知らず知らずのうちに“学習される”無気力

あなたは、日々の中に「リフレッシュできる習慣」を取り入れていますか?

私は、夏場をのぞいて、運動のために2つ手前の駅から歩いて通勤しています。朝、日比谷公園を通ると、とても気持ちがよく気分がリフレッシュされます。

最初は気分の問題かなと思っていましたが、脳科学者の茂木健一郎氏の著書『脳と心の整理術-忘れるだけでうまくいく-』(PHP研究所、2012)では「歩くこと」を推奨していました。

この本には、ネガティブな経験を引きずらない2つの方法が書いてあります。

1つは「あえて、ネガティブなことを振り返ってみる」ということ。心の整理をするためには、心に引っかかっている出来事としっかり向き合うことが有効だそうです。

そしてもう1つは「何も考えずにボーッとする時間」を設けること。歩くこと、お風呂に入ることなどが実践の場としては良いそうです。

茂木さんは「歩行禅」と言って、ひたすら無の境地で歩くことを奨めています。脳の状態がアイドリング状態になり、感情や運動、記憶といった脳の中の各部位を繋ぐ中心的な役割を果たす「デフォルトネットワーク」が働き、脳がメンテナンスされる。その結果として、脳がすっきりするのですね。

人間は、マイナスの感情が蓄積されると、行動範囲が狭められる傾向にあります。最悪の場合、何もする気が起きない「無気力状態」におちいってしまうことも。そうならないためには、日頃からリフレッシュする習慣を身につけておくことが大切です。

また、「知らず知らずのうちに、無気力は学習されてしまう」ということあります。気がついたら無気力になってしまうというのは、とても恐ろしいことですね。その点についてさらに詳しくご説明しましょう。

ポイントは「褒め方」にあった

子どものころ、テストの結果が良かった時には、両親や先生からどのように褒めてもらいましたか? おおむね次の二通りに集約されるかと思います。

A:「頭がいいね!」
B:「がんばって勉強したね!」

もしその後、テストの結果が連続で悪かったとします。あきらめずに勉強を続ける可能性が高いのは、ABどちらの褒め方をされた子どもだと思いますか?

実は、勉強をあきらめずに続ける可能性の高いのは、“B”の褒め方をされた子どもです。

Aの褒め方をされると、子どもは「自分は頭の良い子ではないんだ」と学習してしまうので、「勉強しても、どうせまたダメだ」と考える可能性が高いのです。

いっぽうBの褒め方をされた子供は、「テストの結果が悪いのは、自分の頑張りが足りなかったからだ」と考え、「もっと頑張れば高い点数を取れる可能性がある」という思考になり、すぐには諦めません。

このことは、多くの認知心理学の実験で証明されています。

考え方の習慣を変えると結果が変わる

「結果」の「原因」をどう捉えるかは、その人の考え方の癖(習慣)に影響されます。

良い結果に対して「その原因は、あなたの優秀さにある」というフィードバックを繰り返すと、「結果の原因は、自分の能力の問題だ」と考える習慣が出来上がります。

すると、悪い結果の時にはその原因が自分にあると認識し、さらにその状況が長く続いたとき、「努力しても意味がない。がんばってもどうせダメで結果がでない」という考えになり、急激にエネルギーがなくなり、無気力状態に陥ります。

この状態を「学習性無気力」とポジティブ心理学で有名なセリングマン博士は言っています。

高校時代までトップの成績をとり続けて、念願の大学に入った後、そこで一番になれずに突然勉強をしなくなってしまったという事例があります。この場合、大学で一番になれなかったことは、単なるきっかけでしかなく無気力の原因の本質は入学前に身につけた「考え方の習慣」にあるのです。

アメリカの哲学者であるウィリアム・ジェームズは、次のような言葉を残しています。

心が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。

皆様は、自身の取り組み結果についてどのように考える習慣をもっていますか?

不確実性の高い環境の中で、課題にどう取り組むのか、それをどう評価するのかは自分の「考える習慣」と「上司からの言葉」によって変わってくるのです。

部下育成に効く!上司の「声がけ」のポイント

部下に「ネガティブな思考習慣」を刷り込む声がけの特徴は、次の通りです。

  • 直面している問題が、他のすべての事に当てはまるように言う
  • 悪い状況が長く続き、変わらないことを匂わせる
  • 本人が何をしても、状況が変わらないと告げる

<トーク例>

×いつもお前はそうだ
×あなたが何をやっても無理ですよ
×あなたは、優秀だから大丈夫ですよ
×あなたが何をしても、状況はそう簡単には変わらないよ
×上手くいくか、失敗するかは、運しだい(我々の能力とは関係なく)
×一時が万事だ!!
×この分だと、すべて上手く行きそうだね

反対に、部下に「ポジティブな思考習慣」を刷り込む声がけのポイントは、次の通りです。

  • 本人の努力や活動そのものについて述べる
  • 良い結果・悪い結果のどちらでも個別の問題で終わり、他には影響しない
  • 直面している状況は、長続きせず、常に変化している
  • 本人の活動によって、何らかの変化を起こすことができると告げる

 <トーク例>

○今回は、上手くいったね
○上手くいったのは、あなたの頑張りがあったからだよ
○今の状況は長続きしないから、また、チャンスはあるよ
○みんなの努力次第で、結果はついてくるよ
○これと今までの件とは、別のものだからね
○上手くいかなかったのは、やるべき事をしっかりやらなかったからだよ

あなたはどちらのトークを多く使っていますか? 部下が無気力になってしまう前に、ネガティブな方向に育成するのをやめて、ぜひポジティブな声がけを心がけましょう。

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