カナデビアグループでは、中長期的な成長と社会課題解決を両立し、全社員でサステナビリティを実現する組織となることを目指して、その拠り所となるサステナブルビジョンの制定、ロードマップおよびKPIを設定しました。この記事では、サステナビリティ推進担当役員である取締役専務執行役員企画管理本部長木村悟様のインタビューから、経営的な観点でプロジェクトの成果を振り返ります。(部署名・お役職等は取材時のものです)

成果①プロジェクトの検討時期を経営的な意思決定のタイミングと調整し、関連付けを図る

カナデビアグループでは、サステナブルビジョンやロードマップ、KPIの策定を、経営の上位概念の見直しや、中期経営計画の策定とタイミングを合わせて進めました。それにより、サステナビリティを重視する経営姿勢を一気通貫して社内外に示せるようになりました。

カナデビア株式会社取締役専務執行役員 木村様
カナデビア株式会社取締役専務執行役員 木村様

「(サステナブルビジョン策定に取り組んだ)当時は、当社の中期経営計画を策定するタイミングでもありました。2050年を目指すサステナブルビジョン、従来から立てていました2030年に向けた長期ビジョン、そして2023年から2025年の中期経営計画。サステナブルビジョンをバックキャストで策定し、それを実際に実行するための施策を中期経営計画に織り込み、2030ビジョンもサステナブルビジョンとリンクする形で見直しをしています。」

「付け加えると、同じタイミングで、経営理念やブランドコンセプトの再確認もしました。検討の結果、経営理念は変えないこととし、ブランドコンセプトはサステナブルビジョンとつながりあるものを策定しました。いろんな計画を立てた後にそこに載せていくのではなく、全てを統一して見ていくといういいタイミングになったと考えています」(木村様)

成果②サステナビリティに対する認識がひろがり、経営活動全般に関わるテーマとして組織浸透する基盤ができた

カナデビアグループでは、2021年~2023年の中期経営計画でも、水、エネルギー、社会の防災・インフラの強靭化等に取り組むことを掲げており、サステナブルビジョン策定の以前から環境分野を中心に、サステナビリティへの関心は社内にはありました。しかし今回のプロジェクトでは、サステナビリティの捉え方が拡大しました。ESGで言えば、これまではE中心であったのが、SとGを含めて課題を検討することができました。

「当初このプロジェクトを進めた時に目指したのが、(サステナビリティの特定のテーマに対する)個別の取り組みではなく、サステナビリティ全体についての社内での定着・浸透であり、それが図れたのは今回の成果です。今回策定したビジョンが、経営陣にとっての指針ではなくて、当社グループを含めた社員の皆さんにとっても指針となったのではないかと考えます。」

「また、サステナブルビジョンに対してロードマップを作りました。ロードマップは細かく3年の計画と、30年40年50年というステップまで何とか作り上げて決めています。これによってビジョンを実際にどう達成していくのかというところまで示せました。ロードマップではKPIも一生懸命定め、ビジョン達成をフォローできる体制を作ることができ、これも定着浸透を図ることにつながると考えています」(木村様)

今後の課題

①ESGのうちEやSへの取り組み強化の必要性

「サステナビリティについては、G(ガバナンス)の安全や人的資本、それから事業におけるE(環境)の部分では、我々の会社では意識的に取り組んできたと考えています。けれども、サステナブルビジョンでうたっている「人々の幸福の最大化」、ここには人権の課題、社員のエンゲージメントといった課題が含まれます。こういったことはこれまでも意識はしていましたが、当社が取り組まなければならない課題として、一層明確になりました」(木村様)

②ビジョン実現へ、取り組み状況のフォローアップ体制を確立する

カナデビアグループでは、サステナビリティ推進プロジェクトで整えた推進体制が現在も機能しています。事業本部長やグループ会社の社長といった事業責任者である方々がサステナビリティ推進委員会の委員になっており、事業推進とサステナビリティが経営として一体運営になるようにガバナンス体制の確立を目指しています。

プロジェクトでは、サステナブルビジョン実現にむけた7つの成功の柱(マテリアリティ)を定めています。

「今後の取り組み上の課題としては、成功の柱ごとに設定したKPIに対して、推進がどうなっているのか、どんな成果や課題があるのかということがこれから明確になってきます。その際に事業戦略と一体化したフォローアップの体制を作りPDCAを回していく必要があります。」(木村様)

③ステークホルダーとの対話の促進

最後に木村専務が触れられたのが、ステークホルダーとの対話、という点です。

「どのようなステークホルダーと、ということはもっと考える必要がありますが、社会に対して当社の活動をお伝えしていく。その時には、成功の柱ごとにどこまで進んでいるのかといったことも示していきたいと考えています。」

「当社では、貢献目標と責任目標、この二つをきちっと数値化していこうとしています。当社の事業そのものがカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、強靭な社会インフラ作りに貢献するものです。ですからこうした事業そのものを成長させて社会に貢献していくのが貢献目標です。そして当社の事業活動を通じて発生するCO2をきちっと削減していくのが責任目標です。」

「例えば当社では、ごみ焼却プラントを作り、プラントが運転されるとエネルギーが生成されてCO2が削減される、という貢献を生み出すことができます。こういったことを皆さんに分かりやすくお伝えしていきたいと考えています。当社の技術には、水素、ごみ焼却発電施設、メタネーションなど期待していただいているところもあります。例えば、ヨーロッパのグループには、事業拡大もですが社会的な認知も高まっていて、COP28に参画した会社もあります。この会社は再生エネルギーのひとつであるリニューアブルガス(※)の技術を持っています。当社でもこうした技術は共有していますし、気候変動に関わる技術は期待を頂いているところもあります。これからいろんな機関との対話も広げていきたいと考えています」

※リニューアブルガス:有機廃棄物の分解により生成されるバイオガスを精製して得られる再生可能なエネルギー源


カナデビアグループでは、サステナビリティ実現に向けた取り組みを経営トップが強くコミットし、さらに現場で実際に取り組むこととなる人たちの意見・やりたいことを反映しながら、推進プロジェクトを進めました。結果、組織内部ではサステナビリティについて本質的な理解が浸透し、社外からもサステナビリティへの取り組み姿勢を評価されています。プロジェクトのスタート時からサステナビリティ推進を「サステナビリティ推進部署の仕事」と思われないよう、体制をつくり、フレームワークを活用し、組織開発の視点で多くの方を巻き込み検討を進めたことが、成果につながりました。

このレポートが、サステナブル経営推進に取り組んでいる方々の参考になれば幸いです。


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