2015年6月29日号の『AERA』で「勉強しないと生き残れない~学習社会の衝撃」という大特集が組まれていました。

「勉強しないと生き残れない」といった記事から、今注目の社会人向け大学院や働きながら学習できる企業の特集などさまざまな観点で、生活者として、働く人として必要な「学習」が取り上げられていました。

優秀な人材を獲得するためには、既存のOJTだけではない、目玉となる研修会や学習の機会を設けている企業も増えてきたようです。

「武者修行研修」「無人島サバイバル研修」「対話型アート鑑賞」などなど、昨今の「研修タイトル」を見て感じることは、企業としてOJTが機能していることは大前提、その一方で、OJTだけでは新しい領域へ挑戦をする人材開発が起こりにくいという背景も見え隠れしているように感じました。

さて今回は、弊社で行なった「スウェーデン視察ツアー」をコーディネートするなかで体験した「学び」をご紹介したいと思います。

同じ話を何度も聞いているはずなのに・・・

今回の視察ツアーには、BCon社員が5名参加しただけではなく、お客様も5名参加してくださいました。現地での視察は全3日間、サスティナビリティのリーダーマインドに触れる内容でした。

視察ツアー冒頭は、The Natural Step※の創設者 カール=ヘンリック・ロベール博士のセッションでした。

企業がサスティナビリティを戦略的にけん引する例として、ある企業が先端技術を開発した後で、持続可能ではない原材料やエネルギー源の税率を高くするなど規制するように政府や関係機関に働きかける話がありました。

1人の参加者から、「つまり、デファクトスタンダードを作って、一人勝ちしようってこと?」という質問が出た時点から、参加者の思考が火がついたように一気に活発になりました。

ある人は「そうですよ。やっぱり経営者は勝ちたいですからね。」と発言したり、またある人は「一人勝ちってことが目的ではないんじゃないですか?」など、参加者同士でその疑問に対する意見が交わされました。

その議論のなか、カール=ヘンリック博士の答えはこうでした。
「経営者は競争が好きだから、一人勝ちだと面白くないでしょう。規制をかける理由は、他の企業にも追いかけてきてほしいからです。だから、リードするといっても、先に行きすぎちゃダメなんです。」

しかし、博士のその言葉を聞いた途端、私を含めその参加者一同、頭のなかが「モヤモヤ」っとなりました。私はこの種の話を何度も聞いていたので、よく理解しているつもりでいたのに・・・です。

その後も質問を続けようとしたのですが、残念ながら時間切れ、カール=ヘンリック博士とは議論を続けることができませんでした。

モヤモヤが促進するソーシャルな学び

時間の都合で、そのモヤモヤを抱えたまま昼食の時間に入りました。

これを解消したかったのか、自然と各自がポツポツと自分の考えや今の気持ちを表現していきました。

そのなかの1人が、「これって、あの自動車会社が水素で狙っていることなのかな?」「そういえば、あの会社も・・・」といったように、みんなが抱えていた「モヤモヤ」にだんだんと「輪郭」ができてきました。

サスティナビリティに挑戦し、リードする企業は、

  1. 同業・異業種ともコラボレーションする。1社ではできない開発をするために情報をオープンにして仲間を増やす、もしくは、開発競争をすることでより磨きをかけていく
  2. インフラ投資などが必要な場合には、市場を作り政府や自治体の参画も狙っていくことが求められる
  3. 一人勝ちを狙っても、結局マーケットが小さいままだと、結果としてもうけが少ない

など、お互いに話しをするうちに、その発言が正しいかどうかは別として、「腹落ちする」学びへとつながっていきました。

これがランチをしている約30分程で起こったことに、私は驚きました。学びのスピードが速かったのです。

恐らく、昼食後にカール=ヘンリック博士から「答え」を聞こうと考えていたら自分のなかで「理解した!」という感覚になるまで、もっと多く時間がかかっていたかもしれません。

ここでは、一度聞いたような話でも、そこから学ぼうという参加者の積極的な「学ぶ」姿勢がありました。さらに、先生から教えてもらうのを受け身で待つのではなく、お互いに学びあうといったソーシャルな学びが起こった結果だったように感じます。

学習できる企業って、どんな企業?

スウェーデン視察ツアーでの経験を振り返りながらいろいろ考えてみました。
「学習できる企業」には大きく2つ要素があるように思います。

  1. 学びに集中できる環境を作り出している
  2. 学び方を教えている

1つは、学びに集中できる環境を計画的に作れているかどうかです。

スウェーデンでの視察もそうでしたが、宿泊型の研修会など、学ぶ姿勢になる環境は大切です。いつもの日常業務やいつもの顔ぶれになると、どうしても思考がパターン化しがちです。そこから離れて、新しい場所、見知らぬ人など刺激を意図的に作り出せているでしょうか?

いつも社内研修が多いようでしたら、社外の公開講座や異業種交流などを活用しても良いかもしれません。

もうつは、学び方を教えられているかです。

学びが上手な人は、情報に対して謙虚なマインドを持っていると感じます。何度も聞いた話だと思っても、その時々で学びが違うという経験をした方も多いのではないでしょうか?

うまく学べない人はどんな情報でも、自分のなかに既にある枠組みのなかで理解したつもりになってしまう傾向があります。経営層や上司、先輩などの誰からでも、どんな出来事からでも「学ぶ姿勢」や「マインド」を持っていれば、「学び」の文化を創れます。

そして、それは日常のコミュニケーションのなかにも宿ります。それが、学び方を自然と修得できる「学習できる企業」になるために大切なことだと感じました。

※The Natural Stepとは
1989年スウェーデンの医学博士カール=ヘンリック・ロベール氏により創設された国際非政府組織(NGO)団体。企業、自治体、コミュニティが環境・社会経済に関する課題を認識し、持続可能な社会への解決策を見つけることに貢献している

「学習できる企業」のポイント、いかがでしたでしょうか。貴社の人材開発や組織運営のあり方をチェックする際のご参考になりましたら幸いです。 「学びの文化」を創造するためには、活発な意見交換をできるということも関連します。 そこでもう一つお勧めしたい手法に、「クリエイティブタイプ」診断があります。 「クリエイティブとは何か」に関する視点は人それぞれですが、ここでは6つのクリエイティビティを定義し、あなたの思考プロセスを分析します。 ご興味のある方は下記よりダウンロードし、ご自身の「クリエイティブタイプ」をぜひ診断してみてください。

廣瀬 沙織
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。 株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。