あなたの組織では、なぜわが社がCSR活動に取り組むのか、社員に理解されていますか?活動内容とその意義は、社内外のステークホルダーに十分伝わっているでしょうか?
今回は、CSR活動に取り組む意義が社員に浸透し、そしてその活動が自社の枠を超えて地域に繋がりをもたらしているというケースを、ご紹介します。

北海道コカ・コーラボトリング株式会社様は、長年の地域に密着したCSR活動で評価されている企業です。CSR活動で「あの会社っていいね!」の評判をあげ、それがめぐりめぐって会社の売り上げにもつながっていくというストーリーで、社員が活動の意味合いを理解し、さらに活動に参画していく循環をつくっています(前回の記事はこちら)。

スタート当時の会社の様子や取り組みについて、元CSR担当で現在常勤監査役の上島信一様にお話を伺いました。(聞き手:株式会社ビジネスコンサルタント コーディネーターコンサルタント内藤康成)

地域貢献は、皆で寄ってたかって

前回の記事では、北海道コカ・コーラボトリング上島さんの、「企業は社会システムの一つである」というお考えを紹介しました。同社では、企業が地域社会の一員であることと、地元にいる企業であるからこそできること、の2点をCSR活動で強く意識しています。例えば災害時、本社が東京の会社となると、現地が見えないからすぐ動けないことも多い。一方で本社が北海道ならば、日頃営業活動をしていることで、地域の状況がすぐに分かるから、担当者からの詳細の報告がなくてもすぐに組織的に動く判断ができます。
また、そもそも企業は労働力の集まるところです。日頃から組織でことを進める訓練がなされているから、その組織力を発揮することで地域社会に貢献できることがたくさんあるはず、と考えています。

自社だけではなくて皆が主体の活動へ

この考えを進めながら、5年ほど経つと、上島さんらはCSRレポートが自慢話レポートになっている、ということに気づきます。「CSR活動」と言っているうちは、「自分の会社(Corporate)」の話をしているにすぎないのではないか、ということです。一つの会社で頑張るのではなく、企業間でもっと連携する体制をつくらないと本当に地域を応援する活動はできない、という考えに上島さんらは至ります。
様々な利害関係が発生してうまく進まないことも多い企業間の連携も、最初は「CSR」ということで声をかければ分かりやすく、動きが出て来やすい。しかし最終的にはCSRCCorporate)は取って、自分の会社の話をするのではなく、みんなが主体になって、「皆で寄ってたかって」「SR(Social Responsibility)」の話にすることが大事だと考えています。

この考えが結実した取り組みの一つが、「チーム北海道」として複数企業が連携して展開している、雪かきボランティアです。2011年の東日本大震災を踏まえて、何か地域に対してできることはないかを考えると、北海道の天災はまさに雪害。その支援として、高齢者など雪かきが困難な家々へ、ボランティアで雪かきをしています。
この取り組みで特筆すべき点は、
「自社だけでやっていてはいずれ活動を持続することは難しくなってしまう、しかし災害援助はサステイナブルに毎年やり続けなければ意味がない、途中でやめてはかえって評判を落とす。」
ということで、同社だけで取り組むのではなく、同じく北海道に拠点を置く企業と連携する体制を作ってしまったことです。ここにも「皆で寄ってたかって」北海道を盛り上げようという考えが反映されています。

雪かき1

雪かき2

マインドを醸成してから仕組みを作っていたら100年かかる

CSRマインドは醸成するもの?

「CSRマインドを醸成するぞっていうのは考えませんでした。たぶん、マインドを醸成して仕組み作って、となったら100年かかる。もう外堀を埋めるんですね。」(上島さん)

全社レベルでのCSR活動として同社に根付いているのが、子供の見守り活動です。前提としているのは、『子どもの安全を守れるのは大人しかいない』、という考えです。ルートカーなどの社用車に子どもの安全を呼びかけるステッカーを張り、もし運転途中に事故に遭った子供を見かけたりしたら、救助する手順までをマニュアル化し、全社で取り組んでいる活動です。

「CSRを始めた時に何か役に立つことをしないといけないと思っていました。その時知っていたのが、近畿コカ・コーラボトリング(現:コカ・コーラウエスト株式会社)が、兵庫県警の依頼を受けて、地域の安全について啓蒙することを目的に、子供110番みたいなステッカーをルートカーに貼る活動をしているということでした。これはいい、まずは貼るだけで始められると。」

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皆がその気になれる仕組みを作る

「私たちは、「これから子供たちの見守りを応援する活動を始めます。子供の安全というのは、大人しか守ってあげられないんだ。」ということをちゃんと社員に伝え、活動につなげるためのマニュアルも準備しました。もし子供たちの事故に遭遇したらどういう手続きを踏んだら良いのか。まず自分の所属している部署に連絡して、「今こういう事故に遭遇して、警察が来るのを待っている」といった状況を報告する、といった内容です。マニュアルをすべての社用車に載せて、わりと大きめのステッカーを貼り出し、全事業所で警察の方を呼んでミーティングをしました。」

「そうすると、「コーラさんすごいね」って、周りの人たちから褒められ始めました、特別何もしていないのに。そう言われると、今度は社員みんながだんだん何かしている気になってきたんですね。これは今思うと、良いスタートを切れたなと思います。みんながその気になってきて、すると、やっぱり転んだ子供を車止めて助け起こしたりといったことをする社員が、どんどん出てきて、たくさん報告が上がってくるようになりました。」(上島さん)

この取り組みは、今では道内の様々な企業に広がっています。というのも、同社だけで独自に取り組むのではなく、行政、教育委員会、北海道警察といったステークホルダーとも連携をし、北海道の「赤レンガチャレンジ事業[1]1号」として活動をスタートしたためです。自社内の取り組みにせず、北海道の行政も関係する取り組みの一環とすることで、社員の自信につなげようという意図からでした。

「結局、マインド醸成しようとすると、たぶん本当に相当な時間かかると思っています。それよりは、ある意味外堀を埋めてく。実際の活動をしていく中で、例えばたくさんの人たちから「コーラさんすごいね」と言われる。そうして褒められることがエネルギーになって、みんなのやる気が高まる、というのが最初は大事だと思います。外の人たちからも褒めてもらえる仕組みを、どう作るかということですね。」(上島さん)

CSRは良い社員を作る

仕事中の同社の社員が車を止めて、倒れている子供を助ける場面を目撃した一般の方から、「おたくはどんな教育をやっているんですか?」というお褒めの手紙をもらう。子どもの安全だけではなく、足元がおぼつかない様子で歩いている高齢者の方が歩いていると、運転中でも注意を払って、転んでしまったら手助けをする。この取り組みを通じて、様々に社員の行動が変わっていきました。

講演会などで、「CSRをすると、会社にはどんなことが起こりますか」と質問されると、「CSRは良い社員を作ります」と上島さんはお話されています。最初から、育てよう、マインドを変えようとするのではなく、テーマを決めて取り組みをスタートして、活動しやすい仕掛けや環境を作る。なるべくなら会社の外の人たちの目に留まって、声をかけてもらえるように。そうすると、社外の人たちから褒められて、さらに社員の行動が促進されて、だんだん意識が変わって、組織の文化に根付いていく。これはまさに新しい文化の創造のプロセスだと言えます

さて、次回はこの「文化の創造」のプロセスについて、北海道コカ・コーラボトリングで何が起こったのかをご案内します。どうぞお楽しみに。

[1] 赤レンガチャレンジ事業とは、北海道が推進している、通常の予算事業だけではなく、例えば人材や施設などの「資源」、あるいは情報発信やネットワークといった「機能」を有効に活用し、特別な予算を使わずに、様々な行政課題の解決や道民へのサービス向上を図ろうとする取り組み(北海道庁HPより)


【北海道コカ・コーラボトリング株式会社について】
商 号 :  北海道コカ・コーラボトリング株式会社 HOKKAIDO COCA-COLA BOTTLING CO.,LTD.
設 立 : 1963124
代表者 : 代表取締役社長     佐々木  康行
事業の概要 :北海道を販売地域として、清涼飲料の製造及び販売
URL:http://www.hokkaido.ccbc.co.jp/


【上島 信一(うえしま しんいち)様】

1951年 釧路生まれ1973年  同社入社
2004年  経営企画室長
2005年  CSR推進部長を兼務
2007年  執行役員 広報・CSR推進部長
2008年  執行役員 法人営業部長
2011年  執行役員 広報・CSR推進部 CSR専任担当
2014年  同社常勤監査役(現在に至る)


【サステイナブルな未来を創るためのCSR活動 シリーズ】
1.サステイナブルで地域密着型のCSR活動_北海道コカ・コーラボトリング①
2.サステイナブルで地域密着型のCSR活動_北海道コカ・コーラボトリング②
3.サステイナブルで地域密着型のCSR活動_北海道コカ・コーラボトリング③


サステイナブルな未来を創るための取り組みを、社員も外部機関もコミュニティも巻き込みながら広げている事例をご紹介します。インターフェイス社では、自社のサステイナビリティについて顧客に伝えることは営業活動の一環です。そこまで社員を巻き込めてしまう仕掛けとは?ぜひeBookでご覧下さい。


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山田有佳
京都大学総合人間学部、同大学院人間・環境学研究科修士課程修了。専攻は文化人類学、クロアチアで戦災からの街の復興をテーマにフィールドワークを行う。 株式会社ビジネスコンサルタント入社後、企画営業、営業マネジャーを11年。育児休業から復帰後、WEBマーケッターとしてのキャリアをスタート。聞きなれないIT用語と格闘しつつ、サステイナブルな未来につながる選択をしようという人が増えるためのメッセージの発信を目指している。