会議資料はパソコンできれいに、だけではない

会議はやり方次第で楽しくもなり、組織の活性化につながる、なんて聞いたら、そんなうまい話があるはずない!と思う方も多いかもしれません。たくさんの情報を下調べして、時間をかけてきれいな資料を作って、いざ会議の場で皆に配っても、あまり反応が返ってこなかった、、、なんていう経験をされている方も多いでしょう。
実はこれまで、当社のコンサルタントたちも、研修会のワークシートや、プロジェクト会議の資料はパソコンできれいに作るのが当たり前と思ってきました。ところが、自分たち自身でこのグラフィック・ファシリテーションを体験してみて、また実際の研修会やプロジェクト会議にグラフィック・ファシリテーションを持ち込んでみて、真面目・きれいなだけの書面やワークシートとは全然違うエネルギーが出てくることに驚いています。

前回までは、グラフィック・ファシリテーションのやり方や進め方をご案内してきました。今回はもっと具体的な活用場面をご案内します。グラフィック・ファシリテーションの使い方について、さらにイメージを深めて頂ければ幸いです。

①困難なプロジェクト会議で、メンバーの相互理解を深め、合意形成を促進

自社の将来ビジョンを考えたり、サステイナビリティについて考えたりすると、話し合うべき項目も多く、どうしても議論が長引きます。なかなか結論を出せないうちに、どんな意見がこれまでに出てきたのか忘れてしまった、あの時の〇〇さんの発言はどんな意図だったんだろうか、と、参加者がバラバラの理解をしていては、良い合意形成をすることができなくなってしまいます。

そんな時にも役立つのがグラフィック・ファシリテーションによるレコーディングです。

あるメーカーでは、30年後を考えたサステイナビリティのビジョン作りに取り組みました。プロジェクトメンバーは経営企画・人事・開発・製造・営業と様々な部署から集まった10名ほど。もともと話し合い好きの社風もあり、議論はとても活発に進むのですが、意見があちこちに飛び、なかなか合意形成に至れません。
このプロジェクトでは、コンサルタントが進行を進めるのに加えて、すべてのミーティングでグラフィック・ファシリテーションによるレコーディングを行いました。

「一旦休憩して、ここまでの議論を振り返ってみましょう」コンサルタントが案内をし、グラフィックを担当したスタッフから、完成したグラフィックを掲示します。ここでただ見せるだけではなく、「ここまでの議論ではこんな反応が起こっていました」「ここでは、こういう意見が出ていたように聞こえました」と議論の様子についても解説をします。

「すみません、そこの私の発言の意図は少し違って、こういうことを言いたかったです」
「〇〇さんのここでの発言、その時は深められなかったですけれど、すごく参考になりそうです、もう一度説明してください」
「この意見でみんながなるほどと腹落ちして、すごくいいなと思いましたね」

こんなやり取りを繰り返すことで、文字だけの議事録とは比べ物にならないほど深いレベルで、皆が共通の理解を深めながら段階的に結論を出し、最終的には自信を持って、社長に「サステイナブル・ビジョン」を提言することができました。

②新しい制度・仕組みのスタートにあたり、当事者の理解を深める

新人事制度の浸透は、いつでもどんな組織でも、難しい取り組みです。特に、現場の社員が日頃たくさんの書類に目を通すことが少ないようなサービス業の組織では、説明するより前に、人事制度のマニュアルや説明資料そのものに対してアレルギー反応が起こりがちです。
そこでコンサルタントが一工夫し、管理職の方々に対して、グラフィックで新人事制度の進め方を説明しました。

%e3%82%a2%e3%82%b8%e3%82%a7%e3%83%b3%e3%83%8002

そうした途端に、

「この時は、私が先に書類を書けばよいのでしょうか?」
「この面談はいつやればいいんですか?どうやって部下の予定を調整したらよ
いですか?」
「この部分は、部下にはどうやって説明をしたらよいですか?」

等々の、具体的な質問が次々に出てきました。
管理職の方々からは、「絵で見たら、何をしないといけないのかすぐにイメージがついた」「今まではこういうことに対して、何を質問したらよいのかもわからなかったが、グラフィックで進め方を見て、質問もしてよいんだと思えた」という声が多数聞かれました。新制度への管理職の巻き込みが順調に進んだのは言うまでもありません。

③研修会で、参加者同士の率直なコミュニケーションを促す

ある老舗企業での若手社員研修でも、グラフィックを用いたワークシートを活用しています。
様々な研修会で定番の、「受講者同士の相互フィードバック」。受講生がグループになって、あるいはペアを組んで、実習等に協働して取り組む中で気付いた「相手の気になるところ」「相手の良いところ」をお互いに伝え合う実習です。
この実習は、参加者が率直に伝え合うことが重要なのですが、余計な気遣い・遠慮から、深いフィードバックができないということも起こり得るのです。そこでこの研修会では、こちらのようなワークシートを提示しました。

20161114135131134_0001

すると、それまでのシンプルなワークシートを使っていた時とは比較にならないほど活性化したフィードバックができるようになりました。

img_3325-1

ペアに対して、ほんの15分ほどでカラフルで充実した内容のシートを書き上げてしまいます。「絵だと、カラフルでかわいらしさもあり、少しいいずらいことも気兼ねなく伝えることができる。」というのが理由でした。また受け取った側も「自分のためにこんなに書いてくれるんだ」ということで、フィードバックされた内容を長く覚えていられるそうです。

④報告会でのグラフィック・レコーディングの活用

ある中堅メーカーでは、次世代の経営幹部候補育成のための研修プログラムを展開しています。
約半年続くプログラムの最後は、自分たちが考えてきた10年後の会社のビジョンの、役員へのプレゼンテーション(報告会)です。
実はその報告会が、事務局の悩みの種でした。「うちの会社の役員は、どうしても真剣に聞くがゆえに、厳しいコメントばかりになってしまう。せっかく半年取り組んできた受講生も、それでやる気を失ってしまわないか…」。そこで、今までのような、受講生が一方的に報告し、役員からコメントをするという形式をガラッと変えて、グラフィック・ファシリテーションを活用した全く違う進め方の報告会にしました

具体的には以下のような進め方です。

1.コンサルタントからこれまでの取り組みや学習内容や成果を、役員に対して説明。
2.受講生がプログラムを通じて検討してきた、当社の10年後のビジョンを発表。
3.コンサルタントがファシリテートし、役員と受講生がチームになって、ビジョン実現のために今後なすべきことを対話。対話に先立ちコンサルタントから、「対話のルール」を説明。
4.各チームの対話の様子を、グラフィックでレコーディング。
5.レコーディングを担当したスタッフから、そこで話されていた内容、経緯、そして対話のやり方や雰囲気について指摘をする。
6.指摘を踏まえて、役員・受講生が感じた事を率直に話す。

この進め方で報告会を行ったところ、受講生からも役員からも、満足する声が多く出ました。成功の秘訣は、次の観点です。

・コンサルタントがあらかじめ、対話のルールを皆に説明していた
・グラフィックで対話の内容だけでなく、気持ち、感情のやり取りを可視化した
・一方的な報告と批評ではない、皆が参画できる場づくりをした
・対話に集中できるよう、この場で何が話されたか?をグラフィックで記録した
・グラフィックを記録のために活用するだけでなく、対話の質を高めるために、途中で適切なフィードバックのために活用した

対話の目的を考え、参加者の特性や場の雰囲気を考慮し、綿密に「話し合いのプロセスを編む」ための準備をしたことが、参画した全員が満足できる結果をもたらしました。

前回の記事で、「グラフィック・ファシリテーションはあくまでツールである」とご案内したのは、こういう意味からです。日ごろの会議の雰囲気を変えるために「まずやってみよう」という姿勢ももちろん大事ですが、会議やミーティングにおける対話の質を変えるということに注目すると、この手法をどう活用すべきか、ほかに取り入れるべき手法や準備はないか、というように考えが広がることでしょう。

絵やアイコンを使った新たなファシリテーション手法、グラフィック・ファシリテーションについてご案内してきました。豊かな話し合いの場を生み出し、参加者のやる気や一体感を高めるのにとても威力を発揮する手法です。ぜひ皆さんの組織でもご活用ください。


私たち株式会社ビジネスコンサルタントは、組織開発の一助としてグラフィック・ファシリテーションを活用しています。グラフィック・ファシリテーションをプロジェクト等で活用されたい、研修会でやり方を学習したいと思われる方はgbgp@bcon.co.jpまでご連絡ください。


【グラフィック・ファシリテーションシリーズ】
会議が楽しくなる最新ファシリテーション手法とは_①
会議が楽しくなる最新ファシリテーション手法とは_②
③会議が楽しくなる最新ファシリテーション手法とは_③


グラフィック・レコーディングの具体例のご紹介です。サステイナビリティ経営で競争優位を気づくための、ビジネスモデルの考え方や組織つくりにポイントを、グラフィック・ファシリテーションを使いながらeBOOKにまとめています。ぜひダウンロードしてご覧ください!





新規CTA




八木真知子
中央大学 経済学部を卒業後、ビジネスコンサルタントに入社。 人材マネジメントに関わる分野を中心にコンサルテーションを行っている。 人事制度の定着や実践、働く方々のモチベーションを探索している中で、対話型OD、Art of Hosting、グラフィック・ファシリテーションと出会い、組織開発と制度設計の融合をキーワードに、日々活動している。 休日は市民オーケストラでビオラを弾き、ダイバーシティな組織の運営を学んで いる。