「溶けちゃうと、困るから!」
というコピー、とろとろ溶けていってしまうアイスクリームの動画…
アイスクリームメーカーのBen & Jerry’sのホームページで、こんなはじまり方をする地球温暖化問題の啓発のページを見つけました。アイスクリームのメーカーがなぜ環境問題?と思わされると同時に、アイスクリームのメーカーならではのメッセージの発し方に惹かれてしまいました。
(参照:http://www.benjerry.jp/values/issues-we-care-about/climate-justice

このBen&Jerry’sも、前回からご紹介しているベネフィットコーポレーション(米国における企業の新たな法人格)です。

「ビジネスを、社会やコミュニティにとって良いことをなすための“力”として使おう」という考え方から始まっているベネフィットコーポレーションは、アメリカでは現在31州で正式な法人格として法制度化されています。そしてサスティナブル経営を目指す数多くの企業が、この新たな法人格を取得しています。

・株主至上主義ではない

・企業の社会的責任を重視し、ビジネスを通して環境やコミュニティの問題解決をしていきたいという企業が、株主の意向だけに左右されることなく、中長期の視点で、様々なステークホルダーに配慮した経営意思決定をしやすくなる

といった特徴を、前回の記事ではご紹介させて頂きました。

また、米国のみならず、B LabというNGO団体による「Bコーポレーション」という認証を取得している企業は、世界中に約2,000社あります。ベネフィットコーポレーションは、持続可能な未来のために、今の社会や経済のあり方を変えたいという問題意識を持っている人たちに受け入れられつつある動きでもあります。

今回は、どのような企業がなぜベネフィットコーポレーションになっているのか、企業と社会にとってはどのような良いことがあるのかを調べてみましたので、ご紹介させて頂きます。

 企業にとってベネフィットコーポレーションになる利点とは

 企業にとって、ベネフィットコーポレーションとなる利点は次の4点に整理ができそうです。

①社会的責任を重視するミッションに基づく経営を、継続させることができる

②投資家にとって、より有望な投資先となれる

③消費者への訴求力が高まり、より選ばれる企業になれる

④従業員からの支持が高まり、定着率が上がり、優秀な人材が集まる

 それぞれ詳しく見てみましょう。

①社会的責任を重視するミッションに基づく経営を、継続させることができる

経営者が世代交代したり、大手企業に買収されたりといった、経営の根幹を大きく揺るがす状況が生しると、その企業が元々掲げていた社会的責任を重視する独自の経営方針などは、軽視され、株主の利益が優先されるといった事態がおこりがちです。ベネフィットコーポレーションは、自らの社会や環境に対するミッションを定款に明記することで、そのミッション遂行を継続できるような法的な後ろ盾を得ることができます。

アウトドア用品のパタゴニア社の創業者イヴォン・シュイナードは、ベネフィットコーポレーションになる際、次のように語ったということです。少し難しい言い回しですがそのままご紹介します。

「パタゴニアは100年つづく会社を作ろうとしている。そしてベネフィット・コーポレーション法案は、起業家が据えた価値、文化、工程、高水準などを制度化することによって、パタゴニアをはじめとした使命感に燃える会社に、相続や資本金集め、そして所有者の変換などの際にも使命を継続できるために必要な法的枠組みを与えてくれる

(引用:パタゴニアHP  http://www.patagonia.jp/patagonia.go?assetid=68413

冒頭でご紹介したBen & Jerrys社1978年の創業時から、「最高のアイスクリームを作る」「ビジネスを通じて社会に良いことをする」、そして「楽しむ・・・楽しくなくてはやる意味がないから!」を掲げているアイスクリームの製造販売会社です。米国では、以前に当サイトでご紹介をしたインターフェイス社やパタゴニア社同様に、サスティナブルで社会的使命を重視した経営の実践で著名な会社であるそうです。
このBen & Jerry’sですが、実は2010年からユニリーバが完全出資する子会社です。もともと買収時から、Ben & Jerrysがそれまで続けてきた、社会的使命を重視する経営方針を継続するという合意を得ているという特殊な例ではありますが、ベネフィットコーポレーションとなることでその地位をさらに確かなものにしています。(同社の積極的かつ楽しげな活動は、HPでも様々紹介されています。)

②投資家にとって、より有望な投資先となれる

ある調査では、サスティナビリティの観点を経営戦略に取り込んでいる企業はより効率的なオペレーションをしていて、将来への成長も有望であるとされています。

また、ベネフィットコーポレーションであるということは、より高い目標を目指して経営をしていて、第3者機関による適切なチェックを受けており、透明性の高い経営をしていることの証となります。このことも投資家にとっては投資先を判断する際の有効な情報となると言えるかもしれません。

③消費者への訴求力が高まり、より選ばれる企業になれる

日本はまだまだ少ないのが実情ですが、北米やヨーロッパは、オーガニック食品やフェアトレードへの関心が高いそうです。サスティナブルな方法でつくられた製品・サービスを選ぼうと意識する消費者は今後、更に増えていくと思われます。
そうした消費者にとって分かりやすいようにする取り組みとして、NGO団体のB LabによるBコーポレーションの認証を受けた企業は、製品に「Certified B Corporations」のロゴをつけることができます。消費者は、このマークを見て、その製品が適切なプロセスで作られ、社会的責任感の強い企業が提供するものであると判断することができるわけです。

④従業員からの支持が高まり、定着率が上がり、優秀な人材が集まる

今の20代~30代後半、ミレニアル世代にとって、働く理由として重視されるのは、より多くのお金を手にすることではありません。これは米国でも日本でも似たような傾向なのですが、代わりに、会社のミッションや働く意味、社会へのインパクトを重視する人材が増えています。このような考えを持つ人にとっても、自分の会社が利益追求だけではなく、社会の問題解決に貢献しているということは、大きな魅力になるはずです。

米国のベネフィットコーポレーションは多くの州で第3者機関による監査を義務付けられています。先ほどよりご紹介しているNGO団体B Lab によるBコーポレーション認証もそのひとつです。この認証を取ることは、容易ではありません。例えば、その取得に向けた活動を将来を期待される若手人材を中心に取り組むことで、会社の未来を積極的に考える機会になったり、変化のためのリーダーシップを発揮したり、組織へのエンゲージメントが高まったりということも期待できます。

社会的に意味ある選択をするから、魅力ある組織になれる

③の消費者と④の従業員への魅力、という点に関して、再びBen & Jerrysの取り組みをご紹介します。アイスクリームをたくさん売ろうと思ったら、おいしいことは大前提です。ですから、Ben & Jerry’s はオリジナルのフレーバー作りはもちろん、原材料にも強いこだわりを持っているそうです。

  • 一番重要となる高い品質の牛乳を持続的に仕入れるため、酪農家の支援プログラムを展開
  • フレーバーの要となる、バニラ、コーヒーなどの原材料は、2014年にすべてフェアトレードに
  • 卵はケージフリー(狭い巣箱に1羽ずついれるのではなく、いわゆる平飼い)の認証のあるものを使う
  • 雇用問題に積極的に取り組むパートナーが作る材料を仕入れる

これらは同社の取り組みのほんの一例ですが、仕入れや製造・販売という企業の行動を通じて、経済的格差を是正する、環境への負荷を減らせるといったインパクトを起こせることを意識したうえでの選択なのです。そしてそういった活動への取り組みを、社内はもちろん、ホームページやSNSなどを活用して広く世の中にもアピールすることで、おいしい+社会的責任を果たしている、というブランドの価値を高めることにつながります。

日本では「企業として環境問題に真剣に取り組んでいます」というと、堅苦しいイメージを与えてしまいがちです。しかし米国のベネフィットコーポレーションには、ご紹介したパタゴニアやBen & Jerry’sのようにポジティブで楽しいメッセージを発している企業がたくさんありました。あなたの組織の価値を高める一つのやり方として、参考にされてはいかがでしょうか。


ベネフィットコーポレーションシリーズ
1.
企業の力を社会のために使う、新たな枠組み「ベネフィットコーポレーション」とは
2.ビジネスの力で社会の問題を解決する、ベネフィットコーポレーションが選ばれる4つの理由


インターフェイス社の創業者、レイ・アンダーソンは、サスティナブルなビジネスを米国で初めて成功させた経営者です。同社の取り組みを、日本法人へのオリジナルインタビューに基づきご紹介しています。ぜひご覧ください。


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山田有佳
京都大学総合人間学部、同大学院人間・環境学研究科修士課程修了。専攻は文化人類学、クロアチアで戦災からの街の復興をテーマにフィールドワークを行う。 株式会社ビジネスコンサルタント入社後、企画営業、営業マネジャーを11年。現在はサスティナブル経営を目指す企業やそこで働く人たちに向けた情報発信や能力開発プログラムの開発を担当。サスティナブルな選択をするビジネスパーソンが一人でも増えることを目指している。