Co-Laboプロジェクトは、「大人が活力を取り戻し、チャレンジする社会」を共に創る実験の場です。2026年1月より3か月間、全4回の活動を通して、パラアスリートの狩野亮さん、企業で働く皆さま、そして(株)ビジネスコンサルタントが一緒になって学び、探求します。


これまでの流れ

第1回では車椅子体験と対話を通じて、私たちの中にある「制約」や「挑戦」への思い込みを揺さぶりました。無意識に持っている前提に気付き、視点を転換する時間は、多くの参加者にとって自己を振り返る時間となりました。

第2回はオンラインで開催し、チャレンジする社会に向かうための推進力と規制力を考えました。
参加者は現在の自組織を念頭に置きながら、チャレンジする組織を実現するための推進力と規制力を整理し、現実的な課題について考えました。

第3回の概要

今回のワークショップは2026年2月27日にオンラインで実施しました。参加者それぞれが挑戦テーマを設定し、あるべき理想の姿(To-be)の解像度をあげる。そして理想の姿に近づくために、直近の1か月間で取り組む具体的なアクションを描いていきました。


ワークショップの前半では、狩野亮さんのパラリンピックでのメダル獲得に向けた挑戦ストーリーをお聞きしました。狩野さんはパラリンピックで金メダルを獲得しましたが、理想の姿を心に描いて、実現するためにどのように考え、行動したのか。その道を歩む過程で何が起こりどんなことを考えたのか。その具体的なお話は、参加者が成し遂げたいことに近づくためのイメージを膨らませることにつながりました。


狩野さんのストーリーを聞いた後には、各自で検討を深めると共に、参加者同士の対話を通して、あるべき理想の姿(To-be)を明確にしながら、アクションを具体化していきました。


狩野さんの挑戦ストーリー

狩野さんの転機となった経験

今回取り上げたのは、狩野さんが初めてパラリンピックに出場した2006年トリノ大会から2010年のバンクーバー大会までの期間です。

初めてのパラリンピック、2006年トリノ大会に出場した時、狩野さんは大学2年生の20歳でした。

代表選考前の国際大会では、11レース連続コースアウト。結果が残せておらず、本来は代表に選ばれる状況ではありませんでした。しかし、そばで狩野さんを見ていたコーチが「今の狩野をパラリンピックに出すことが必ず日本の将来のためになる」と熱心に連盟に働きかけ、代表入りが決まりました。


狩野さん御本人としては「パラリンピックに出られれば、メダルの可能性があるだろう」という根拠のない自信を持っていたと言います。しかし当時は、友人と遊ぶ時間も楽しく、たくさん食べて飲んで楽しい時間を過ごしていました。体重は今より20キロ以上多く、競技者としての練習量・からだづくりの点でまだまだだったようです。結局、初めてのパラリンピックは27位に終わりました。


自分自身が悔しい結果に終わった直後、狩野さんの感情を大きく揺さぶる出来事が起こります。それは、先輩である森井大輝選手が目の前で銀メダルを獲得したことでした。森井選手とそれを支えたチームスタッフが歓喜に沸いている様子は、狩野さんの心を動かしました。


「次は自分があの場所(表彰台)に立ちたい」

「自分を支えてくれた人たちに成長した姿を見せたい」

「たくさんの人たちを裏切ってしまった」

「今の自分では、到底表彰台には辿り着けない。こんな自分を変えたい!」


そのような強い想いが沸き上がりました。

その時のこうなりたいというビジョンは、狩野さんの行動を大きく変えていきます。

理想の姿を具体的に描くことが結果を変える

パラリンピックから帰国してすぐに取り組んだのは身体づくりでした。栄養士に相談して食事管理を徹底し、数か月でベスト体重まで減量。そして大学のスキー部のコーチにトレーニングメニューを相談し、当初週2回だった練習を、週5回・1日3部制(朝昼晩)にするなど、練習量も増やしました。変えていくこと自体が楽しく、また少しずつ成果が見え始め、滑りも変わっていきました。1年後には世界ランキングTOP10に入り、2年目にはTOP3に入るほどの成績を出すようになっていきます。やればやるだけ成果が出るという好循環が生まれ、こうした変化は、新たな推進力となりました。


挑戦は一直線には進まない

このストーリーを聴くと、右肩上がりで状況は好転していったようにも聞こえます。しかし、実際はそうではありませんでした。将来への不安、資金や競技に専念する環境の確保など、さまざまな規制力が存在していました。


特に当時パラ・アスリートにとっては、アスリート雇用という枠組みがほとんど存在せず、大学卒業後の就職先や活動資金やトレーニング環境が大きな課題でした。そこで「まずは何でもやってみないと」と、狩野さんは120社以上に経歴書を郵送したと言います。


送付した経歴書のほとんどに返事はなかったそうですが、その中の3社程度は話を聞いてくれました。そして、今も社員として所属する企業に就職。強力な応援を得ながら、次のステージへ進んでいき、2010年のバンクーバー大会ではスーパー大回転座位で金メダル、滑降座位銅メダル。そしてさらに2014年のソチ大会でついに両競技で2つの金メダルを獲得しました。


狩野さんのストーリーをお聞きして、パラリンピックでメダルを取るという目標を明確に描き、現状とのギャップを理解すること。そして、その理想に向かう過程で、何が前に進むための推進力になり、挑戦を妨げる規制力になるのかを見極めることの大切さをメッセージとして受け取りました。


ワークショップの取り組み

参加者同士の対話

後半のワークショップでは、狩野さんのストーリーを手がかりに、参加者同士で感想を共有するとともに、自分自身の挑戦について考え、対話を行いました。

対話の中では、何が人の挑戦を喚起するのか、挑戦に向かう際に周囲のサポートをどう生かすのか、また小さな成功体験を積み重ねながら前に進むにはどうすればよいのか、といった視点について意見が交わされました。


Co-Laboプロジェクトでは、世界を舞台にした大きなチャレンジだけではなく、日常の中にある小さなチャレンジにも目を向けることを大切にしています。狩野さんの経験に触れながら、そのエッセンスを自分たちの仕事や生活の中に引き寄せて考えてみること。それが、参加者にとって次の一歩を考える時間となりました。

あるべき理想の姿(To-be)を描く

続いて、自分が取り組みたいチャレンジを進めるためにはどうしたらいいかを検討しました。まずは、参加者一人ひとりがあるべき理想の姿(To-be)を明確にすることから着手しました。そして、そこに近づくためのアクションを具体化し、チェックリストを用いて、お互いに目標設定の方法をアドバイスしあいました。


小さな実験

このあと参加者は「小さな実験」に取り組みます。小さな実験とは、「もし○○をすれば、□□が変わるはず」という仮説をもちながら、変化を起こそうとする第一歩です。


ここで「実験」という言葉を用いたのは、いつ、誰と、何をするのかを決めることに加え、何が変われば効果があったと言えるのか。その観察と判定までを大切にしたいと考えているからです。その小さな実験を通して、理想に近づいていく実感が持てることを大切にしています。

今回の第3回では、次回までに取り組む「小さな実験」をそれぞれが考え、ワークショップを終えました。


Co-Laboプロジェクトは次回が最終回です。参加者それぞれの「小さな挑戦」がどのような変化を生み出すのか。このあと約1か月間、それぞれの職場で小さな挑戦を行い、その結果を次回の最終回で共有する予定です。