サステナブルで、安全・安心な社会の実現に貢献するソリューションパートナーを目指すカナデビアグループ。2050年を見据えたサステナブルビジョンを策定するにあたり、実現可能性を高めるために、全社レベルに加えて事業部門ごとでもビジョンとロードマップの検討が進められました。ここでは、サステナビリティ推進プロジェクトに各部門から参画した方々にお聞きした、サステナビリティの視点で未来を考えることの意義、難しさ、得られた成果をご紹介します。ご紹介するのはつぎの3つの部門・グループ会社です。

カナデビア株式会社環境事業本部
カナデビア株式会社調達本部
株式会社エイチアンドエフ

事業内容や業務内容、ステークホルダーとの関係によって、サステナビリティ実現のために必要な活動やボトルネックは異なります。この記事では、調達本部およびグループ会社の株式会社エイチアンドエフにおいて、プロジェクトによってどのような変化が業務や組織に生じているのかをご紹介します(掲載する情報は、2023年12月の取材時点のものです)。

サステナブルなモノづくり実現に欠かせない部門

カナデビア株式会社調達本部

メーカーがサステナビリティを実現するうえで、サプライチェーンの入り口である原材料や部品の調達は重要な役割を担います。日本ではまだまだ「サステナビリティ=高くつく」というイメージもあります。カナデビア株式会社調達本部服部さんに、同社ならではの課題や施策をお聞きしました。

現時点で、この規則に従えばサステナブルになれるというものはない

カナデビア株式会社
カナデビア株式会社
調達本部 服部さん

「プロジェクトに参加する以前は、SDGsやサステナビリティについては概念的な理解になっていて、実際に私たちが仕事をするときにはどういった活動になり、どうしたらサステナビリティを達成できるのか、正直分かりませんでした。プロジェクトの最初の段階で気づいたのは、現時点でこの規則に従えばサステナブルになれるというものはなく、各社がトレンドを踏まえながら取り組みをしていく必要性があるのだ、ということです。私たちが何をどこまですればいいのだろうか、情報量も多くて大変だと思いました。サステナビリティという壮大な目標を達成するために、まず今は何をしないといけないのか、その大きな目標と現在との結びつきがなかなかピタッと来ないまま、当初はレクチャーを聞いていました。」(服部さん)

サステナビリティ実現のためには多岐にわたるサプライヤーとの連携が必要

「当社では、お客様に納入する施設や装置がいわばオーダーメイドであり、お客様が求めるものによって仕様が変わり、それに合わせてサプライチェーンも変わります。事業領域が広いため、サプライヤーも多様な業種であり、中小企業から大企業まで組織規模もさまざま、サステナビリティへの取り組み状況にも幅があります。」(服部さん)
こうした環境下でサステナビリティへの意識向上をどのように呼びかけ、協力を打診するかは、難しい課題です。調達本部としては、プロジェクト開始以前から取り組んできたサステナビリティに関する取引先へのアンケートを継続すること、そしてロードマップで定めたサプライヤーに向けた調達方針の発表、ガイドブック作成などを進めています。まずは方針を明らかにし、それに基づいて理解を促し、連携を深めようとしています。

コスト・品質・納期という調達の重要指標に、サステナビリティを加え

お客様はもちろん、社内にも理解を求めていくのが最も難しいのが、コストの観点です。
「サステナビリティに配慮した製品を採用すると、必ずではないですがコストアップになることがあります。価格競争力のあるものを発注するのは、調達の大事な使命です。」

「調達本部では、設計部門や事業部門が作成する仕様書に基づいて見積もりをし、発注先を決めます。ですから、より上流の方でサステナビリティを考慮した設計や、お客様との合意をしてもらえるとより実現しやすいのです。サプライヤーさんへの協力、意識向上の働きかけは調達本部として行っていこうとしていますが、社内の事業部門との連携も重要です。当社には様々な事業があり、状況もそれぞれ異なるのが難しいところです。お客様がただのコストアップと捉えるのではなく、付加価値向上として捉えていただけるようにして、受注金額に反映できるのが理想です。とはいえ、現時点では難しいことも多く、社内でも予算を確保するなどの様々な可能性を模索しています。」(服部さん)

環境だけでなく、人々の幸福も含むのがサステナビリティ

今回、コンサルタントからの働きかけもあり、調達本部としては「想定していた以上にかなりストレッチした」ビジョンを掲げ、実現へのロードマップ及びKPIを設定しました。調達という役割の性質上、社内外のさまざまな関係者の協力が必要で、ロードマップの達成は容易ではありません。それでも、プロジェクトを通じて、サステナビリティに対する理解が広がり、取り組みへの意欲も高まりました。
「サステナビリティは環境配慮のことくらいの認識でスタートしたのですが、サステナビリティの中には幸福やウェルビーイングも含まれ、自社のことだけではなく地域や社会のことも考えないといけない、広がりを持つものなのだと認識が変わりました。コンサルタントの方とは人権やガバナンスについて議論したり、取引先アンケートの評価では質問によって重み付けを行ってはどうか等のアドバイスを頂きました。サステナビリティは社会全体の取り組みなのだと感じています」「世の中の動きは速いので、サステナビリティ推進室とも連携して情報をキャッチアップしながら、調達部門として当社のサステナビリティ向上に取り組んでいきたいと思います」(服部さん)

目指すべきところが明らかだから、自信を持ってサステナビリティに取り組める

株式会社エイチアンドエフ

次にご紹介するのは、カナデビアグループで、自動車ボディ製造用大型プレス機械を製造・販売する株式会社エイチアンドエフです。本社は福井県あわら市、国内・海外に複数の拠点を展開しています。

同社でサステナビリティ推進プロジェクトの委員を務めたのが、総務・企画部梶原さんです。

何をどこまで取り組むのがSDGs?

エイチアンドエフ
株式会社エイチアンドエフ
総務・企画部 梶原さん

「SDGsについては、広報の仕事で会社としての取り組みを発信する必要もあり、プロジェクト以前から意識にありました。とはいえ、最初に聞いた時には国連とか、あまりに枠組みが大きい話だと思っていて。会社としてCSRなど社会的に取り組まなければならないことがさまざまある中で、SDGsはどういう位置づけにあるのだろうか、という疑問もありました。良いことをしないといけないということだけれども、会社としては何をどこまで、どんな順番で取り組んでいけばいいのだろう、という気持ちはありました」(梶原さん)

サステナビリティの取り組みに明確な筋が通った

「プロジェクト開始前は、会社としてまずはできるところからサステナビリティの取組に着手するという状況でした。例えば、カーボンニュートラルの一環として北陸電力さんが提供する再生可能エネルギーを使う電力プランを導入したり、地域のスポーツクラブの支援に力を入れたりなどです。できること、目につくことから一つ一つやってみようという感じで、2050年からのバックキャストという取り組み方では全くありませんでした。」

「正直日々活動していて、どういう方向性で進めていくべきかということに結論がないまま、一つ一つの取り組みに手を付けている状況でした。やっていること自体は絶対やらないよりやった方がいいことなので、プラスだなと思ってはいたのですが、やるべきことが多い中で先が見えないまま取り組むというのには不安を感じていました。ですからサステナビリティ推進のプロジェクトが始まると聞いた時には、大変そうだという不安ももちろんありましたが、日々の疑問を解消するチャンスだとも思ったんです。」

プロジェクトではさまざまな学びがありましたが、特に印象に残っているのはバックキャストという考え方でした。日々の仕事はどうしてもフォアキャストになりがちですが、「少なくともサステナビリティに関しては、バックキャストでという話が出て、そこで整理の枠組みにちょっと1本線が通ったというか、こういう考え方、視点は教えていただいてすごく参考になりました。」(梶原さん)

プロジェクトの開始とともに、社内のサステナビリティへの意識も高まる

プロジェクトが動き出した2022年頃から、社内でもサステナビリティに対する意識が高まっていました。プロジェクトでは、役員の意思決定や、各部門が抱える課題についてヒアリングが必要なタイミングがありましたが、梶原さんが接するごとに、サステナビリティへの理解が急速に進んでいることが実感されました。特に顧客と接する部門では、SDGsについてどんな取り組みをしているかを顧客と意見交換する機会などから、ビジネス環境の変化を認識する社員が増えていました。

「例えば産業廃棄物の処分では、リサイクルを徹底して進めていくと、何もせずにただ捨ててしまっていた時よりもコストがかかってくるようなことはあります。そういう場合でも、コストはもちろん考慮すべき要素のひとつではあるのですが、サステナビリティの取組みとしてやるべきことを選択し、実施していくという方向に、経営幹部の意思決定が変わっています。」

「日々接している役員や社員の方々の意識が、5年くらい前と比べると変わっていて、むしろ私の方がためらいがあって、他部署の方から「でもそこは必要だったらやるべきなんじゃないの」と声をかけてもらうことがあるほどです」(梶原さん)

ネットワークが強化され、効果的な情報収集、アクションにつなげやすくなった

プロジェクトの副次的な効果として、社内外でネットワークが強化され、必要な情報に素早くアクセスできるようになったことを実感されています。

「個人としては、サステナビリティについて勉強し、さらに具体的な目標を立て取り組みを検討する過程で、自分の知識に深みが出ました。また、会社としての目標を立てるために、各部門の方たちとサステナビリティというツールを使って話をして、これまで自分の仕事をしているだけではわからなかったような当社の課題への認識もかなり深まりました。」「サステナビリティやSDGsの社外のセミナーには、私だけではなく一緒に取り組んだ部内のメンバーも積極的に参加するようになりました。その先で知り合った方とも連絡先を交換して、実務でも『こういうこと、どうされています?』と気軽に質問しています。」「今回の取り組みをするにあたって、わからないことはどんどん人に聞いていこうと思うようになりました。親会社さん、他社さん、それから関係団体など、ネットワークはかなり広がったと思います。」

「今回プロジェクトでの検討によって、1年ごとにやるべきことを決め、KPIを設定しています。プロジェクト以前であれば迷いながら取り組んでいたサステナビリティの活動ですが、今はロードマップを押さえていけば2050年に目指す姿にたどり着けるんだという自信のようなものがあり、日々の活動がやりやすくなったと思います。」(梶原さん)


ビジョンで見据えた2050年は、確かにはっきりと道筋を見通せる期間ではありません。それでも、科学的で信頼できる原則に基づきサステナビリティを理解して自社のビジョンを定め、ビジョンから逆算してビジョン実現のロードマップを描き、KPIに落とし込む。今の活動が、何を目指しているかがはっきりしているから、自信を持って決断できるし、取り組みに力も入る。バックキャスティングでビジョン策定したからこその変化が始まっています。

次の記事では、サステナビリティ推進の担当役員である木村様のお話から、プロジェクトの経営的成果を振り返ります。


株式会社ビジネスコンサルタントでは、サステナブルビジョンや推進計画の策定、サステナビリティの全社浸透を組織開発アプローチでご支援しています。お気軽にお問合せください。

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