あなたの会社にはどのような「共通語」がありますか?しっかりした組織文化を確立している組織には、必ずその価値観や考え方を反映した共通語が存在しています。文化がことばを作り、ことばが文化を強めるのです。

北海道コカ・コーラボトリング株式会社様は、「あの会社っていいね!」の評判を高めるCSR活動に取り組むことが、地域住民や観光客から「選ばれる」会社であり続けるための経営戦略の一環となっています。前回の記事では、同社のCSR部門としては最初から無理なマインド醸成をしようとは試みなかったことをご紹介しました。皆が参画しやすく、その気になりやすい仕掛けを作ることが大切さだということです。今回は、同社でどのように、新たな文化が根付いて、社員の言動が変わっていったのかをご紹介します。

スタート当時の会社の様子や取り組みについて、元CSR担当で現在常勤監査役の上島信一様にお話を伺いました。(聞き手/株式会社ビジネスコンサルタント コーディネーターコンサルタント 内藤康成)

自ら動く社員たちが増え、「選ばれる」が共通語に

大通公園の清掃もまた、社員たちの自発的な行動で始まり、今では他の会社の社員たちも参加して続いている活動です。
これはもともと、いわゆる「タバコ部屋での会話」から始まった取り組みでした。

「自分たちは転勤で札幌に来て、小さな町では活動ができていたのに札幌では何もできていない。札幌で何かできないだろうか。」という話から始まり、観光地札幌の象徴である大通公園の清掃をやってはどうかと盛り上がります。「毎回実施したアリバイを残すために集合写真を撮ろう、「集合」写真だから最低2人が映って1人が撮る、だから最少催行人数は3人だ」として、やってみようということになったのです。

市役所に話をして、毎週土曜日の清掃活動をスタート

「この時はまだ評判という言葉は使っていませんでしたが、きっと自分たちが頑張っている姿を見て、誰かがコーラさん頑張っているなと思ってくれるのではないかと考えていました。そこでまず「私たち、大通公園のゴミ拾いをします」と宣言をしに、札幌市の市民まちづくり局長のところに行きました。うさんくさい集団がウロウロしていると見られても困るので、この区間のこういう時間帯でゴミ拾いをするということを、ちゃんと届けに行こうと。全員ブランドの「コカ・コーラ」と書かれたビブスを着て、うさんくさい集団ではないことを街の皆さんにお伝えしながら、公園の清掃活動をします、と。」(上島さん)

「清掃活動はいつやるんですか」という市役所の担当者からの質問に対して、「6789月の観光シーズンの毎週土曜日です」と答えると、驚かれたそうです。「たくさんの企業が清掃活動をやってくれますけれど、全部イベントで、年1回です。本当に毎週ですか?」という反応でした。

最少催行人数を割っても、清掃を続ける社員がいた

毎週ということで始まった活動でしたが、一切参加する社員に強制力は働かせずになんとか1年目はやり遂げます。しかし2年目ともなると、仕事優先になり参加者が減ってしまうこともありました。

「ある朝、私も遅れて参加すると、どうも集まっている様子がないんです。夏はイベントが多い商売なので、まあ、こんなこともあるかなと思って見ていたら、ビブスを着た社員が2人歩いているんですよ、2ブロック先。私は3人が最少催行人数だと言っているのに、2人で歩いているんです。泣きそうになりました。誰も見ていないのだから、帰ったっていい、誰にも何も言われる筋合いはない。なのに彼らはゴミ拾いをしていたんですよね。そして、更にまた嬉しいのは、ビブスを重ね着していたんです。次から絶対誰か来ると思っているから。1人来たら1枚脱いで渡して。結局あの日はなんだかんだ言いながら、5人、6人、後から合流してきました。」

私は、CSRは良い社員を作ると言っています。皆勤賞の社員もいて、私はその彼の名前を意識して出していて、俺のヒーローだ、と話しています。

cleanaactivity

大通公園の清掃活動も、「サタデーGOMIひろいフィーバー」として、様々な企業から参加者の集まる活動に広がっています。

活動を通して、会社の評判につながることを意識しだす

「たぶんほとんどの参加者が、誰かしらから「ありがとう」と言われているはずなんですよ。おはようとか、声かけられたり、声をかけたりしているんです。大通公園のとうきびワゴンの女性たち、清掃局の人たちに話しかけられたり。お子さんを連れた若いお母さんからありがとうございますって言われたり。おじいさんから、横断歩道の真ん中で最敬礼されたりなんかしてね。皆、「いや、まいったな」なんて言いながら、頑張れているんです。」(上島さん)

途中から、なんとなく、広告や評判ということを意識し出したそうです。「私もよくカメラを持っていて、それから会社の広報の者が来て、撮影したたこともありますが、信号待ちの時に、短い時間でパッと従業員並べさせて、写真を撮ったりするときもあります。コカ・コーラのビブスを着た人間が信号待ちで10人並んでいたら、広告ですよね。」

活動を通して、自分たちで感じ始めるんですね、そういうことを表現できていることを。だから、最初から言っているように、下心のCSRと言えば、そうです。結局「選ばれるためにどうするか」という話ですから。」(上島さん)

社員みんなが「選ばれる」を使いだす

今では、「選ばれる」というのは同社の共通語になっています。

「会社では営業活動発表会を毎月やっています。成功事例も失敗事例も含めての発表会で、社員のプレゼンもよくあります。その中で最近、「選ばれる自販機にします」とか、「選ばれる営業所になりたい」とか、「選ばれるなんとか」ということが普通に出てきて、今では共通語になってしまいました選ばれる仕事をしたいということを、多くの社員が普通に言ってくれるようになりました。例えば普通に他社と提案でぶつかった時もそうです。競合とどちらが選ばれるかという話です。選ばれる、選ばれないであって、お金じゃないという話です。」(上島さん)

このように自然と言葉に出てくる、ということは、その考え方がもはや無意識の信念として、組織文化に組み込まれていることを意味します選ばれるための戦略を、経営幹部だけが考えるのでもなく、CSR推進室が考えるのでもなく、社員一人一人が考えている。いまの北海道コカ・コーラボトリングは、北海道という、ある意味で限られたマーケットにおいてこの先何十年も持続可能な発展をし続ける会社であるための変革を遂げてきたといえるでしょう。

持続可能な発展のために、企業ができること

最後に、これまでもご紹介をしたことのある、ナチュラル・ステップの「持続可能性原則」の観点で北海道コカ・コーラボトリングの取り組みを見てみましょう。

持続可能な発展のための原則

まず持続可能な発展とは、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすこと」です。これを読んだだけでは具体的にどうすることかはすぐには分かりません。NGO団体「The Natural Step」(以下、ナチュラル・ステップ)の創設者カール・ヘンリック・ロベール博士らが示した持続可能性原則が、具体的なアクションの指標として活用できます。ナチュラル・ステップは、スウェーデン発祥で、世界各国で、企業や組織の持続可能な発展に向けたイノベーションの支援をしているNGO団体です。

Ⅰ自然のなかで地殻から掘り出した物質の濃度が増え続けることに加担しない
Ⅱ自然のなかで人間社会が作り出した物質の濃度が増え続けることに加担しない
Ⅲ自然が物理的な方法で劣化することに加担しない
Ⅳ人間が自らの基本的ニーズを満たそうとする行動を妨げる障壁が存続し続ける状況に加担しない

Ⅰ~Ⅲは自然環境システムに関する原則、Ⅳは社会システムに関する原則です。そしてこの社会システムの原則は、①人間の健康・②影響力の行使・③能力の発揮・④公平性の担保・⑤意味や意義の追及という側面に分かれています。(持続可能性原則について詳しくご覧になられたい方はこちらからどうぞ)

※「加担しない」とは、組織として
・今行っていることでこの原則に反するような活動は減らしていき、最終的には完全に撤廃すること
・これから意思決定をする場合は、この原則に反するやり方では行わないこと
2つを表しています。

北海道コカ・コーラボトリングと4原則

自然環境システムの原則について、本記事では詳しいご案内はできていませんが、北海道コカ・コーラボトリングでは、水資源の保全及び使用量の削減、工場からの廃棄物の削減、省エネルギー等に取り組み、すべての事業活動を通じて環境負荷を軽減するマネジメントシステムを確立しています。

今回の記事でご紹介した活動は、この社会システムの原則から見ると、雪かきや子供の安全の見守り、大通公園のゴミ拾いや災害時の飲料水の提供は①人が健康であることの原則に、そして社員の自ら動くに任せた活動の在り方そのものが②影響力の行使、③能力の発揮、④公正性の担保、⑤意味や意義の追及、に関連してきます。釧路のアイスホッケーを応援するための自動販売機を通じた寄付は、地域の大人や子供を巻き込んで②③を実現しているといえるでしょう。

今回は、「選ばれる」会社であり続けるための経営戦略を、CSR活動という切り口から具現化している北海道コカ・コーラボトリングの取り組みから、サステイナブルな企業活動の在り方について学びました。本情報が、サステイナブル経営を推進したい、取り組んでいきたいと考えている皆様の一助となれば幸いです。


【北海道コカ・コーラボトリング株式会社について】
商 号 :  北海道コカ・コーラボトリング株式会社 HOKKAIDO COCA-COLA BOTTLING CO.,LTD.
設 立 : 1963124
代表者 : 代表取締役社長     佐々木  康行
事業の概要 :北海道を販売地域として、清涼飲料の製造及び販売
URL:http://www.hokkaido.ccbc.co.jp/


【上島 信一(うえしま しんいち)様】

1951年 釧路生まれ1973年  同社入社
2004年  経営企画室長
2005年  CSR推進部長を兼務
2007年  執行役員 広報・CSR推進部長
2008年  執行役員 法人営業部長
2011年  執行役員 広報・CSR推進部 CSR専任担当
2014年  同社常勤監査役(現在に至る)


【サステイナブルな未来を創るためのCSR活動 シリーズ】
1.サステイナブルで地域密着型のCSR活動_北海道コカ・コーラボトリング①
2.サステイナブルで地域密着型のCSR活動_北海道コカ・コーラボトリング②
3.サステイナブルで地域密着型のCSR活動_北海道コカ・コーラボトリング③


ご紹介した4原則をビジネスにおいてどのように実践したら良いのか、より詳しくご覧になられたい方はぜひこちらのeBookをご参照ください!
サステイナブル経営の実現の仕方を、IKEAやVOLVOのボードメンバーを務めた北欧の実践者たちの、体験談のご紹介です。


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山田有佳
京都大学総合人間学部、同大学院人間・環境学研究科修士課程修了。専攻は文化人類学、クロアチアで戦災からの街の復興をテーマにフィールドワークを行う。 株式会社ビジネスコンサルタント入社後、企画営業、営業マネジャーを11年。育児休業から復帰後、WEBマーケッターとしてのキャリアをスタート。聞きなれないIT用語と格闘しつつ、サステイナブルな未来につながる選択をしようという人が増えるためのメッセージの発信を目指している。