あるセミナー会場で、とても斬新な「議事録」を作成するところを見ました。大きな模造紙に、講師が話す内容をイラストでどんどん描いていくのです。90分も話すとそれは模造紙10枚ほどになり、休憩時間に壁に長く張り出されました。その様子だけで、圧巻です。すると受講者たちがその前で、「ここでは自分はこう思った」、「あ、ここはそういうことだったのか」、とコーヒーを片手に自然と会話が弾み出しました。

これが、グラフィック・ファシリテーションです(冒頭の画像がその一例です)。以前の記事でも、この手法を取り入れてご案内したこともありました。この手法のすごいところは、

1.全体像がわかりやすく伝えられる
2.親しみがあり、参画しやすい
3.エネルギーが引き出せる
4.印象・記憶にのこる

ということで、今までの会議やミーティングをガラッと変えて、参加者の参画を引き出してくれる可能性のあるところです。
実は最初に「議事録」とご紹介しましたが、この手法は、従来の文字だけの議事録とは全く異なるパワーを持つ、新たなファシリテーション手法なのです。
今注目の、グラフィック・ファシリテーションについてご案内します。

グラフィック・ファシリテーションって何ですか?

グラフィック・ファシリテーションとは、プロジェクトや会議の場で、文字情報だけではなく、絵、アイコンや色を用いて資料や議事録などを記載する手法です。何が起こったか、何が話し合われたか、発言内容だけではなく、文字や文章で表現しにくい「雰囲気」や「気持ちの変化」、「感情のやり取り」などを簡易なアイコンや図にして、構造化します。つまり、皆さんの考えや思い、その場で起こっていることを分かりやすく可視化して、共通理解の促進や当事者意識の啓発を図る手法です。

どうして絵を使うの?

「絵」などのグラフィックという表現方法は、多様なメンバーで構成されるチームに、共通の理解を促す時に力を発揮します。たとえば目の前で起きている議論や情報を、言葉や文字だけで理解するのではなく視覚からも落とし込むことで理解が深まることが期待されます。また「なんとなく腹落ちしない」といったもやもやした感じや、「このアイディアすごく良い!」と盛り上がった瞬間など、言葉になる前の思考や概念をも絵で示すことができます。理解が深まり、議論が活性化することで、意味のある合意形成が期待できます。

グラフィックファシリテーション例

当事者意識につながるって、本当?

議論や会議の場で起きている真実は1つではなく、人によって解釈や受け止め方が異なるものです。描かれた絵に対して「先ほどの自分の発言はそういう意図で言ったんじゃない」、「ちょっと違和感がある」と意見が出ればこれはチャンスです。Aさんはこう解釈しましたけれど、他の方はいかがですか?もっと良くするためにはどう書いたらいいですか?と参加者と絵を指さしながら議論を進めることができるからです。日本の文化では黙って人の話を聞くことが尊重されます。しかし聞くだけの会議と、発言が絵になり、その絵を見ながら議論を進める会議を比べると、話の全体像を理解したり、自分や他の参加者の発言の真意を理解することが容易になります。どちらが当事者意識が高まるでしょうか?
グラフィック・ファシリテーションを活用した研修では、参加者自身も椅子から立ち上がり、ペンをとって直接書き込んで頂く事もあります。文字通り口先だけでなく、手も、足も使って議論に参加することを支援するツールがグラフィック・ファシリテーションなのです。

どんなシーンで活用したらよい?

グラフィック・ファシリテーションには、グラフィック・レコーディングとグラフィック・コミュニケーションという、大きく2つの使われ方があります。「記録」と「伝える」ためということになりますが、それぞれ、グラフィックであるからこその活用のポイントがあります。

グラフィックファシリテーションの分類

1.グラフィック・レコーディング

グラフィック・レコーディングとは、会議やミーティング、講演会などの議事録を、その場で絵を用いて描いていくことです。内容・進行などの『コンテント』だけではなく、討議の様子や雰囲気などの『プロセス』を記録します。繰り返しになるようですが、この、通常は文字化されにくい部分であっても大切だと感じた点は積極的に表現していくことが大事なポイントです。発言者は、思っていることのすべてを言葉にしては語れていないかもしれません。みんなのことばの背景にあるものを少しでも引き出すためにグラフィックを使うのです。だからこそ、文章の議事録を読むのと異なり、一目で状況がつかみやすくなります。

グラフィックファシリテーションの様子

2.グラフィック・コミュニケーション

グラフィック・コミュニケーションとは、会議などでの配布資料、情報伝達のためのポスターなどを、絵を用いて作成することです。難しい内容を分かりやすく伝えたり、参加者の巻き込みを図ったりしたいときに非常に有効で、注目されやすく、参画意欲や創造性を引き出します。私たちの社内のあるプロジェクトでも、報告の際にグラフィックコミュニケーションを活用してみました。きれいにパソコンで箇条書きされた掲示物を見るよりも、議論したメンバーの熱意や思いまで感じられて、熱心に読み込む人、そして読みながらお互いに会話をするメンバーがたくさんいました。

グラフィックコミュニケーション例

さて、次回の記事では、それぞれの種類のグラフィック・ファシリテーションの使い方や実践方法について詳しくご案内します。お楽しみに!

 

(記事作成協力:一般社団法人サスティナビリティ・ダイアログ代表理事/Art of Hosting Japan 世話人 牧原ゆりえ様)


【グラフィック・ファシリテーションシリーズ】
①会議が楽しくなる最新ファシリテーション手法とは_①
会議が楽しくなる最新ファシリテーション手法とは_②
会議が楽しくなる最新ファシリテーション手法とは_③


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八木真知子
中央大学 経済学部を卒業後、ビジネスコンサルタントに入社。 人材マネジメントに関わる分野を中心にコンサルテーションを行っている。 人事制度の定着や実践、働く方々のモチベーションを探索している中で、対話型OD、Art of Hosting、グラフィック・ファシリテーションと出会い、組織開発と制度設計の融合をキーワードに、日々活動している。 休日は市民オーケストラでビオラを弾き、ダイバーシティな組織の運営を学んで いる。