブ・エネルギー」は双方向的で、お互いの関係性の過程で育まれていくもので学習して後天的に身に付けられるものだといいます。

それでは、ポジティブ・エナジャイザーといわれる人の特徴として、どのようなことがあげられるのでしょうか。

キャメロン博士が様々な組織のポジティブ・エナジャイザーについてインタビューしたところ、次のような特徴が出てきたと教えてくれました。

 -他者が活躍するのを助ける
 -信頼され、言動が一貫している
 -頼れる
 -語彙が豊かである
 -気配りができ、何事にもエンゲージする
(思い入れ・絆・愛着心・心底繋がろうとする想いなどを持つ)
 -偽りなく、オーセンティック(真正・本物)である
 -チャンスを見いだすことがうまい
 -問題を解決する能力がある
 -ほほ笑みを絶やさない
 -感謝の念を示し、謙虚である

私の中で思い当たるポジティブ・エナジャイザーの特徴と確かに一致しています。特に信頼できて、誠実であることだけでなくいつもチャンスに目を向けさせてくれます。

エネルギーを奪う「エナジー・ヴァンパイア」の特徴は?

その逆にエネルギーを奪う人を「エナジー・ヴァンパイア」と名付けています。その特徴は次のようなものです。

 -多くの場合、障害や障壁に注目する
 -問題を引き起こす
 -他者が評価されることが許せない
 -柔軟性に欠けている
 -他者に対する配慮を示さない
 -最後までやり抜かないことがある
 -自らを美化する
 -たいてい陰気でいかめしい
 -表面的でオーセンティック(真正・本物)ではない
 -批判的であることが多い

自分に照らし合わせると、時々ヴァンパイアになっているな・・・と恐ろしくなります。つい忙しくなると、自分中心になってしまい、周りが見えずに配慮にかけ、自分に近づくなオーラが出ていると人から指摘されることも多くなってしまいます。

皆様もご自身を振り返ったり、職場をみまわしてみるといかがでしょうか?

次回(最終回)は、「ポジティブ・エネルギー」の測定方法や、『ポジティブ・エナジャイザー』の活かし方についてご紹介したいと思います。


「ポジティブエネルギー」 シリーズ

1.ワクワクできる職場にあふれる『ポジティブ・エネルギー』とは-ポジティブ・エネルギー①
2.今欲しい、職場にエネルギーをもたらす人材の特徴-ポジティブ・エネルギー②
3.変革を持続可能にするために、組織が増やすべき人材は『ポジティブ・エナジャイザー』_ポジティブ・エネルギー③


ネガティブな態度や行動パターンはトレーニングによって変えることができます。ポジティブに挑戦できる人材を増やしたい方にお勧めのプログラムはこちらです。
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廣瀬 沙織
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。 株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。