新しい年の始まり、新たな目標を掲げて、やりたいことをたくさんリストアップしたくなります。今年こそはもっと時間を有効に使いたい、集中力が高まれば、もっと生産性高くできるのに、と思っている方も多いのではないでしょうか?

あるデータによると、人は本当に集中している時間はそれほど多くなく、起きている時間の47%は心が揺れてさまよい、会議をしていても70%の時間は集中できていないそうです。集中して仕事を早く終えたいのに、実際は心があれやこれやの心配ごとでさまよってしまい、必要以上に無駄な時間を使っている自分がいます。
そして個人が自分の仕事の生産性を上げるためにどれぐらい時間をつかっているかというと、たった2%だそうです。

今回は忙しい時こそ、あえて時間をとって実施することで生産性が上がる方法をご紹介します。ただの精神論ではなく、脳科学の研究に基づいたやり方です。集中力・創造性・記憶力など仕事のパフォーマンスを上げるための基礎力をつけたい方に参考にしていただけると思います。

 瞑想が脳と仕事のパフォーマンスにもたらすものとは

 201610月にアトランタで開催されたOD Network1 の年次カンファレンスに参加した際、セッションの1つに、Googleのエンジニアが開発した「Search Inside Yourself」という講座が開催されていたのでどんなものか興味半分で受講してみました。
 “マインドフルネス※2”ベースの講座ということで、「みんなで瞑想するの?寝ちゃったらどうしよう?」とちょっとドキドキしながら会場へ入ったのですが、そんな心配は不要で、講座中は新しい知識や発見の連続で、とても充実した時間でした。

 まず驚いたのは「瞑想=リラックス」だけにとどまらないその効果です。瞑想をコツコツ3分でも5分でも毎日続けていると、脳の構造そのものが変化するそうです。
一般的に、脳は加齢とともに収縮するといわれていて、40歳を過ぎるとその傾向がみられるそうですが、瞑想をしている人は脳が収縮するどころか神経密度が増していくことが脳の研究で証明されているそうです。
特に、瞑想は前頭葉という集中力や意思決定などを司る部分や、記憶や学習を司る海馬が活性化し、仕事のパフォーマンスを高めるには効果的だということが分かります。また、扁桃体という感情を司る領域が縮小することで、ストレスの軽減につながるそうです。
勇気づけられるのは、筋肉のように脳も意図すれば鍛えられるということです。そして、瞑想は一時的なリラックス効果だけでなく、脳を鍛えることにつながる持続的な効果があるのですから、これを習慣化しない手はありません。

1 OD Networkとは  世界の組織開発の研究者・実践者が集まり、学び、協働するコミュニティ
2 マインドフルネスとは 「今この瞬間」の自分の体験をあるがままに気づくことです。瞑想をベースにした心のエクササイズとしても知られています。

 脳の筋トレを実践する

 脳の筋トレとして、瞑想が効果的だということはわかりましたが、瞑想にもいろんな種類があると教えてもらいました。床に座禅のように足を組んで座り、目を閉じて・・・・というだけではないんです。
最初に私が体験したのは、「呼吸」に意識を集中する瞑想方法です。
2分間、一貫して自分の呼吸に注意を向けるだけです。

 呼吸法の手順

1.椅子に座ったままの状態で、床に足をつけて、目を閉じます
2.呼吸していることを自覚します
3.空気が鼻を通ったり、肺に入ったりするそのプロセスに注意を払います
4.気が散ったことに気づいたら、また、呼吸に集中します

 これで眠くなってしまう人は、壁際の身体を支えられるところに立ったまま実施してもよいそうです。この瞑想の方法では、「(呼吸に)注意すること」と「注意がそれることに注意すること」を繰り返すことで集中力が鍛えられます。

 もやもやした感情や思考に振り回されない習慣をつける

 次に体験したのは、ジャーナリングという方法です。
簡単にいうと、書き出しだけ決めておいて、あとは筆を止めずに1~2分間、頭に思い浮かんだことをそのまま筆を止めずに書き留めていきます。実際に私が体験したのは、次のような書き出しの文章を各1分ずつ、順に書き留めていくものでした。

 ジャーナリングの書き出し例

・私が今感じていることは・・・・
・私が意識していることは・・・
・私にやる気を起こさせるものは・・・
・私にインスピレーションを与えてくれたのは・・・
・私がこれからやってみたいことは・・・

ここでは呼吸法と違って何かに集中するのではなく、頭をよぎる考えを観察して書きとめていきます。自分でも驚くほど脈略のないことがどんどん浮かんできたりします。誰かに見せるものではないので、論理矛盾をおこしても、こんなことを思っている自分は恥ずかしいなどといった検閲を外して書いていきます。

 これは集中したい時さえ頭に湧いて出てくる感情や思考に振り回されるのではなく、それを客観的に気づいていくための練習です。社会生活の中では特に、抑圧している感情や思考が心の底でもやもやとしてしまい、抑えているつもりが実は振り回されていることがあるものです。それを一度認めて、対処するために、観察して受け止めることが大切なのです。

 また、脳にはデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という、過去の記憶と感情をつなぎ合わせる働きが存在しているようです。これが活性化すると、様々な結合がおこり、発想力や想像力につながります。例えば、散歩をしていたり、お風呂に入っていたり、ぼんやりしている時に「ひらめいた!」という経験がある方も多いと思いますが、このジャーナリングによって、DMNが活性化することも脳科学で証明されているそうです。

ビジネスパーソンが習慣化できる、マインドフルネス実践

仕事でのパフォーマンスを上げたい時、焦って心が迷ってしまわないように一日数分の時間を割くだけでできるマインドフルネスに挑戦してみては如何でしょうか?

私のお勧めは、朝起きてから食事の前までの数分の時間で呼吸法をすることです。朝の静かな時間に、呼吸法をするととても集中できますし、頭がすっきりするので午前中の仕事の生産性が上がるように感じます。
午前中に重要な意思決定など集中してしなければならないことを予定すると思った以上に早く、質の高い意思決定につながります。

ジャーナリングは少し一息つきたい午後3時ごろに実施します。フルに稼働している頭を落ち着けるのに効果的で、その後だらだらと仕事をせずに退社予定時間をオーバーせずにキッチリと仕事を片付けていくのに役立っていると思います。

脳科学の調査によると、3週間続けると習慣化が成功するといわれています。少しでも脳に良い習慣を体得して今年のスタートダッシュにつなげたいと思います。


マインドフルネスシリーズ

1.「脳の筋トレ」でやりたいことをやれる集中力を高める_マインドフルネス実践①
2.「脳の筋トレ」で高められるリーダーシップとは_マインドフルネス実践②


集中していてパフォーマンスも高い状態のことを、「フロー状態」と言います。研究の第一人者であるチクセントミハイ博士の初来日講演内容をeBookにまとめました。ご自分やチームをフローな状態にして、クリエイティビティとパフォーマンスを高める方法をぜひご覧ください!


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廣瀬 沙織
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。 株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。