以前ストックホルムでThe Natural Step主催の『サスティナビリティとリーダーシップに関する国際会議』に参加しました。
会議には、カナダやイスラエル、中国など世界各国から企業のCEOなどリーダー167名が参加しており、驚いたことにノーベル賞の授与式にTVでお見かけしていたスウェーデン国王も列席されていました。
スウェーデンは国として「サスティナビリティ」や「リーダーシップ」への関心が高くCEO自ら、またリーダーシップを発揮する立場の方々が積極的に議論する場があるんですね。

その時の写真はこちらから↓
http://www.bcon.jp/news/news_news/report_sweden/

今回はThe Natural Stepと一緒にサスティナビリティに取り組んでいるスウェーデンの不動産会社「VASAKRONAN(ヴァーサクローナン)」のオフィスを見学して学んだ”サスティナビリティを支えるオフィスデザインとリーダーシップ”について書いてみたいと思います。

新しいオフィス空間の形とは

VASAKRONANはスウェーデンだけで事業展開している不動産会社で、スウェーデン人なら知らない人はいないくらい有名な企業だそうです。
事業規模としては、2,500,000㎡(東京ドームだと50個分)のオフィスを扱い、1040億スウェーデンクローナ(1兆4560億円)の売上を上げていてヨーロッパの不動産業界の中でも大きい部類に入ります。

今回はBConと提携しているNGO団体のThe Natural Stepの紹介で広報兼IT担当役員のPeter Ostmanさんの案内でオフィスを見学する機会を頂きました。

オフィスに入った瞬間から、開放的で明るい雰囲気が感じられます。
案内されて歩き回ってみると、部屋や空間のバリエーションの多さに驚きました。
なんと、部屋のバリエーションは35種類もあるそうで目的によって、縦横無尽に使い分けられています。ほんの一部ですが、写真でご紹介します。

※1 広報兼IT担当役員のPeter Ostmanさん。 このお部屋はやぐらのパターン

※1 広報兼IT担当役員のPeter Ostmanさん。
このお部屋はやぐらのパターン

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※2 オープンスペース。フリーアドレス・WIFI設定なので、配線もなく美しい

Vasakronan_meetingspace4

※3 対面ミーティングソファスペース・4人掛け。背面・側面が高くて、ちょっとプライベート感もあり

Vasakronan_meetingspace3

※4 パテーションで他エリアと区切られているが完全密室ではない

 

※5 電子ディスプレイ。左側のバナーにミーティングルームの空き部屋状況が掲載され、各部屋の活用度合いが部屋毎に赤緑などで色分けされている。各個人の氏名の横にはステイタス表示。

そんなオフィスですが、CEOですら個室を持たないスタイルで仕事をしているそうです。部屋がないのに、CEOの居場所をどうやって知るのかな?と思って質問してみると、オフィスの中心近くにある大きな電子ディスプレイに案内されました。

そこには、オフィス全体の見取り図が描かれていて、誰がどこにいるのか、さらにはその人が話しかけたり相談したりできる状態なのかが一目瞭然で、そのステイタスが色で表現されています。
もちろんCEOもすぐに見つけられ、ご挨拶することが出来ました。

 

見学では、とても活気があり、生産性も高く、多様な働き方に応える職場環境が提供されていることが分かりました。

自分の会社がこんなオフィスやシステムだったらどうだろう?とちょっと想像してみましたが、あちこちから様々理由をつけて反対の声が出そうだな・・・と容易に予想できました。
かくいう私も、書類が山積みの机なので、フリーアドレスに変えると言われたら相当な抵抗感があるのです。
見学するだけなら楽しくて良いのですが、実際このオフィスを実現するためにはオフィス家具を変えたり、レイアウトを変えるといったハード面のことだけではなく、沢山乗り越えないといけない壁がありそうです。

それでは、このようなオフィス環境を実現できた戦略とリーダーシップとはどのようなものなのでしょうか?

秘訣は働く場所のデザイン戦略

見学しながら担当の方のお話を聞いていくうちに、様々なことが分かってきました。
これまでに15,000人もの企業幹部クラスの方々が見学されていると聞いていたのですが、その人気の秘密は、「働く人々のサスティナビリティ」を戦略的に実現させるようなマネジメントをしているからだったのです。

まず、VASAKRONANの戦略は明確です。
それは、「リーダーシップ」「ITソリューション」「ワークプレイスデザイン」の3つの領域を変革する戦略です。
これらが三位一体となって初めて仕事とビジネスを効果的に発展させ、人が生産性を高められるといいます。

そして、これを実現させるために大切にしている5つのポイントを教えて頂きました。

1.リソースのシェア(Shared resources)
空間やモノや人の透明性を高め、リソースをお互いにシェアして活用しあう文化をつくる

2.バリエーション(Variation)
空間の種類のバリエーションは、“仕事の種類と生産性”を考えて必要な種類を用意する

3.いつでもどこでも(Mobility)
オフィスのどの空間にいても、自宅でも、ITを使って自分のPCにアクセスできるようにして、PCを持ち歩かずに仕事ができる環境を創る

4.雰囲気(Ambience)
職種ごとに違う雰囲気や、仕事環境を大切にする

5.信頼(Trust)
従業員を信頼して、自由な環境を作ってもサボらずに生産性を上げると信じることができるリーダーシップの発揮

VASAKRONANはこの5つのどれが欠けても上手く機能しないので、進化させながら、100%実践できるように努めているそうです。
そして顧客がワークプレイスのデザインをどうするか考える時に、これが実現されるようにチェンジマネジメントのコンサルテーションも事業の1つとして行うようになっています。

 

サスティナビリティに欠かせない「信頼」を生み出すために

「サスティナビリティ」というと、地球環境の側面に配慮するといったイメージが強いと思いますが、The Natural Stepの考えでは、「人間社会」に対するサスティナビリティも欠かせないとメッセージしています。
まさに、この働く人の生産性や働き方を考慮したマネジメントは人間社会に対するサスティナビリティの取り組みだと感じました。

組織や集団といった社会システムが持続可能な状態になるには、「信頼」が欠かせません。
信頼がないと本来の機能が果たされなくなったり、余計な精神的ストレスがかかったりして組織が弱体化していくことが最新の研究でも分かっています。

そして、組織が存続するためには次の要素が担保されるようなマネジメントが求められます。

・人の健康が維持されていること
・お互いに影響力を与え合えていること
・自らの能力が発揮される機会があること
・公正、公平さが担保されていること
・仕事やその組織、集団にいることの意味や意義を感じられていること

ダイバーシティや働き方の多様性が求められている今、組織の戦略や人材育成などの意思決定において、それが働く人のサスティナビリティの観点からどのような意味をもつのか、上記の要素を充実させることになるのか見直すポイントとして有効な考えだと思います。

今回の見学では、単に制度を創ったり、オフィスのデザインだけで解決できることは少なく、前提にあるマネジメントの考え方や組織文化等の全体をみて変革していく”チェンジマネジメント”がこれからの競争力を高める大切な要素になっていくと学習する機会となりました。

 

【参考】他写真もご紹介します。

※6 個別ワークスペース 入口の電子掲示板(緑)に誰が何時まで使用するか表示されている

※6 個別ワークスペース 入口の電子掲示板(緑)に誰が何時まで使用するか表示されている

※7 TV会議システムが活用できる半個室のミーティングルーム

※7 TV会議システムが活用できる半個室のミーティングルーム

 

※8 カフェスペースがオフィスの中心にあり、誰でも活用可能

※8 カフェスペースがオフィスの中心にあり、誰でも活用可能

※9 キッズルーム 子連れでの勤務も認められており、キッズルームが構えられている

※9 キッズルーム 子連れでの勤務も認められており、キッズルームが構えられている

廣瀬 沙織
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。 株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。