サステナブル経営を推進している株式会社ビジネスコンサルタントがその実践者3名を招いて開催したセミナー(「サステナブル経営で競争優位を築く 『サステナブル経営の実践』」:2015年10月15日・17日)の講演内容から、数回に渡ってポイントとなる点をご紹介してまいりましたが、今回が最終回となります。

今回は3人目の登壇者、ヨーラン・カールステッド博士の最終メッセージです。前回まではカールステッド博士から「持続可能な社会を生み出すための礎はHuman Energyである(前編・後編)」「サステナブルなビジネスモデルを作るために知っておくべきこと」を教えてもらいました。最終回は「サステナビリティ」時代のリーダーシップのポイントについてご紹介していきます。

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サステナブル経営においてはミッションも利益も両方大切

企業ですから利益を産み出すことは大切です。人間が生きていくために酸素が必要なことと同じです。
でも、ヒトは酸素だけではヒトらしく生きていくことは出来ません。やりがいや、意味があって初めて力を発揮し、イキイキと生きることができます。
それは企業も同じこと。

ですから、利益と企業のミッションはどちらが大切かという話ではなく、長期的に発展していくには両方大切だということです。

さらに今、これまでのやり方では長期的に発展できないということが分かってきています。そのため、持続可能な社会に貢献する「サステナブル経営」をしていくために、ミッションを掲げ、変化を指向し実際に産み出し続ける組織をつくり、利益を産み続けなくてはなりません。

カールステッド博士は、持続可能な経営をしていくためのリーダーシップに、4つのポイントがあるといいます。

サステナブル経営に必要なリーダーシップの4つのポイント

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①大きな絵を共有すること

リーダーシップの1つ目のポイントは、サステナビリティについての現状理解や、企業が進む方向性について従業員の見方や考え方に刺激をあたえ、大きな絵を共有することです。

サステナビリティの課題といったら、エネルギー、気候変動、食糧問題、水問題、廃棄物汚染、生物多様性の喪失、貧困…と枚挙にいとまがありません。問題の多さと大きさと相互関係の複雑性に途方にくれそうですが、こんなときこそその問題から一歩ひいて考えてみることが必要です。

カールステッド博士は、今の地球や経済システム機能していない根本的な原因はナチュラル・ステップで学んだので分かっていました。でもヒトはみな、自分と同じように世界をみているわけではありません。ヒトは世界をありのままにみているのではなく、見たいように見ているのです。

そこでリーダーは、みんなに今いったいどんな時代に生きているのか、地球に何がおきているのかを科学的な知見に立ってシンプルに共有することが必要なのです。

②ゴールを「望ましい」形で語ること

2つ目のポイントは、ゴールを「望ましい」形で語ることです。
カールステッド博士は、マーチン・ルーサーキングJr.が「私はこの悪夢から脱したい」と言わずに「私には夢がある」と語ったから、多くのヒトが彼に共感を寄せたと考えています。

「環境を破壊してはいけない」というビジョンにわくわくするヒトは少ないのではないでしょうか。

悪夢のような現状や環境破壊の事実を理解することは大切ですが、リーダーにはHuman Energyがどんどん巻き込まれるような形で方向性を示すことが求められるということです。

③トップがコミットすること

3つ目のポイントは、どうやればいいのかは分からなくても「やる」と宣言をして、その宣言に責任をもってコミットすることです。

Human Energyは熱狂的な言葉に刺激を受けますが、トップの行動によってそれとは比べ物にならないほどの刺激を受けます。現時点で具体的な戦略を立てられなくても、「やる」と宣言することで、「こうしたらどうですか?」という提案や知恵は驚くほど集まります。

例えばウォルマートは2006年に以下のような企業戦略目標を発表しました。
• 会社の地球温暖化ガス排出を7年間で20%減らす
• トラック全車両の燃費を10年以内に2倍にする
• アメリカの店舗での固形の廃棄物を3年以内に25%減らす
• 利用可能な価格のオーガニック食品の提供を倍にする
当時の代表取締役だったリー・スコット氏は、環境問題や社会問題に向き合った経営を行うことを決意し、「どうやってこのゴールを達成するのか、今の時点ではわかっていない。時間もかかるだろう。でもこの道でいいのだ」と強いリーダーシップを発揮しました。

トップがとにかくやるんだ、というコミットメントを示すことで、それまで予想もしなかったいろいろダイナミクスが生じ、実際に道は見つかるのです。

ユニリーバやIKEAなど、サステナビリティを経営に統合する会社はみんなトップの強いリーダーシップから始まり、従業員のHuman Energyをまきこみ展開して成功をおさめています。

④長期的な課題であることの理解を求める

4つ目のポイントは、プロジェクトには長く時間がかかるということに理解を求めることです。

私たちはあまりにも短期的に利益を出さなくてはならない、というプレッシャーに慣れ過ぎてしまいました。物事には、頑張れば短時間にできることと、頑張ってもある一定の時間がかかることの2つがあるのです。

カールステッド博士の好きなジョークの一つに、「どんなにヒトやカネを投入しても、子供がうまれるのに9ヶ月は掛かるでしょ」というものがあるそうです。
子供を生むのと同じぐらい私たちにとって大切なこと、例えば、信頼を築いたり、チームで大切なことを学び合うことはある程度時間がかかることなのです。その点を理解してもらう必要があります。

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サステナブル経営を導くために求められるリーダーシップ、イメージがわきましたか?
これらはカールステッド博士自身が注力したリーダーシップの姿勢であり、歩んできた道でもあります。

サステナブルな未来に向け、さあ、歩みだしてみよう!

サステナブルな未来のためには、新しい製品、新しいプロセス、新しいコラボレーション、新しい教育、新しい考え方…とたくさんのイノベーションが必要になります。沢山の時間と資金とHuman Energyが必要になる、人類最大の投資のチャンスに、ひとつでも多くの組織、ひとりでも多くの皆さんが自分ごととして課題をとらえ、チャンスに向き合い、一歩を踏み出すリーダーシップを発揮できますように。

一人目の登壇者「The Natural Step」スウェーデン支部代表のカーリン・シュルツ氏が教えてくれたサステナブル経営のための明確なチェックポイントは、今後歩むためのガイドになります。
二人目の登壇者インゲル・マットソン氏(スカンディックホテル サスティナビリティディレクター)が教えてくれたスカンディックホテルのサステナブル戦略実践実話は、今後持続可能なビジネスを展開し続けるためのモデルになります。
三人目の登壇者ヨーラン・カールステッド博士がお話くださったたくさんの経験からのエールは、今後を歩むための勇気になります。私自身そのメッセージにワクワクし、背筋が伸びる思いでした。

今回のWINセミナーで一緒に学ばれたみなさん、それから、このブログを読んでくださったみなさん、いかがでしたか。「サステナブル経営で競争優位を築く」ことを株式会社ビジネスコンサルタントは推進しています。今後も持続可能な学びの場をご一緒できますことを楽しみにして、今回のシリーズの結びにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

【サステナブル経営で競争優位を築く WINセミナーシリーズ】 
1.自社のチェックリスト① 持続可能なビジネスか否か-4つの持続可能性原則
2.自社のチェックリスト② 持続可能なビジネスか否か-5つのはしご
3.サステナブル経営実践事例:北欧スカンディックホテル~原則を押さえて自社に合うやり方を追求、収益につなげる~
4.サステナブル経営実践事例:北欧スカンディックホテル~全社員を巻き込み、新たな文化を作る~

5.組織で成果を出すために必要なHuman Energy をどう育てるのか_前編
6.組織で成果を出すために必要なHuman Energy をどう育てるのか_後編
7.サステナブルなビジネスモデルを作るために知っておくべきこと
8.サステナブルが大事になる時代にあるべき経営リーダーシップとは

今回ご紹介したリーダーシップの4つのポイントを実践しているといえる企業の取り組みを一つ、ご紹介しておきます。 インターフェイス社は、「2020年までに環境への負荷をゼロにする」というミッションを掲げる、サステナブル経営のトップランナーともいえる企業です。同社がビジネスモデルを変革し、社員を巻き込んで実績に繋げてきた秘訣をインタビューしました。ぜひダウンロードし、貴社の取り組みにお役立てください。

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