自社もサスティナビリティを踏まえた経営戦略を考えたい、実際の事業活動の中ではどんな取り組みをしたらよいのだろうか、というお悩みをよく伺います。日本の企業では、どんなことがなされているのでしょうか。

北海道コカ・コーラボトリング株式会社様は、地域密着型のCSR活動で注目される企業です。10年以上かけて、行政・警察・地元住民・北海道の他の企業といった様々なステークホルダーとの関係性を深めながら地域の活性化・観光地北海道を盛り上げるための活動を展開してきました。そして今ではそういった活動をすることが、地域住民から、そして北海道を訪れる人たちから「選ばれる」会社であり続けるための重要な経営戦略であるということが社員一人一人に浸透しつつあります

北海道コカ・コーラボトリングでは、あえてそのような言葉は使われていませんが、その取り組みは、まさに地域と自分たちのサスティナブルな未来を創るためのものと言えます。そんな同社がCSR活動にとりくむきっかけは、なんと業績悪化であったと言います。なぜ、そんなときにCSR活動を始められたのでしょうか?そしてどうやって、会社の組織文化や人材育成にまでつなげてこられたのでしょうか?

今回は、スタート当時の会社の様子や取り組みについて、元CSR担当で現在常勤監査役の上島信一様にお話を伺いました。(聞き手/株式会社ビジネスコンサルタント コーディネーターコンサルタント 内藤康成)

業績とは何か、の問いかけから始まった

上島様は長く経営企画・CSRの部長、担当役員を務められ、社外でもCSRに関する講演をされるエネルギッシュな方です。その上島さんは、「私たちのCSRは下心から始まりました」とお話されているとのこと。

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2000年頃から、北海道コカ・コーラボトリングでは、急激な業績の悪化が進みます。当時上島様は経営企画室のご担当、当然、部署では業績回復の施策を検討するわけですが、その当時徹底して議論したのが、「そもそも業績とは何か」ということであったと言います。

「当時の議論で、「このままいくと赤字になるぞ」という危機感の中、「業績とは、選ばれた証しではないか」という結論に至ります。そこから「どうやって選ばれていくか」を検討していきました。それが地域の役に立つ企業になること、地域貢献から社会貢献になって、最後、北海道をどうするか、という話になっていきました。」(上島さん)

とはいえ、当初はこの話を営業の方々にしても、上島さんたちの考えていることは全然伝わりませんでした。

我が社なりの、地域を賑やかにする活動

上島さんは、ある営業所に立ち寄った際、若い課長に「どうやったら町の役に立つ会社になれるか」ということで、自動販売機の正面下にある広告を張るためのスペースを「町のギャラリー」として活用する話をしてみました。すると当然のことながら、「突然トイレを借りに来た本社の部長が、営業と全然関係のない、訳の分からない話をしている」という反応しかなかったとのこと。
しかし、上島さんのあまりの熱心さにその課長は動かされ、町の学校や教育委員会に相談に行き、子供たちに運動会のポスターを描いてもらい、それを自動販売機に張り出します。子供たちが描いて、大人たちが見る、街中がちょっと賑やかになる。それが交通安全のポスターにも広がり、警察署からも表彰されるという取り組みにまで発展します。これが評判を呼んで、今度は「自動販売機をつけてほしい」という話も出てきました。

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「あの会社っていいね!」の評判をマネジメントする

「ここ2年くらい「レピュテーションマネジメント」ということを意識しだしました。これまでやってきていることは、全部「評判(レピュテーション)」につながっていきます。どうやって選ばれるか、より多くの人に役に立てることをしていかないと、「あの会社、頑張ってるね」「あの会社、いいね」という話にはなりません。
「競争力ということで改めて整理すると、飲料というのは、差別化の難しい商品です。よく付加価値と言いますが、飲料のもともとある価値は何か。それを基本価値とすると、おいしくて・安全で・安いということになります。おいしいも安いも個人差のあるものです。安全も、大手の飲料メーカーであれば当たり前。ですからこれらの基本価値で勝てるかというと難しい。一方、プロモーションで圧倒的に制圧することも難しい。そうしたら何で選ばれるかというと、「あの会社っていいな」とか「あの会社頑張っているな」という評判が重要だということではないかと。」(上島さん)

北海道コカ・コーラボトリングでは、地元密着の道産子企業として、北海道の人たちの役に立つことをするという戦略を取りました。そしてCSR活動そのものを強調するのではなく、「あの会社っていいね!」がめぐりめぐって売り上げにつながっていくというストーリーであったからこそ、社員にとっても分かりやすく、そして社員全体を巻き込んでの、長く続く熱心な取り組みに発展していったのだといえます。

みんなが、企業は社会システムの一部だというふうに気が付き始めると、世の中変わるような気がする

選ばれる会社になるためには、地域の人たちと良い関係を構築する必要があるということで、北海道コカ・コーラボトリングでは、各地の行政との関係性を強化していきます。とにかく市役所に顔を出す、顔が知られて、「コーラさん、また来ているの?今日はどちらの部署?」という関係性ができる。すると地元の人たちが「今度町内会の行事があって・・・」と相談を持ってくると、市役所の方から「それならそれはコーラさんに相談してごらん」という話になる、この循環をたくさん作っていくことを目指します。

事業とつながったかたちの社会貢献

現在同社では、北海道の活性化に向けて連携・協働するための「北海道との包括連携協定」を北海道と結び、さらに道内の5自治体とも町づくりに関する協定を結んでいます。緊急時の飲料水の提供や、自動販売機を使った防災情報の配信といった防災関連の取り組みは、北海道すべての自治体179市町村との協定を実現しています。札幌市ではさっぽろ雪まつりを応援したり、旭川市では旭山動物園で体験型の環境プログラムを支援しています。さらに、地域の行政・教育委員会や企業との協働で、400人前後の小学生を対象に職業体験イベント「キッズタウン」を5カ所の都市での開催を続け、子供の教育や安全、環境保全につながる取り組みまではば広く行っています。

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自動販売機で、地域の子供と大人がつながる

釧路市では、子供たちのアイスホッケーを支援していますが、これは地域の大人たちも巻き込んだ取り組みに発展しています。実は上島さんご自身も釧路のご出身なそうですが、釧路は「氷都釧路」と自ら掲げるほどに、スケートの熱心な土地柄です。しかし人口減少で子供の人数も減り、当然アイスホッケーの競技人口も減り、すると以前のように強いチームを育てることが難しくなってきてしまったのです。
「アイスホッケーへの応援を通じて、子供の成長を応援しよう」ということで、自動販売機で飲み物が1本売れたら1円を寄付する、という取り組みがスタートしました。この取り組みでは、寄付金に対応した自動販売機は準備していますが、実は北海道コカ・コーラボトリングとしては何も新たに特別な寄付のための予算は立てていません。
そしてここが良い点なのですが、地域の大人たちも、普通に飲料を買うことで、地域の子供たちの活動を応援できるのです。子供たちと大人たちがつながることになります。すると、アイスホッケーをする子供たちを日頃応援してきた大人たちの中には、自分たちも何かしようと、もっと寄付を増やすためにとコカ・コーラの自動販売機を設置する場所を増やそうと動く方までできて、町ぐるみの取り組みにもつながっています。

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CSR活動は、「選ばれる会社」であり続けるため

企業が社会システムの一部だというふうに皆が気が付き始めると、やっぱり世の中変わるような気がしますよね。私たちが今ここにあるのは、結局はお客さまのお世話になっているからです。お客様に選んで頂く前に、お客様に対して「ありがとう」と私たちは思ってきただろうかと問い直しをしました。言い過ぎかもしれませんが、これまで私たちはお客様に“売りつけて”きたんです。コカ・コーラは、それができるブランドでした。」

「当時で創業40年くらいですが、それだけの期間、北海道の人たちや、北海道に来てくれたお客さまに支えてもらったことを感謝して、ちゃんとお返しをしようと考えました。さらに一方では、これから先は、感謝の押し売りではないですが、そういう地域の役に立つ活動をしないと、選んでもらえない会社になっていくのではないかと考えたのです。」(上島さん)

CSR活動が、本業とは関連性の低いものとなっている、単発の取り組みになってしまっているといった課題が良く聞かれるのに対して、北海道コカ・コーラボトリングの活動は全く違っています。CSR活動は、まさにサスティナブルな経営戦略の一環となっていると言えます。だからこそ、社員にも取り組みの意味合いが伝わり、活動の発展につながっているのだと思われます。

今回は、北海道コカ・コーラボトリングでのCSR活動がどうやって始まり、「あの会社良いね」の循環をどう生み出してきたのかをご案内しました。次回は同社の活動の更なる展開や組織への好影響についてご案内します。


【北海道コカ・コーラボトリング株式会社について】
商 号 :  北海道コカ・コーラボトリング株式会社 HOKKAIDO COCA-COLA BOTTLING CO.,LTD.
設 立 : 1963124
代表者 : 代表取締役社長     佐々木  康行
事業の概要 :北海道を販売地域として、清涼飲料の製造及び販売
URL:http://www.hokkaido.ccbc.co.jp/


【上島 信一(うえしま しんいち)様】

1951年 釧路生まれ1973年  同社入社
2004年  経営企画室長
2005年  CSR推進部長を兼務
2007年  執行役員 広報・CSR推進部長
2008年  執行役員 法人営業部長
2011年  執行役員 広報・CSR推進部 CSR専任担当
2014年  同社常勤監査役(現在に至る)


【サスティナブルな未来を創るためのCSR活動 シリーズ】
1.サスティナブルで地域密着型のCSR活動_北海道コカ・コーラボトリング①
2.サスティナブルで地域密着型のCSR活動_北海道コカ・コーラボトリング②
3.サスティナブルで地域密着型のCSR活動_北海道コカ・コーラボトリング③


新しい活動を社内で始めるとき、必ず必要になるのが「エナジャイザー」です。ポジティブなエネルギーで周囲を動機付けて、みんなが想像する以上の成果を上げることを可能にする存在です。そんな人材を、組織の中から見つけ出し、育成・活用する方法をご案内します。




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山田有佳
京都大学総合人間学部、同大学院人間・環境学研究科修士課程修了。専攻は文化人類学、クロアチアで戦災からの街の復興をテーマにフィールドワークを行う。 株式会社ビジネスコンサルタント入社後、企画営業、営業マネジャーを11年。現在はサスティナブル経営を目指す企業やそこで働く人たちに向けた情報発信や能力開発プログラムの開発を担当。サスティナブルな選択をするビジネスパーソンが一人でも増えることを目指している。